テクノ経営総合研究所ロゴ

HOME > コンサルタントコラム > 海外工場の改善ポイントⅡ 海外工場の問題点とその背景

海外工場の改善ポイントⅡ 海外工場の問題点とその背景

はじめに

 前回は、海外工場の特徴についてコンサルタントの立場から述べてみました。 そこでお話したことは、海外工場の持つ暗い雰囲気でした。そして、 その原因が異文化マネジメント視点にあることをお伝えしました。今回は、そうした海外工場の抱える問題とその背景にある原因とについて、もう少し詳しく考えていきます。

● 海外工場の問題点

 前回、アジアの人々の時間感覚に関して少し説明しました。
 しかし、これ以外にも工場内の問題点は数多くあります。その項目をいくつか挙げてみましょう。

      整理・整頓が全くできない。チョイ置き、ポイ捨てが目立つ。
      期限切れの掲示物が目立つ(品質ポスターもボロボロ)。
      コスト意識がない(電気、水道、エアー 他)。
      生産性の意味すらわからない。
      各職場にある時計の遅速を誰も気にしない。
      安全意識が極めて低い(防護具等の着用ルールが守れない)。

 最近、東南アジアでもゴミのポイ捨防止キャンペーンが増えてきました。国際社会に向けたモラルアップがねらいですが、 まだまだポイ捨てはなくなりません。また、コスト意識については、日系企業が海外進出を開始したころ労務費も安かった関係で、 QCD(品質・コスト・納期)のうち品質と納期を優先して、コスト管理が軽んじられていたことが糸を引いているようです。
 私の経験したところでは、ある工場で蛇口が壊れて常に水滴が落ちている手洗い場がありました。よく見ると驚くことに水滴が 落ちる場所が凹んでいるのです。また、エアー漏れなどは日常茶飯事です。黄ばんだポスターなどの掲示物もよく眼にする風景です。 ある工場では、安全第一の看板表示の全という字が傾いていました。他にも短針のない時計、事務所にある世界主要都市の時刻が 全部狂っているなどもよく見られる風景です。

● 問題点の背景は何か

 こうした問題が起きる原因の一つは、前回お話した異文化マネジメントの間違いです。やはりその根底には「現地従業員は単なる使用人である」 という管理者側の意識があるのではないでしょうか。それで指示・命令でしか人を動かせなくなっているのです。いわば恐怖政治的な圧力で従業員を コントロールしようとする、これはマネジメントではありません。「発言すれば怒られることはあってもほめられることはない」という風土からは、 改善も改革も絶対に生まれません。
 Man,Machine,Material,Methodは生産の4Mと呼ばれています。これは生産における経営資源を表したものです。まず筆頭にManつまり人が 出てくるように、経営資源のなかで一番重要なのが従業員なのです。設備も資材も生産も人の働きなくしては一歩たりとも前に動きません。 人間の目的意識が働いてこそ生産の4Mが機能を発揮するのです。
 そして、海外工場に見られる問題点の多くも、従業員の目的意識が希薄であることが関係しているようです。すなわち従業員が指示待ち人間と なっているのです。指示待ち人間の作り方は、仕事のやり方(Know How)だけを教えて、目的(Know Why)を教えないことです。これはまさに 管理手段の問題ではないでしょうか。

● 考える場面をつくる

 それではローカルスタッフを、もっとレベルアップするにはどうすればよいのでしょうか。その答えは「考えて仕事をする場面」をつくることです。
 ある工場で改善提案のブレーンストーミングをしていたときのことです。なかなか発言する人もいなくてミーティングが進みません。参加している メンバーとしても余計な仕事に関わり合いたくない感じです。そこで、私は「解決策はいりません。問題だけ知っている人は話してください」と 促したのです。すると何人かの手が上がりました。発言を求めると現場で起きている生々しい問題が出てきます。私は同席している幹部層に対して、 ブレーンストーミングの原則である批判しないというルールを厳守するようお願いしました。問題の中身は「機械の汚れを手袋で拭いている」 「クリーンルームで着用する作業着から糸くずがでている」といったものが続々と続きます。聞いていた幹部層は青筋を立てていらっしゃいましたが、 ここは我慢していただきました。
 このように考える場を作ること。そして、自分の考えが受け入れられたという経験がローカルスタッフの意識を変えていくのです。 最初は小さな一歩かも知れませんが、この積み重ねが重要です

● リーダーに必要な「対話力」

 また、「なぜ整理・整頓が必要なのか」とか「表示や時計が正確でないとどんな問題が発生するのか」といった理由をわかりやすく 説明することも必要です。そのために必要な能力はやはりコミュニケーション能力ですが、その中でも重要なのは「話す力」すなわち 「対話力」です。
 対話とは相手と交流する能力です。日本の受験では、「聞く力」「書く力」「読む力」という、どちらかといえば一方通行の コミュニケーションに偏った能力のみが求められます。そして「対話力」に関しては社会に出てからの職場生活で身に付けるものという 感が強いようです。しかし、管理者やリーダーにとって最も必要な能力の一つがこの「対話力」なのです。

 今回は、海外工場における問題点と背景についてお話しました。
 次回以降は、海外工場の現場改善を進めるヒントについてお話する予定です。

<< 前のコラムへ                                 次のコラムへ >>

<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  井原 昌志

大手電子部品メーカーにて、生産設備の設計・開発、改善プロジェクトのリーダー、工場現場の管理者を経験し、「モノづくり」のノウハウを習得。 その後、現職に就き、「人づくり」を基盤とした工場体質の強化を図り、一過性に終わらせない自主・自律体制を構築させた改善・改革活動を強力に実践推進している。

一覧