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海外工場の改善ポイントⅢ 海外工場の改善の方向性

はじめに

 前回は、海外工場の抱える問題点についてお話ししました。そして、その背景には異文化マネジメントの間違いがあり、日本人リーダーの対話力の不足を指摘させていただきました。
 今回は、リーダーとしてローカルスタッフを指導するためのヒントをご説明します。
ここで重要なポンイトはコミュニケーションのあり方です。相手の立場で考えることが基本であることを申し上げておきます。
 

● 工場従業員を束ねる仕組みづくり

 まず海外では、基本的に個人プレーや自己主張が強い傾向が見られます。
 「問題があるのは前工程、自部門には全く責任はない」とか、パソコンの打ち間違えさえ、「原因はメーカーのバグにある」と言い張って聞かない。 この傾向は、中国や台湾で特に強いようです。そこで、海外では個人プレーをいかにしてチームプレーに束ねるかが課題となってきます。

 以前、ある企業の中国工場を指導したことがあります。
 紆余曲折はあったものの、1年半の改善活動を通じ、中国工場の黒字化が達成できたため、今度はベトナム工場の改善ということになりました。 そこで、中国工場での活動に参画した日本人リーダーを中心にベトナム工場の自主改善を進めることになったのです。
 ところが、ベトナム工場の品質と生産性は非常に低レベルで、中国工場のような改善を進めることが日本人リーダーには全くできなかったのです。
そこで事業部長からの要請で、私が再びベトナム工場の指導に入ることになりました。

 中国とベトナムの工場を指導して、私自身が感じたことは、やはり国民性の違いがあるな、ということです。確かに、中国人は非常に頭も良く 優秀な民族です。けれども、われがわれがという個人プレーに走る傾向があります。そのため個人の力が分散するという欠点がありました。
 しかし、そんな中国と比べてベトナム人は羊のようにおとなしい国民性を持っています。しかし、単なる羊の群れでは力強い中国に打勝つことは とても望めそうにありません。ところが、一人ひとりは弱くても、ライオンのような強力なリーダーシップで束ねたら、すごい力を発揮するという ことがわかってきました。その結果、この企業のベトナム工場は2年後に品質と生産性で中国工場を追い抜くという大きな成長を見せることになるのです。
 ベトナム工場の成功要因は、一人の百歩より百人の一歩というやり方で、彼らをうまく束ねることにより組織力を発揮できるようになったことが 大きかったと思います。

● マネジメントはPUSH型よりPULL型で

 かんばん方式としても知られる、後工程引き取りという考え方があります。つまり、PUSH型ではなく、PULL型の考え方です。 これをマネジメントに置き換えれば、「ああしろ」「こうしろ」と一方的に上から指示を与えるスタイルはPUSH型に当たります。 しかし、考えさせる風土づくりのためには、課題や要求に対してどう応えるべきかを考えさせ、意見や行動を引き出してくるPULL型の マネジメントが必要ではないでしょうか。
 PUSH型のマネジメントでは、ローカルスタッフに対する指示の方法として、「なぜそれをしなければいけないか」「それを怠ったら どんな結果が生じるのか」ここが説明されていません。日本人がルールを決め、手順通りに作業をさせることだけをしてきたわけです。 しかし、PULL型のマネジメントは、「指示された仕事をすればよい」というだけではなく、作業の目的を説明することで、スタッフ から改善に対する意見を引き出してくることができます。
 このやり方でないとダメという硬直化した指導では考える力を奪うだけ。PULL型のマネジメントで、東南アジアにおける 私の指導先では、全員がメモを持って話を聞くようになりました。

● ほめて育てる人づくり

 中国での事例です。あるチームに非協力的で反対勢力のリーダーがいました。
しかし、ある時、私はそのリーダーが持つ優れた資質を発見し、ミーティングの席でほめてあげたのです。すると、その瞬間、 そのリーダーの表情に大きな変化が見られたのです。ミーティングの場を立ち去るとき、私の方に親指を立てて出て行く、 誇らしい彼の姿が脳裏に焼きついています。中国のボディ ランゲージで、それは肯定や賞賛の意志表示です。
 その後、そのリーダーは個人的に「俺はこんな改善をしている」と説明してくれるようになりました。私は彼の熱意とアイデアを心からほめ、 その後も交流を続けることで、お互いの関係は良好になっていったのです。
 今までの経験を通じて言えることは、「ほめて育てる人づくり」が一番重要だということです。どんな国の人でもほめられたらうれしい。 これは万国共通だと思います。ここを間違わなければ、国籍・年齢・性別を超えて心の交流ができると信じます。ほめたあとに不足部分を フォローする。メンバーを「やってやろう」という気持ちにどうやって持っていくか、言葉の選び方が大切です。

● 改善の目線合わせと問題意識の醸成

 リーダー自身が問題と感じていることは、改善目線をメンバーに現場現物で伝えること。現場で情報を共有化できないと改善はうまく進みません。
例えば、前回お話ししたクリーンキャンペーンでも同じ、現地で現物を見せて、「これはゴミだ」ということを示す。そして、 「ゴミを捨てることは悪いこと」だから改善しようという目線合わせが必要なのです。
 目的を分かりやすく伝え、それを行う意味を理解、納得させて進める。命じられて内心嫌々ながら行うのと、腹の底から納得して全力を傾注するのとでは、 その結果に雲泥の差が出るのは当然です。

以上、ローカルスタッフを指導するうえでのポイントをお話ししました。
次回は、日本人駐在員とローカルリーダーの育成についてお話しする予定です。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  井原 昌志

大手電子部品メーカーにて、生産設備の設計・開発、改善プロジェクトのリーダー、工場現場の管理者を経験し、「モノづくり」のノウハウを習得。 その後、現職に就き、「人づくり」を基盤とした工場体質の強化を図り、一過性に終わらせない自主・自律体制を構築させた改善・改革活動を強力に実践推進している。

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