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海外工場の改善ポイントⅣ 海外工場の具体的改善手法

はじめに

 前回は、ローカルスタッフ指導のヒントについてお話ししました。
 その要点は、(1)PUSH型よりPULL型のマネジメント、(2)ほめて育てる人づくり、(3)活動目線の現場における共有化、という3つのポイントでした。
 今回は、日本人スタッフとローカルリーダーの育成についてお話ししたいと思います。  

● 日本人駐在員とローカルリーダーの育成

 海外工場では、ローカルリーダーの育成が重要テーマです。そして、そのために日本人駐在員の育成も同時に考えることが必要です。
 最近では、若手社員の海外工場への派遣が増えています。しかし、彼らは、マネジメントに関する知識・経験が十分でない場合が多く、ローカルスタッフに対しても、 指示・命令を与えるだけということが多いようです。つまり、それが立場を利用した一番簡単な方法だからです。しかし、これまでお話ししてきたように、日本人駐在員と ローカルスタッフに信頼感が築かれていなければ組織と人もギクシャクした関係になってしまいます。
 また、ローカルリーダー自身も日本人駐在員の指示で動くことが多いと思われます。そんな状況下で、双方のマネジメントに食い違いがあれば指示を受けるローカル スタッフも混乱してしまいます。物事の考え方はローカルリーダーの方が正しいのに、上司である日本人駐在員が誤った方向に導く恐れがあるからです。私のある 指導先では、各改善チームに必ず日本人もメンバーとして参加していただいています。
 ローカルリーダーの育成効果としては、ベトナムのある工場で、ローカルリーダーの成長により、10人ほどいた日本人駐在員が半分になったケースがあります。 ベトナムに残った日本人駐在員からも、「最近、仕事が楽になって早く帰れるようになりました」と言われるようになりました。理由をお伺いすると、 「ローカルのスタッフに簡単な指示を与えるだけで、彼らがちゃんと手段を考えてくれるので、安心して帰れます」という返答でした。今までなら全部自分たちが、 仕事の手順を事細かに指示しなければならなかったが、彼ら自身が手段を考えてできるようになったからだ、というのです。
 また、日本人駐在員の家賃費用は高額となりますし、他に、給与以外の海外手当等を含めると、一人当たりのコストは相当な額になってしまいます。コストダウン 効果という点でも駐在員の半減は大きな成果を生み出すことになります。

● 対話力(心の通ったコミュニケーション)の向上

 トップ方針を自分の声で部下に伝え、理解・納得させて人を動かす力をつけることが大切です。また、「何か新しい仕組みを作ったら、 必ずその仕組みを各リーダー自らが自分の声で部下に伝えてください」と指導の現場で申し上げています。
 重要なのは、ローカルワーカーに対する指導の場面を、極力、半ば強制的に設けることで、ローカルリーダーにそういう場面を体験 してもらうことで鍛えていくことです。
 何事も場数が重要です。いくら本を読んでもスピーチは上達しません。やはり場数をこなすことで話がうまくなるのです。 絶対にローカルスタッフと対話することを面倒がってはいけない、このことを常々申し上げています。

● トップ方針の伝達

 最近はメールでのやり取りが多くなっています。しかし、メール連絡は一方通行のコミュニケーション手段にすぎません。メールが中心の コミュニケーションでは組織の中が冷たい雰囲気になるものです。そこには対話というものがありません。しかし、対話力のないリーダーと いうものはあり得ないと私は思います。対話には、心がこもったコミュニケーションが必要なのです。
 メール連絡の欠点は他にもあります。一例を上げれば、部長からのメールに係長や班長にccが入っていることがよくあります。 こういった場合、すでに情報は組織の主要メンバーに伝わっているのですから、課長としては「部長から連絡が入っているのでよろしく」 という指導をするだけのことが多いようです。しかし、これでは課長のマネジメント能力が低下するのは当然です。
 例えば、トップから「工場の防火」に対する指令が出たとします。ところが、工場長が課長に同じことを伝え、課長が係長に同じことを 伝えるのでは、まったく意味がありません。やはり課長なら自分の立場で、火災防止の対策を検討して下に使えるという、上意下達の 形式がとられなければだめなはずです。その組織の長が自分の職場に落とし込んで伝えていくことが必要なのです。

● 誰を育てたいかを明確にする

 活動開始の時点で、将来的に誰と誰を幹部候補として育てていきたいのかを明確にすることが必要です。これを事前に明確にしておけば、 それを前提にして、彼らを育てるための活動をどう打っていくかを考えていくことができます。
 その時に考えておかねばならないことは、育成方法の選択です。例えば、5人のリーダーを育てたいという場合、この5人を競争させて 育てた方がよいのか、それとも5人を一つのテーマで束ねて協働意識を持たせて育てた方がいいのかに分かれます。まず大きくこれを考える。 競争させれば彼らは力を発揮するというのであれば、そうするし、いや、今彼らを競争させれば足の引っ張り合いが始まって、より強固な セクショナリズムができてしまうというのであれば、共通テーマでその5人を協働メンバーとして進めることにします。
 すなわち組織を動かすためには、どういう方法でチーム編成をすればよいのか、ということを徹底的に議論し、綿蜜に行うことが必要 なのです。この段階で手を抜くと外見だけの活動になる危険性があります。

以上、リーダー育成についてお話しいたしました。
次回の最終回は、組織をまとめるという視点でお話ししたいと思います。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  井原 昌志

大手電子部品メーカーにて、生産設備の設計・開発、改善プロジェクトのリーダー、工場現場の管理者を経験し、「モノづくり」のノウハウを習得。 その後、現職に就き、「人づくり」を基盤とした工場体質の強化を図り、一過性に終わらせない自主・自律体制を構築させた改善・改革活動を強力に実践推進している。

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