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海外製造拠点における改善活動の風土づくり(2)

はじめに

 今回は、VPM改善活動の準備期間における取組みの一つ、「問題発掘活動」「Finding-Activity」に関して、面白エピソードを交えて紹介させていただきます。

 VPM活動では、活動準備の一環として、現場に潜む問題発見にメンバー全員が取り組む「問題発掘活動」を行っています。この作業は、「問題棚卸し活動」 「問題の顕在化活動」「問題堀起こし活動」「ガス抜き活動」とも呼ばれますが、要は、全従業員による問題抽出活動のことです。活動のベクトルを合わせ 、問題の共有化により動機づけをはかることが主な目的となっています。
 この活動は、海外の製造拠点においてもたいへん有効です。特に、ローカル社員を含めた活動の基盤・風土づくりに大いに役立つ活動だといえるでしょう。 ところが、この活動に取り組む中で想定外の問題に直面したことがあります。今回は、その私自身の経験からお話しします。

◆ 日本人の社長、スタッフから伺ったこと

 ある企業を訪問した時のことです。日本人の社長さんから「問題=Problemという表現は使わないでください」というご要望を伺いました。 当時の私は海外工場の指導経験が少なかったこともあり、その訳をお聞きしたところ、ローカル従業員は「問題=Problem」という言葉に非常に ネガティブなイメージを持っているとのことでした。
 “問題”のどこが問題なのか、どうしてローカル従業員は「問題=Problem」という言葉に敏感なのか、その背景には、問題と関わることを 避けたい心情があるようです。これは国内でも見られることですが、会議などで指摘した人が問題解決の担当にされる場合があります。 つまり、言い出した者が全面的に損をするというケースです。
 ローカル社員の場合も同様で、報告した者が原因究明から対策まで担当させられる。「問題=Problem」を全員で見つけて、顕在化させようと 説明しても、問題を見つけて報告すると怒られると思い込んでいる。そして、問題という点では、実際に現場で直面している不具合(困りごと)に 関しても、報告しない様になるというのです。これはローカル社員と日本人スタッフのコミュニケーションギャップ以外の何物でもないでしょう。

◆ コミュニケーションギャップ(相互不信の構造)

 この問題は、海外だけでなくモノづくり企業様で、直面されている課題ではないでしょうか。その背景には、以下のようなコミュニケーション上の問題があります。

 こんな風な、言いだしっぺが損をする環境になっていませんか。

 また、日本人スタッフの側にも、『ローカルは、問題も見つけられない。その意識もない、彼らの意識をかえることは難しい』と 言った先入観があるのではないでしょうか。過去に改善の取組みをしたが、「その後のアクションが会社として実行されずにウヤムヤに なった」と言ったことが殆どのモノづくり企業で見受けられます。しかし、こういった意識を抱いていたのでは、ローカルに受け 入れられないのは当然です。まずは日本人スタッフの意識を変えることが先決です。
 そこで、私の指導先では、海外は勿論、日本でも、『問題=Problem』の表現は使わず、『Finding-Activity』『気付き発掘活動』と 言った表現を使っています。この言葉一つに、こだわることは非常に重要です。

◆ 『Finding‐Activity:気づき発掘活動』

 私としては、ジャンルを問わず、日々の生産活動で、従業員が「困っていること・おかしいと感じていること・キツイ作業・危ない、 危険な作業・こうすれば良いのに・こんなやり方もあるよな」と言ったことを、その事象だけをメモに記入して提出してもらうことを 基本にしています。
 従来の改善提案のように、「何が、どうした、原因は、対策は、問題の大きさは、誰の責任なの、解決した時の効果は」と言った 項目は基本的には要求しません。ここまで要求すると海外では、期待する件数は出てきませんし、MGクラス、SVクラスの提出に 終わってしまします。
 ところが、よくお聞きする、お悩み(愚痴)として、「ローカル従業員からは、提案も、問題の発掘も出てこない」というものが あります。これは果たして本当でしょうか。
 実は、「気づきメモ」の制作にはひと工夫が必要なのです。あなたの工場では、日本で実施している、提案用紙をそのまま、 現地語(タイ語・中国語)に翻訳したものを、使用していませんか。ローカルの立場・視点に立って「提案用紙」をもう一度 考えて見てください。答えはそこにあります。
企業によっては、ライティング(書く)の問題もありますので必要に応じて、チームリーダーが、ヒアリングして「Finding-Memo」を 作成されるケースもあります。
 大事なことは、現場で働くローカルの方々の生の声を聞き出すことです。その中味においては、『なんやこれ、苦情バッカリ、 常識やないか・・・ 』と言った、内容が半分近く占めることもあります。しかし、残りのメモの中には、スタッフも、気づいていない、 『これは、すごい』『そんなことが現場にはあったのか』と言った驚愕する実態が浮き彫りにされたものがあります。改善すれば、 大きな効果が期待できる問題や、危険予備軍(そんな無理な作業があったのか、一つ間違えば労働災害につながる)と言った新たな 気付きが必ず含まれているものです。

◆ 『Finding-Activity:気づき発掘活動』の効果

 「Finding-Activity」の取組みは、その活動を通して以下の様な効果をもたらします。

 以上の様に「Finding-Activity」は、現場の問題を発掘するだけでなく、活動を通して全員参画改善活動の風土・ 土壌づくりに有効な活動であることがお分かりいただけたかと思います。

海外ならではのエピソード紹介

(1) 塗装工程の塗料調合ルームの作業者のメモ … タイ

◎塗料調合で重要な、温調の管理ができていない、空調のパワー不足が判明した。
 即空調機器の更新 →結果塗装不良NGが、改善前に対して30%改善。

 (2) プレス工程の作業者のメモ(作業日報のデーター記入より) … タイ

◎日本人スタッフの対応
 「以前に全ての作業テーブル電卓を設置した、そんな筈はない」
 事実を一緒に現場で確認、配布した25個の内、4個故障、3個電池切れ、2個紛失

《この気付きメモに対する対応》
  × 従来の日本人スタッフの考え方・意識では
    ・配布しても、壊す、なくす、家に持ち帰る・・・から配布してもムダ。
    →ローカル作業者の訴えを無視している。

  ○ 気付き発掘活動での対応
    ・25個全てをタイのダイソーで購入、
      その時予備のボタン電池もあわせて配布。
    →この対応が、ローカルとのコミュニケーション・信頼関係の改善につながる。

 (3) 塗装・焼付け作業現場 … タイ

・現場確認結果:
 換気ダクトが、殆ど稼働しないまま、約2ヶ月放置されていたことが判明。
・日本人スタッフのその時の言葉
 →「こんな環境で、2ケ月もの間、20人近くの作業者が作業してきたことに驚いた」

《更に聞き取りの結果》

・現場作業者からは、苦情が出ていたが、ラインリーダーがMGにまで、報告していなかった。
 →それで日本人スタッフの耳に入っていなかった。

・まさしく言いだしっぺが損をする事例
 →ラインリーダーが、問題を上位者に報告できない。できにくい環境に問題あり。

・見方を変えれば、「日本人のスタッフが、いかに現場に入っていないか」ということ。
 →経費削減から、日本人主体の経営から、ローカル主体の経営へ移行を進めた結果。

・500人以上の企業で日本人スタッフが3-4人と言った工場
 →現場の隅々まで日本人スタッフが、目を光らせるは無理な話です。


 このように、Finding-Activityなど、海外の改善活動では、想像を絶するような様々な問題が発生するものです。 ここで大切なことは、ローカル従業員がモノづくり現場で日々直面している、困りごとや不具合などに対して強い関心を持つことです。 確かに彼らは、その表現において不十分な点はあります。しかし、彼らからの気付きを吸い上げる、この取組みを継続することが、 ローカル従業員と日本人スタッフとの、コミュニケーション改善に大いに役立ちます。そして、吸い上げた気づきに対して、 アクションを起こし、改善・解決を支援する姿勢を見せること。それが相互信頼関係の構築につながると私は思います。

 今回は、ローカル従業員の気づきを吸上げる活動として、「Finding-Activity」をご紹介しました。この活動は、日々、 現場の実態・事実を把握する為にも、非常に重要な取組みと言えます。

【次回のコラム】

 次回のコラムでは、「気付き発掘活動」から改善活動への展開で、生産性が大きく改善された国内事例、また、ローカル・ チームリーダーの改善意識を高める、テクノ経営オリジナルのトレーニングプログラムを紹介させていただきます。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  木部 茂

金属加工メーカーにおいて、再構築プロジェクトに参画し、”現場改善・改革活動”を牽引し、不採算事業部門の建て直しに貢献。その経験を活かしコンサルタントに従事し、国内、国外の企業様において、3直・3現主義を基本に、全員参画改善・改革活動を支援し、「省力→少人化→活人化」を柱に、『高効率・高収益のモノづくり基盤の強化』改善活動を実践推進している。

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