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コンサルタントの視点で見た海外工場運営(3)

4.現地社員との仕事

前回までに、日本人駐在員の役割やその活性化などについて述べてきましたが、実際の仕事は現地幹部と従業員が中心となって 行うのが通常なので、今回はいかに彼らを上手く活用するかについて話したいと思います。

4.1 現地社員との接し方(最初が肝心)

 現地社員が今度上司になる予定の人に対しては、どの国でも全く同じといっていいほど非常に興味を持っています。 前任者との違いは何かの他に、自分の給料を決めるボスという感覚が強いのですが、それに加えて自分にとってどんな メリットがあるかも冷静に判断しています。これは給料以外にも自分がこの上司を通じてどれ位成長できそうか、 必要な知識を得ることができるか、昇進できるかといった項目に及んできます。
 その人達とどのように接するかというと、それらの期待にキチンと自分は応えてあげられる人ですよということを 理解させる必要があります。そのためには仕事上の知識や理解度はもちろんですが、上に立つ人としての要件を十分 備えておく必要があります。その要件として、

 (1) 仕事に関して本物であること。
 (2) 部下を認めてあげること。
 (3) 仕事を行う際に、胸の高まりを呼び覚ましてあげること。
 (4) 部下を包み込んであげること。


がありますが、基本的には目標達成のために方向性を出し、結果に対して判断して、アドバイスや指導が出来ることが 必要になってきます。これらを赴任直後にキチンと出来る状態になっていたら、部下とのコミュニケーションも良くなり、 自分を信じてついて来てくれる部下になります。つまり最初が肝心であり、特に海外では、これが出来ない。つまり自分に とって有益では無いと判断したら、命令はとりあえず聞くものの、心の底では尊敬も無く、あと何年で終わりだから我慢 しようということになりかねません。つまり仕事を進める上で非常に苦労することになってしまいます。
 仕事に関していえば、現地の部下のほうがプロである場合もあると思いますが、役割としてのプロであるということを 見せることが大切です。判断をはっきり行う、上手く行かないときの助言が出来るといったことが役割上望まれることですが、 どうしても自信が無い場合はとりあえず大きな声ではっきり言うことだけでもしたほうが良いと思います。

4.2 現地社員に理解して欲しいこと、教えること

 仕事を進めるにあたり、現地社員には様々なことを理解してもらう必要があります。製品知識はもちろんのことですが、その他に会社のポリシーや 方針、そしてQ・C・D・S(安全)について、そして5SやTQMやTPM、それに加えて会社で行っている改革活動などについても、満遍なく一通りはある程度 理解してもらう必要があります。
 その中でも今や世界共通語になっている「5S」などについては、教える前から「それは知っています」という回答が来る場合が多いかと思いますが、 色々な会社を見る限りその本質を理解しているのか疑問に思う場合が多々見受けられます。「5S」での事例をあげると、ラインは引いてあるがモノが はみ出していたり、通路自体が動線を全く考慮していなかったり、床の清掃はしているものの水漏れを放置していたり、どう見ても今使わないものが ラインの側に置いてあったりする例があります。
 本質を理解させるということは教えるほうがそれをキチンと理解していないと出来ないのですが、例えば「5S」に関しても、整理・整頓・清掃・清潔・躾 という言葉と意味は理解できても、実行する段になると上手くいかない場合が多いのでは無いでしょうか。私は常に『5W1Hで考えませんか?その中で Whoが最も大切で、それは管理監督者の皆さんを言っているのですよ。』ということをお話しています。整理でいう必要か必要でないかは、 <管理監督者が>決めることで、整頓でいう何処に何を置くかは、<管理監督者が>決め、その状態が常に保たれているかどうかは、<管理監督者が> 確認することを意味します。海外の場合は特に曖昧さを嫌うので、はっきりとした指示を出す必要があります。そのうえで5W1Hを決めることは重要 だと思います。
 その本質を理解させるためには、管理監督者を現場に連れて行って、「このものは今使いますか?」とか、「何時使いますか?」といった質問を しながら、「これは不要だから廃棄」「これは直ぐに使わないから移動」といった具体的な指示を出してあげて、整理とはどういうことかを理解 させる必要があります。次に他の場所で教えた内容を実行させて、それで良いのか悪いのかを直ぐ判定し、ダメな場合はその理由と改善策を教えて あげるといった実地訓練を通じて理解させる必要があります。
 5Sに限らず、「知っています」「I know」といった言葉は要注意であると考えた方がよいと思います。日本語でいう「しっています」と 「しています」の違いは「っ」一つですが、この差は非常に大きなものがあります。もちろん「している=出来る」方が良いのですが、活用する 機会が与えられない問題もあるので、現場に連れて行って一緒に実施すると良いと思います。こういった場面を通して相互のコミュニケーションが 出来、お互いの理解を深める上で有効な手段になります。
 日本とアジアやアメリカ、そしてヨーロッパでは、はっきり言わなくても伝わる(伝わった気になる)文化と、はっきりいわないと伝わらない 文化という大きな違いはありますが、顔を突き合わせてのコミュニケーションというのは人間共通の心が通う方法だと思います。特に赴任間も ない人は机でPC操作する時間があったら、現場(製造現場だけではありません)に出て行って、多くの人達と何らかのモノを通してのコミュニ ケーションを行うことをお勧めします。

 次回は現地社員を上手く活用する方法について、成功/失敗事例を交えて、もう少し続けてお話ししたいと思います。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  進藤 淳

大手メーカーにて、長年に渡り品質管理、品質保証の責任者を担当し、クレーム対応及び品質改善に成果をあげる。その後製造部長や海外子会社製造部長等を歴任し現場改善に従事、その後現職に至る。 アメリカ ダラス工場での品質問題対応経験もあり、現在は国内・海外と各企業の品質改善及び生産性改善を中心に指導している。製造現場活性化させながら、品質向上、生産性向上で飛躍的成果を上げる 指導スタイルはクライアントより高い評価を得ている。

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