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コンサルタントの視点で見た海外工場運営(5)

5.海外よもやま話

 今回はこの連載も最終回ということで、今までの失敗事例をもとに色々お話ししたいと思います。

5.1 現地社員の採用について

 幹部職の現地社員を採用する際は人事部門に任せず、可能な限り自ら面接するようにしたほうが良いと思います。採用時には複数の人で面接して 評価することや、 工場見学時に問題点を問いかけて、それに対してあなただったらどのようにしますか?という課題を与えることで、より真実に 近い人物像を知る事ができます。 面接中に自分の業績をやたらと強調する人や、知っていることをたくさん話す人も、現場にて実践的な質問を 行うことできちんと見極めることができます。
 日系企業での経験があるということで採用した人が全く使えない人で、日本人会の集まりにてたまたまその人の話題になったとき、 「あの人は言うことは立派 だけど使えないので辞めてもらった」という話しを聞いて、数社から「うちも同じだった」という話しが出たことがありました。 そういう意味で日本人の集まりも 有益な事がありますが、より良い人を採用するためにはある程度の苦労は必要だということを知らされたことがあります。

5.2 責任と役割について

 海外駐在期間中の失敗は数多くありますが、今でも思い出すのは、良かれと思ってやったことが、結果的に優秀な係長を辞めさせて しまったという苦い経験があります。
 新製品の立ち上がりと製造ラインの移設が同時になってしまい、顧客への納期がタイトな上に品質問題や従業員の問題など様々な事が 重なって、そこの責任者である係長が 少し疲れてしまったので、周囲と相談の上1週間ほど休んでもらうことにしました。しかし生産を 止めるわけにもいかないので、この際大幅に生産方式を変えようということで、 社内から選抜プロジェクトを作って、部品の購入方法から 納入、生産方式に至るまで一気に変えて、結果的に不良も減り生産性も向上し、定時間で納期を満足させるまでの改善を 行ったのですが、 係長が復職したとたん、「自分が任せられているところを勝手に変更した」ということで、激しい剣幕でまくし立てられ、色々と説得を したのですが、結果的に 退職してしまったことがあります。
 日本人の場合は、自分では出来ない場合や不在のときでも、上司が対応して結果が満足いけばある程度納得するものですが、海外の 場合は自分が任せられている職場というのは、 いわば自分の城と同じことで、たとえ上司であろうとそこに勝手に侵入して、たとえ 結果的に良いことでも、本人の了解が無い場合は自分の城を壊された、つまり任せられている 権限を取上げられたと解釈するということです。 優秀な人はその傾向が強いので、可能な限り一緒にやるとか、了解を取りながら進める必要があります。そのエリアが会社に とっていかに 重要な場合でも、その責任者と連絡を取り合いながら進めることが重要です。

5.3 語学力について

 駐在する場合、どうしても語学に対する不安が付きまといます。自分は英語が全然話せない状態で駐在することになってしまったので、 あまり参考にはならないと思いますが、 語学上達の秘訣はどのくらいその言語に接しているかと、真剣さだという話しを英語教室の先生に 言われていました。
 日本人の場合、特に日本人どうしで行動する場合が多く、そうなると話す言葉は日本語になってしまいますが、そうではなく、その言語の 世界に入って、話す・聞く・書くことを 続けると覚えが早いそうです。部屋に閉じこもっているよりも、どんどん外に出て行って自分から そのような機会を作る努力が必要というわけです。
 また真剣さというのはやはり重要だと思いました。現地の語学教室の生徒仲間の中で、メキシコ人は英語が話せるかそうでないかで給料が 全く違うので本当に真剣に勉強しています。 半年くらいであっという間に全員に抜かれてしまった経験がありますが、やはり真剣さが全く ちがいました。でも、もし一人だけで現地に駐在する場合は、必然的にこの二つの条件を 満たすことになり、上達は非常に早くなるので、 最初は苦労しますが、どうにかしなければいけない状況に追い込むというのも必要だと思います。

5.4 アフターファイブコミュニケーション

 日本でのアフターファイブは「宴会」ということになりますが、海外の場合は家族を大切にするので、突然誘っても特に週末は当り前のように NO!と言われるし、事前に スケジュールを決めておいても、誘ったほうがご馳走するという暗黙のルールがあります。この場合でもポケットマネーを 出しているのか、それとも会社の経費で落と しているかというのは良く見ているので、注意が必要です。
 それよりも、自分が何か一芸に秀でている場合は、それが意外なところで役立つ事があります。世界共通なのが音楽(歌、もしくは楽器の演奏)で、 現地の音楽を プレイ出来たり歌えたりするとそれだけで距離が一気に縮まります。カラオケで現地の歌を歌えることも良いことだと思います。 それらを突然予期しない状況で出来たら 効果は最高です。音楽以外でも、アメリカやヨーロッパでは日本人は空手や柔道は当り前のようにやっていると 思っているので、ちょっとした型でも見せてあげると、 とても喜びます。それ以外でもスポーツやイラスト、忍者やアニメ、料理なんかがちょっと 出来るだけで、パーティでは引っ張りだこになり、そこから友人が出来たり、 色々な考え方を学べたり、コミュニケーションが取れたりするので、 これらを有効に活用して駐在生活をエンジョイすることも大切です。
 自分の場合はロックとベースボール、そして料理でしたが、ベースボールについて、アメリカ以外は全く興味がないので、フットボールか バスケットが出来たら 最高だと思いました。それ以外の国でも国技的なスポーツ(中国だったら卓球とか、インドネシアだったらバトミントンとか)が 出来るだけで一気に距離が縮まります。

5.5 一番大切なこと

 今まで色々なことを話してきましたが、現地の人達を上手く使いながら仕事をやるためには、日本にいるとき以上にコミュニケーションが重要だと思います。 それに加えて、 上に立つ人は判断を速やかにはっきり言うことと、部下を信じているという姿を見せれば仕事は上手く行くのではないでしょうか。いずれにしても、 駐在生活が終ったときには 会社の業績も上がり、また自分自身も成長したということにしたいものです。万一あの時に・・・という反省があったらそれをあとの 仕事に活かすようにすれば良いのです。 この貴重な経験が自分の人生にプラスになったということが言えれば成功ではないでしょうか。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  進藤 淳

大手メーカーにて、長年に渡り品質管理、品質保証の責任者を担当し、クレーム対応及び品質改善に成果をあげる。その後製造部長や海外子会社製造部長等を歴任し現場改善に従事、その後現職に至る。 アメリカ ダラス工場での品質問題対応経験もあり、現在は国内・海外と各企業の品質改善及び生産性改善を中心に指導している。製造現場活性化させながら、品質向上、生産性向上で飛躍的成果を上げる 指導スタイルはクライアントより高い評価を得ている。

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