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国内製造業の課題(1)

第1回 日本製造業の課題

1.日本製造業の進むべき道

 ここ最近、ソニー、パナソニック、シャープ等の家電メーカーの従業員削減の報道が目立ちます。いずれも2012年3月期決算で赤字の企業です。 昨年までは海外の製造業のコンサルティングも行い、現在でも海外工場と密接に関わる国内工場の指導を行う立場として、日本の製造業がどのような道を進むべきか考えさせられます。
 進むべき道の一つは、価格競争から脱し、付加価値を追求していく道でしょう。現在の厳しい経営環境下にであっても、国内の電子部品メーカーは比較的高い収益を確保しています。 自社の強みが何であるかを知り、他社との差別化を徹底して行うことにより、価格競争を回避しようとしています。また、パソコンの組立を日本へ移管するという動きも出てきました。 日本ヒューレッド・パッカードや中国パソコンメーカーのレノボが、パソコンの一部を中国から日本での生産に切り替えました。これは価格だけでなく、品質、納期の面も含めてその方が有利だという判断によるものです。 品質、納期も含めた付加価値を高めることを追求した結果です。
 その一方で、価格競争を正面から受けて立つ企業もあります。「セル生産方式」を導入してキャノンは、ものづくりを徹底して追求し、2015年までにデジタルカメラのラインを完全自動化し、無人化する方針を打ち出しました。
 上記いずれの選択肢を取るにしても、徹底的にその道を究めていかなければ、生き残りは厳しいでしょう。

2.国内製造業の課題

 国内製造業のコンサルティングを行っている中で、共通の課題として以下の3つの課題が挙げられます。

 (1) 組織の目的、役割が明確になっていない。
 (2) 人材が育っていない(特にリーダー)。
 (3) 技術技能の伝承が出来ていない。

 これらの課題を解決していかないと、上記で目指す道を究めることなど出来ないでしょう。
 まず、「組織の目的、役割が明確になっていない。」ですが、どの企業にも会社方針、工場方針等はありますが、それに基づきリーダー(課長、係長クラス)が何をすべきか、従業員が何をすべきかが明確になっていない場合が多く見受けられます。 「職務分掌や業務一覧があり、それに基づきやっています。」というところもありますが、それらが会社方針、工場方針と結びついておらず、5年も10年も前に決めた業務を漫然と行っており、今やるべき仕事ができていません。 このような状態では、現在の急変する経営環境の変化にはとてもついて行けません。
 次に「人材が育っていない。」ですが、バブル崩壊後の就職氷河期(1993年~2002年頃)に入社した30才代半ばから40才代に至るリーダークラスの人材自体が少ないことがまず大きな原因の一つでしょう。 しかしながら、それ以外に、リーダークラスが、日常の業務に追われ、本来リーダーとしてやるべき先を見た仕事ができていない。そのため、後始末的なムダな業務が多くなりそれが自分の仕事と思ってしまっている。 また、従業員も、何が問題であるか判らない場合や、問題として挙げてもそれらに対するアクションやフィードバックが無く、結果として言ってもムダだということで、問題が放置されている場合が多々見られます。 以上のように、問題や課題を自ら取り上げ、自ら取り組んでいこうとする人材が育っていません。
 最後の「技術技能の伝承が出来ていない。」は、かつて2007年問題とも言われました。団塊の世代の方々が定年で退職される中、その方々が持っている技術や技能が伝承されていないという問題です。 雇用延長によって、65才定年まで伸びた会社もありますが、今年2012年はその方々が退職された年となり、また高度経済成長期に会社を引っ張ってきた50代以上の方々がこれから定年を迎える中で、その方々が持っている技術・技能が引き継がれずに企業の財産が失われています。 これは、製造の現場での技術・技能だけでなく、間接業務に関しても言えることです。

 次回のコラムでは、上記国内製造業の課題に対する方策を説明致します。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  安田 俊道

大手電機メーカーの研究開発部門、技術部門にて光通信用部品の研究、開発、設計、さらには製造の立ち上げまで行う。その後、製造技術部門にて製品の原価低減、生産性向上活動を行う。中小企業診断士の知識を生かした理論的、実践的な指導で指導先より高い評価を得ている。

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