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失敗しない改善・改革の進め方(3)

1.はじめに

 改善・改革活動で『 やらされ感 』、『 嫌悪感 』をメンバーに抱かせず、継続的に成果を出し続けるためにはどのようなことを意識すべきなのか、またどのようなことをすれば良いのか、今回のコラムではそのポイントについてご説明します。


2.改善・改革活動推進でのポイント

 失敗しない改善・改革活動を推進するためのポイントの一つとして『 自由度 』と『 組織的支援 』があります。
『自由度』と『組織的支援』が個人・組織のスピーディな行動とアイデアの創造を促し、そのことにより人は達成感、成長感、そして自己実現が得られます。このような実体験が得られる取り組みであれば、これまで以上に主体的な取り組みがなされ、活動は継続し更なる進化も遂げることとなります。
  ここで『自由度』と『組織的支援』について説明しますと、『自由度』では何もかも自由、気ままに、無法状態で活動を推進することではありません。また『組織的支援』とは周りの方がすべてをお膳立てして、何から何までを援助することではありません。
  次に『自由度』と『組織的支援』についてその概念について説明します。。

自由度とは・・・
人間は自分の力で成長したり、悩みを解決する能力を持ち自分の可能性を自律的に実現していこうとする志向性を持っているという人間観を持つこと

組織的支援とは・・・
自由度に記載した人間の自己解決能力を信じ、自分の準拠枠を外し、相手に寄り添い、相手の感情、欲求、葛藤など内面の世界を理解しようとすること。またそこで必要となる援助を組織

3.カウンセリング技術の導入

 『自由度』と『組織的支援』の考え方は、アメリカの心理学者であるカール・ロジャーが提唱した“ 来談者中心療法 ”というカウンセリング技術にあります。来談者中心療法についてはこれまでのコラムでも紹介してきましたが、その特色は、来談者(クライアント)を中心として考えることです。人は同じ事柄を見ても人によってその受け止め方(認知)は異なります。ましてやその認知を介した感情や行動は更に異なってきます。つまり改善・改革活動を推進する上で、スタート時点で同じ物事を見てある人は問題やムダと感じても、他の人が同じ物事を見て同じように問題やムダと感じるとは限らないということです。この認知が適正に行われていない状態で、問題解決が行われると『やらされ感』や『嫌悪感』を感じさせることとなってしまいます。
  上記のようなことが起こりうる可能性の中で、改善・改革活動を失敗させないために踏み外してはならないポイントが『自由度』と『組織的支援』に盛り込まれているのです。

 B社での事例

 ある企業B社の製造現場でレイアウト変更を行った際、そこの職場リーダーが一人でモノ・ヒトの動線を定量的にかつ論理的に分析を行い、最適なレイアウトを決定し、その通り変更を行いました。 これは、改善活動でありがちな、全員参加と言いながらも活動を推進しているのは一部の方(リーダーのみ)になってしまっているケースです。
リーダーはメンバーに喜んでもらえるものと、その評価を楽しみにしていました。しかしメンバーからは「元のレイアウトに戻して欲しい。」とのブーイングの嵐でした。 予期せぬ反応に、メンバーが言うように元に戻したリーダーは、自ら行った行動を振り返り、なぜメンバーからそのような批判が挙がったのか?進め方に何か問題があったのか?を考え、レイアウト改善の進め方を変えました。
  その結果、次はメンバーにレイアウト変更の目的である『仕事を楽にする』ということを伝えるとともに、必要に応じて分析方法などを教えました。 そうするとメンバー達は自ら考え、その通りにレイアウトを変更しました。その変更後のレイアウトを見たリーダーは内心思いました。「自分が立案したレイアウトとそんなに変わらない! 」 でもメンバーはレイアウト変更後、 リーダーが変えたレイアウトにはケチをつけていましたが、自分が考えて変えた時には変化を受け入れて、やりにくい所があっても我慢しながら作業をしていました。そしてそのやりにくい所は、周りが何も言わなくとも自ら改善をしながら、作業をやりやすいように変化させていきました。

4.カウンセリングの技術的視点での究明

 B社のケースを見てみると、つくづく人間は感情の生き物であると感じさせられます。いくら論理的に、そして定量的に正論を伝えても、それを冷静にかつ合理的に受け入れることができないのです。 ある事柄を認知し、感情や行動が芽生え促されますが、ある事柄を認知する段階や、認知したことから感情が芽生える際のプロセスは人それぞれであり、千差万別となります。
  そのような視点で考えていくと「3.カウンセリング技術の導入」でも記載しましたがまず大切なことは『 認知 』にあります。
  とにもかくにもまずは、、
      
 ここでアプローチを誤ると、その後の感情や行動も期待できるものは生まれてこないのです。
 改善・改革活動において重要なことは他人が問題指摘するのではなく、本人に気づいてもらう。『気づき』を与えることです。 問題を問題として正しく認知できない理由は何なのかを究明し、解決を図ることが大切です。これらの過程において活動推進者が気をつけないといけないことは、『人はあらゆる認知において不一致状態であること』を前提に考えることです。
 この不一致状態とは、簡単に言えば、

 (1)人は常に冷静に判断できないこともあります。
    時にはこれまでの経験や知識により、誤った認知や判断に至るのです。

 (2)また自分のことをわかっているようでわかっていないことが多々あります。

  よって正しく認知させ、正しい意識・行動を促すためには、如何に一致状態にするかを考えなければならないのです。その打開策の一つに『 傾聴 』があるのです。傾聴技法の説明はここでは省略しますが、活動推進者には是非に身に付けて頂きたいスキルです。
      

5.物事を認知するプロセスで阻害するもの

 また上記B社のように人は物事を考えるときについ他責(他人のせい)にしてしまいがちです。他責にした方が本人にとって『楽』だったり『都合が良い』のです。 物事を一旦自責(自分の責任)と考えず他責と仕分けると、そこで問題の掘り下げの思考が止まり、問題をざっくりしたものとして捉えてしまいます。 そうなると、あらゆることに支障がでてきます。
               

6.次回のコラムについて

 物事を自責と考えずに他責と考えてしまうと、問題意識があり問題発見をしても、解決が上手く進まない。いくら定量的に、論理的に適正な改善案を提案しても受け入れることができないのです。また解決した成果が表れてこないこともあります。 しかし、他責であっても問題が発見できるということは、「楽にしたい」「良くしたい」という欲求の現れです。人は様々な場面で欲求を持っています。その欲求を改善・改革活動に対して正しく向けるようにすることが必要です。

 次回は、如何にすれば物事を他責では無く、自責で考えられるようになるのかをご紹介します。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  内山 三朗

大手産業機械メーカーにて生産技術、生産管理、そして外部コンサルティングの事務局として社内の改善・改革活動を推進してきました。その経験を活かしコンサルタントに転進、製造現場といった直接部門から間接スタッフ部門に向けたコンサルティングを実践中。

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