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企業ナレッジ力の低下を憂える

 テクノ経営に入社以来、十六年程経過致しました。この十数年の間で企業の環境変化、就業構造、雇用者気質等大きく様変わりした現状を身をもって痛感致します。
入社以降、一環したテクノ経営の『 VPM方式 』(人ありきの視点から少人化による活人化を推進し企業力、収益力を強化しつつ人を育てる。)をコンサルファームとして一途に企業指導を実践している私にとって、 入社当時一読した 野中・竹内両氏共著による『 知識創造企業 』の内容が現実に現在の日々の企業指導の中で日増しに大きな課題となって困難度を増しております。

 これは私のみならず、クライアントである企業が「一番危惧している問題であり思っていながら手を付けない、どうしたらいいか分からない領域」となっております。 この『 知識創造企業 』著者の竹内氏が 日本経済新聞(2009年7月7日)に寄稿している記事は、将に著者の先見性と現実という間での矛盾とVPMの今後のあり方を予見してという思いの中で身につまされる内容でした。

その中で著者はドラッガーの説の一部を引用して
 「経営のエッセンスは未来を創ることにある。
 未来は現在の延長線上にはない。未来を創るには新しい知識を生むしかない。
 この大混乱・不確実の時代だからこそ未来を創る経営が求められている」
 と、
 また 「その知識とは人間の信念を真実へと正当化してゆくダイナミックなプロセスである」 とも述べております。

  そして「GM」と「トヨタ」の企業事例紹介の中でGMの衰退要因は自動車産業を「製造業」としてしか捉えていなかった事、 一方トヨタは「製造業 + 知識産業」として捉えている。この二つの根本的な違いが明暗を分けたとしており、両者共通の製造業の「生産手段」がGMは組立ライン・機械・ロボット・オートメーション等とし、トヨタは知識産業の生産手段は 社員一人ひとりの「手=暗黙知」と「頭=形式知」としており、トヨタは工場労働者を組立ラインで働く単なる「一組の手」とは考えず、一人ひとりが直接的な経験や他者とのかかわりから新しい知を獲得する「ナレッジワーカー」ととらえる。 ゆえに新しい「アイデアやイノベーション」をいつの日か創り出すであろう人材への投資を惜しまない。
 また、GMを含む多くの企業はIT主導のシステム構築(形式知)を行う過程で、人は交換可能なパーツ(道具)として扱われ 「アイデアやイノベーション」を創り出す主体者ではなくなってしまったとも記しています。
現在、企業の指導の中で「イノベーション=革新・創造」の弱体化による「モチベーション=動機付け・意欲・やる気」の低下は 非常に目に付く現象として、ここ6~7年急カーブで増加しており、指導時の最大のテーマであり大きな阻害要因となっております。

 イノベーションの源泉は、間の洞察力や直感・ひらめき等の高質な「暗黙知」であると考えます。
  特に米ハーバートビジネスレビュー(2009年6月号)では「何故こうした状態に至ったのか、知識創造経営の観点から企業は「世のため、人のため」に存在するという高質な暗黙知が欠如してしまったからである」と、その中で竹内・野中両氏も共に倫理やモラルに裏付けされた「共通善」の思いや価値感、信念が失われてしまったとも論評しており、 暗黙知と形式知の相互交換プロセスのスパイラルアップ(共同化・共感する 表出化・概念にする 連結化・体系にする 内面化・血肉にする)の継続がイノベーションを生み出す源泉となるとも述べています。

 企業とは、今と未来、暗黙知と形式知、利益と共通善、将にこの企業矛盾をいかに払拭し、企業で良いアイデアを持って、それを実行し商品を買って貰ってそれで企業と世の中が潤い動き、その結果として社会に貢献出来ると続けています。
 これはテクノ経営のVPM方式のコンセプトと共通するテーマであり、VPMはこのコンセプトを形式知(科学的分析手法、ITシステム、問題解決法等の原理原則をVPMシステムで体系的、系統的に実践)と 暗黙知(三直三現による徹底した現場主義による問題探求・問題形成・原因遡及・実施策立案・負荷管理による標準化)による両輪を回しながらナレッジ力育成(人を育てる)を活動の基盤におき、 「少人化による製造業の生産手段の強化=生産性=利益」と、活人化による知識産業手段である将来を見据えた「ナレッジワーカー育成=共通善の醸成」の両面で「企業の矛盾」に柔軟に対応しうる改善力・現場力・製造力を 確実にステップアップさせ強化して行くことであります。
 そしてこの不確実な時代、未来を予測・予言することは難しいが、困難であっても未来を創ることはやりがいがあり、出来ない事ではないと考えます。その意味で我々は、問題の三発(見える問題=過去・探す問題=現状・創る問題=将来)のそれぞれのステージで、あらゆる環境に柔軟に挑戦し続ける企業力をつけることが必要です。

 企業が人を育ててこそ、産業立国日本を背負える「ナレッジワーカー」が必然的に生まれるものです。
 人を育てるとは、大胆な創造力と地道なナレッジ力強化の実践が必要です。



   書籍画像

<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  奥川 正文

大手建築資材メーカーにて既存・新素材による商品企画、開発や製造ラインの省力化等の要職を歴任し、テクノ経営総合研究所のコンサルタントになり、現在に至る。大幅な生産性向上と意識改革による大胆且つ着実な課題解決は好評である。特に全体最適へのアプローチは論理的で分かり易く、顧客企業再生への熱意と実践的指導力は各社から高い評価を得ている。

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