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タイ人中間管理職の育成と自立(前編)

 はじめに

  インラック前政権が選挙戦で行った公約の中で最低賃金を300バーツ/日にすることが実施されました。ただ人件費については公約では5年間は上げないといっていましたが、 現政権に変わって先のことは不透明なため、再度のアップを覚悟しておくことが大切ではないかと思います。いずれにせよ政治が混とんとする中、どのような変化が起きるかわかりません。 状況を見ながら今後に備えることが必要だと思われます。
  更なる人件費の高騰と人材集めの厳しさがますます拡大することを想定し、対応策の準備が必要になってきます。

1.人の効率を極限まで追求する
人件費での比較だけはなく、一人の作業量の比較で効率を改善することが 大切です。また、人件費の比較は対日本ではなく、タイでの過去比較で判断をすることが重要です。

2.機械化を最初から導入する
今後の人件費高騰、人材集めの厳しさ対応のため、安いと思っている労働力をあてにしないことも視野に入れて機械を積極的に導入することを考慮することが必要になります。

 近年、タイでは生活水準が向上したことで、働く人の考え方も変わってきています。「休日出勤をやらなくなる」「きつい仕事や環境の悪い仕事は避けるようになる」等、仕事を選ぶ人が増えてきました。 また、BOIでもローテク産業は恩恵を与えない傾向が強まり、仕事の選択が行われるといわれています。更に労働集約的な仕事に外国人労働者が多数タイで働いていますが、 タイの雇用確保のため外国人労働者の雇用を制限されるのではないかとの話題も出ています。このように労働環境は刻々と変化をしておりそれに対する準備が必要となってきます。
 そこで、今後の対応についてまとめてみると次のようになります。

1.人の効率を最大限に追求し最少の人員で仕事ができるような仕組みを作る
  ・中抜き組織:余分な職位をやめる。
  ・分業体制の排除:専門職でもマルチスキル化する。
2.本格的な機械化、装置化を推進する
  ・手作業はなくする(キーボードではなくバーコード化等)
  ・最新の装置に変更し作業の時間を短くする。
3.不良、クレームを最小限にする
  クレーム、不良処理の対応に人を必要としない。
4.エネルギー使用を最小限にする

 本稿では、チーム活動・協働活動によって、組織内における意識変化を達成するため、タイの人たちをいかにして育成するかについての事例をご紹介します。タイ人を理解し、コミュニケーションを取れば、彼らは必ずや成果を導き出します。

事例紹介

1.タイの日系企業の3つの階層

 タイの日系企業には、3つの階層があります。「日本人」「タイ人管理職」「タイ人オペレータ」です。この階層間の相互の協働、コミュニケーションが希薄なため様々な問題が起こります。

    

2.「4C+1C活動」(5C)

 「3つの階層」の中で自立した管理者を育てるためには5Cを実践しながら根気強く指導育成をすることが大切です。
5Cとは次の5つの項目です。

1.対話:Communication
   相手の話をよく聞き何が困っているかを常に把握する。
2.協働:Cooperation
   困っていることを一緒に考え行動する。
3.挑戦:Challenge
   失敗を恐れず挑戦をしてもらい、失敗の責任を問わず一緒に解決する。
4.機会:Chance
   なかなか進まないからと言って仕事を与えないのではなく積極的に仕事をする機会を与える。
5.信頼:Confidence
   仕事を依頼するときは目的,何を期待しているかをはっきり伝え相手を信頼する。

    

3.タイ人には期待するマネージャーになれる能力は無いか

 タイ人育成の基本姿勢として心掛けるべき点は次の項目です。また、育成には根気と時間が掛かることを認識して行う必要があります。

3-1.性善主義
タイ人にも改善能力、管理能力はあると信じる事が必要であり、不足点があれば、『きちんと教えていないことがないか」と考えること。

3-2.制約と恐怖感の排除
タイ人が安心して、自由に考動できる環境を与える事が重要となる。
「こんな事を言ったら、反対されるかもしれないな」「詳しい説明をせよと言われたら、出来ないかも知れないな」「失敗したら責任を取らされる」等の制約、恐怖を取り除くこと。

3-3.チャンスを与える「3割主義、打点優先」
タイ人に、改善実施を躊躇させず、習慣付ける為に次のような考え方で機会をあたえる。

●改善対策のすべてが成功しなくても良い。3割うまくいけば十分。
失敗を恐れず、まず実行する事が重要。
イチローでも4割は打てない。野球は1試合5打席程度しかチャンスが無いが、改善は何回でも打席に立てる。打率は低くても、自らの考動で多くの打席に立って、打点を稼ぐことができる。

3-4.褒めて伸ばす
改善の結果が良かった場合は必ず褒めることが必要です。
言葉だけではなく業績に対する評価を行い、賞与などで金銭的な褒章を与えることも大切です。

改善手法「VPM」の紹介

 日系企業における最適な改善手法としてVPM(Value Producing Management)という人材育成ツールがあります。企業の中で人材を育成する際に用いる改善の手法です。 基本的には、「日常改善」と「プロジェクト改善」を主体に、「5C」を駆使しながら問題を解決する中で人材の育成と自立を図ります。

    

 今回は、ローカル従業員による改善活動のポイントをお話しました。VPM活動はコミュニケーションを活性化させ、リーダー育成にも効果的な実践手法です。 タイ人の気質や考え方を理解し、能力を発揮できる場を整えれば、彼らが持つ潜在力を必ず引き出すことができます。
 コラム後編では、その実践篇としてチーム改善によるコストダウンや生産性向上、省エネルギー活動などの事例を紹介したいと思います。

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<<執 筆>> テクノマネジメントコンサルティング・タイランド  山本 信幸

電子部品製造業にて生産性改善、生産技術改善(VE,VA)、事業再構築、コア技術の確立、製造現場の作業改善、トヨタ生産方式導入等の業務経営を 活かし、コンサルタントに転身する。日系企業の海外工場における課題解決に関して、数多くの指導実績を持っている。

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