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社員が変わる! 効率的なOJTの進め方!(前編)

はじめに

  様々な企業で、技能向上や技術伝承の話題になった時に、よく言われる言葉があります。「若手社員が育っていない」「教えてもなかなか上達しない」「教わる若手社員の反応が薄いので教え甲斐がない」など、若手社員教育についての困り事です。しかし、教育制度やその実態のヒヤリング、現場で実際に教育をされている場面を確認すると、業種にかかわらず、共通の事実が見えてきます。
 ほとんどの方が強調されている教わる側の問題よりも、実は教える側やその教育環境に多くの課題を抱えているという事実です。
 このコラムでは、これらの問題を解決するための若手社員への効率の良いOJT(On the Job Training)教育について、ご紹介したいと思います。

1.OJT教育の実態

 若手社員育成についての困り事をお聞きした際には、「教育はどのように行っていますか」という質問をするようにしています。その際に、必ずと言っていいほど返ってくる言葉が、「教育は“OJT”で行っています。」という内容です。 しかし、現場で実際の教育状況を確認すると、OJTとは名ばかりで、ただ単に現場で一緒に作業をしているだけという光景に出会います。これは、『OJT=現場での作業』という誤った認識によるものです。 先輩の作業を見て、自らの肌で感じ、試行錯誤の上で、技能向上を成し遂げるというこれまでの方法は、正しいOJTとは言いません。
 では、OJTとは何か?それは、日常の職場の中で業務を行いながら、仕事に必要な知識・技能を“計画的”にレベルアップしていくことです。現場で一緒に作業をするだけでは、本当のOJTとは呼べません。なぜならそこには、この“計画的”という考え方が抜けてしまっているからです。 この様な説明をしますと、「言っていることは理解できるが…」という前置きと共に、出来ていない理由として、次の3つのいずれか、もしくは全てが挙げられます。

 1)教育する時間がない
 2)教育する人がいない
 3)教育する方法がない


 という3つの“ない”です。何故そのような思考に陥ってしまうのでしょうか?
 次からは、それらの問題とその問題を生む原因について考えてみたいと思います。

2.OJTが出来ない3つの言い訳とその原因

(1)時間がない

 真っ先に出るのがこの言い訳です。若手社員教育についての考え方をお聞きしますと、ほぼすべての上司の方が「教育は大事だ」と言われます。 しかし、「教育のためにどれだけ時間を割こうとしているか」と確認すると、「教育係に任せている」という答えが返ってきます。つまり、組織的には教育時間を作っていないということです。 一方、教育係の方に教育時間について確認をすると、「自分のノルマに追われて、教育どころではない」という非常に苦しい状況をお聞きします。 教育係は時間を作って教育をしたいと考えていても、現実として自分の仕事を抱える中では、充分に時間を割けないというジレンマに陥っているのです。
 この問題の本質は、教育係が教育に費やす時間がないのではなく、組織として教育に充てる時間を積極的に確保しようとしていないことなのです。 よって、教育係個人の問題ではなく、仕組みの問題なのです。

(2)人がいない

 次に多いのがこの言い訳です。若手社員を教えることが出来る適切な人がいない、といった内容です。本当にそうでしょうか? 特に、熟練者と比較的経験年数の浅いメンバーで構成される職場ではよく耳にする言い訳です。これは、教育係に最適と考えられている中堅層が在籍していないために、この様な発言に至ってしまう様です。 実際に多くの熟練者は、「仕事は見て覚える」という考え方を持っており、親切丁寧に教育を行うという今時のOJTに抵抗を持っているため、教育係には向かないという判断です。 一方、経験年数の浅いメンバーについては、その人自身がまだ教わる立場であるため、人を教育するのは難しい、という理由で教育係から除外されます。その結果、人がいないという発言へとつながっていきます。
 しかし、中堅の腕の良いメンバーがいたとしても、同様の言い訳が聞かれます。そのメンバーを教育に充てると日常業務に支障をきたすという判断から、教育係から外したいという考え方です。
 この問題の本質は、教育を行う人がいないのではなく、限られたメンバーでどの様に役割分担して教育を行っていくかが、真剣に考えられていないということなのです。

(3)方法がない

 この言葉は教育係からよくお聞きします。これまで「見て覚える」という教育を受けてきたために、いざ自分が教える立場になったら、どの様に教えていいかわからないといった問題です。 これは、教育方法だけではなく、若手社員とどうやってコミュニケーションを取ったらいいかわからないという内容も含んでいます。
 教える内容については、手本となる作業手順書や作業標準書といった類のものが作成されているものの、教育を受ける側どころか、教育を行う側も見たことが無いというのが実態です。 また、その手順書の中身を確認すると、若手社員には難解な表現であり、これを基に作業をすることは非常に難しい内容になっている場合があります。最悪の場合は、実際の作業と大きく乖離しており、もはや手順書の体をなしていません。
 ここでの問題の本質は教育する方法がないのではなく、教育係が若手社員とどの様に関係性を築き、どの様な内容を教えるかが明確になっていないだけということです。

まとめ

 以上、OJTに対する誤解、社内での推進における問題点について説明しました。繰り返しになりますが、行き当たりばったりの現場指導はOJTではありません。教育目標や内容を明確化し、計画的に進めなければ本当の効果は期待できません。 「時間がない」「人がいない」「方法がない」という言い訳は、正しいOJTの進め方がわからないという問題に行き着きます。
 次回は、今回挙げた3つの問題を解決し、効率の良いOJT教育を実施するための具体的な方法論について説明します。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  岩崎 行緒

大手電機メーカーにて、電子部品のプロセスエンジニアとして新製品開発から量産導入を行ってきました。その後、製造部門では製造現場の工程安定化に取り組んできました。その経験を基にコンサルタントに転身し、生産性向上や品質向上、コスト削減を現場と一体となって実現しています。また、活動を通じてメンバーの意識改革を実践しています。

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