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HALAL(ハラール)ビジネスとHALAL工場(前編)

【前編】イスラム市場と理解しにくいHALAL(ハラール)食品

※「HALAL(ハラール)食品」とは、イスラム教の法律に則った食べ物のことです。

はじめに

 イスラム圏の人口は、堅実的な予測でも2030年には世界の1/4を占めると言われる増加の一途です。
 日本では2020年の東京オリンピックに向け、多くの外国人を受け入れる体制も進んでいますが、現在、イスラム圏からの旅行者は人口の割に少ないと言えます。 イスラム圏の人々にとって一番の壁は日本におけるHALAL(ハラール)フードでしょう。
 逆に日本企業がイスラム圏に進出する際もHALAL認証が必要になってきます。
 本コラムの前編では、ASEAN諸国の中のイスラム文化の実情と、HALALフードの理解を深めるポイント、後編ではHALALに対応できる食品工場の設立から運営方法のポイントについてご紹介します。

         

HALALビジネスの巨大市場

 HALALビジネスの世界的市場規模は300兆円とも言われます。すでに大手日本企業が認証を取って事業展開を図っていますが、最近では中小企業もHALAL認証取得が増えてきました。
業種も食品だけでなく添加物、化粧品、医薬品など多岐にわたっています。日本で作った製品や原材料は、日本でHALAL認証を取得する必要があり、その認証機関があります。 海外で作る製品はその国で認証を取得する必要があり、その国々でHALALマークが制定されています。数多くあるイスラム圏の国々でもHALALに関する厳しさは国によって異なります。
 ASEAN10 10か国の中ではブルネイが一番HALALに厳格な国であり、中東諸国にも通用すると言われていますが、その実情はあまり知られていません。 ブルネイは、天然ガス・原油でASEAN諸国ではシンガポールに次ぐ名目GDPを誇る国ですが、その他の産業が育っていないのが実情です。
 一方、マレーシアは国家機関によるHALAL認証を行っており審査制度も信頼性が高くHALALビジネスのハブとしてイスラム諸国へ繋げる可能性も考えられます。 又、インドネシアは国民の9割以上がムスリムで、ムスリム人口としては世界最大の国です。 従って、インドネシアでビジネスを進めるにはHALAL認証取得がイスラム市場参入の必須条件になります。
      

理解しにくいHALAL食品

 我々日本人の日常生活では身近にHALALフードが無いので理解しにくいと思いますが、HALAL認証取得にあたっては豚肉やアルコールを含まない、食材のトレーサビリティや製造工程の管理状況も重要になってきます。 そこで我々日本人にはなじみの薄いHALAL認証とはどのようなものかを少し紹介したいと思います。

 ムスリムの人々が豚肉やアルコールを禁止している事は多くの方がご存知だと思います。 では、豚肉とアルコールのみ排除すれば大丈夫なのでしょうか。実はもっと複雑なシステムになっています。

(1)豚肉以外でも禁止されている物が多くある。

 ・獲物を捕獲するための牙や爪のある動物。
 ・殺し方がイスラムの定める正規の手順に従ったものでない場合。
 ・その家畜が食べた餌にHALALに違反する物が入っていた場合。
 ・保管場所や輸送時に豚が一緒になっていた場合。

(2)野菜や穀物にも禁止されていることがある。

  ・野菜や穀物でも肥料に豚の糞などが使用されたもの。
  ・遺伝子組み換えが行われたもの。

(3)医薬品や化粧品にも制約条件がある。

  ・ワクチンの製造過程で豚の酵素を使用したもの。
  ・発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用した場合。

(4)アルコールの扱い。

  ・容器や製品の製造過程で消毒の目的ではアルコールの使用は可能だが、製品に混入してはならない。

(5)生産設備の扱い。

  ・設備の表面をバフ研磨などで仕上げる際、研磨剤に豚のラードなどから精製した油類を使ってはならない。

      

 以上、ほんの一部を紹介しました。HALALは多岐にわたり複雑なシステムになっていますが、世界的に統一された基準はなく、各国の認証機関によって違いがあります。
 更にイスラムでは「故意に違反せず、法を越えず必要に迫られた場合は罪にはならない」とあります。
 従ってムスリムが単独行動する場合よりも、複数人数で行動する場合の方が仲間の目を気にするあまり、厳しい判断になる傾向があります。 以前、3名のムスリムに日本に出張してもらった事があったのですが、その際、HALALを気にするあまり彼らは何も食べなくなって困り果てた経験があります。
 現在は食の世界もグローバル化し、ムスリムの人達は今まで以上にHALALを気にしながら日常や旅行先で過ごしています。ムスリムの人達が頼りにするのは各国の認証機関が認めた証のHALALマークなのです。 東南アジアでスーパーマーケットに立ち寄った際は食品に記されているHALALマークを確認してみてください。
 また、ペットに関しても犬は嫌われ、猫は好まれます。従ってイスラム圏では犬は人間に近寄ろうとせず、逆に猫が人懐っこい傾向があります。豚や犬は病気を媒体する動物であると考えれば納得できると思います。

 このようにHALALとは複雑なシステムですが、私たち日本人も食の安全を考えた場合、国や産地で選ぶことがあると思います。最近は生産農家の顔写真付きの野菜に人気があります。 日本の食の安全・信頼性はイスラム諸国にも高評価なのです。そこにHALAL認証が加われば大きなビジネスに繋がることは容易に想像できます。 世界の人が羨む日本の水道水に、更に浄水器を付けているのを見たら他国の人は驚くでしょう。
 このような例を直接比較することは乱暴でしょうが、イスラム文化を理解するうえで少しでも参考になればと思います。

 ムスリムの人達が安心できるHALALですが、その認証を得る事が出来る工場設立と運営はどうあるべきかを、次回の後編でお話ししたいと思います。

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<<執 筆>> 株式会社テクノ経営総合研究所  清水 英男

大手家電メーカーで長年生産技術要職に携わり、1990年以降は東南アジア・イスラム圏、中国の工場建設・立上~運営安定化に尽力を注ぎ、その後コンサルの道へ。 日本人と現地人の文化の壁を越えたマネジメント力と、テクノ経営が誇るVPM手法を基軸にしたコンサルティングは海外工場の諸問題解決にも多くの成果を上げ、高評価を得ている。

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