ASAP2012vol_3 page 8/12
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経済時評Business News「イノベーション立国・日本への提言」1家電業界の不振歴史的な円高、新興国の追い上げ、地デジ終了と共に縮小する国内市場…。日本のものづくりにとって苦しい戦いが続いている。2012年4....
経済時評Business News「イノベーション立国・日本への提言」1家電業界の不振歴史的な円高、新興国の追い上げ、地デジ終了と共に縮小する国内市場…。日本のものづくりにとって苦しい戦いが続いている。2012年4月、国内の大手家電メーカーが相次いで業績予想の下方修正を発表した。パナソニックでは、プラズマテレビ生産の採算性悪化により、わすか稼動2年で尼崎工場の休止を決めた。液晶テレビとの性能差が縮まってきたためである。一方、液晶テレビの国内一貫生産で高いシェアを誇っていたシャープは、液晶バネル事業に展望が見えず、EMS世界大手の鴻海精密工業(台湾)との資本技術提携に踏み切り、ソニーからも1万人規模の人員削減が発表された。家電メーカー凋落の主因はテレビ事業の低迷と設備投資等の失策にある。また、テレビ価格の下落、国内販売の不振などの悪循環も重なった。世界的なテレビ需要の上昇に対して、日本の家電メーカーの海外販売費率は低い。その理由はコストやマーケティングで優位に立つ新興国メーカーにシェアの大半を奪われているためだ。新興国が急速なシェア拡大に至った理由は、アーキテクチャーのモジュラー化が進んだためと言われる。技術進歩が極限に達し、パーツを寄せ集めれば簡単に製品化できるようになったためだ。もはや、テレビもパソコンや携帯電話のような存在になっているのだ。その結果、メーカー間の技術的差異や製品の持つ差別性は縮小した。現在、テレビの主要部品であるパネル生産は韓国と台湾企業が寡占しており、圧倒的なコスト競争の優位性と国家戦略による産業優遇も相まって、国内の家電メーカーが苦境に立たされているわけである。2選択と集中日本製造業に失地回復の道はあるのだろうか。業績悪化からの打開策として、家電メーカーでは選択と集中による戦略が進められている。㈱ジャパンディスプレーは、ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶部門が統合して発足した新しい企業。今年の4月から事業を開始した。価格下落の激しい、テレビ液晶パネルではなく、今後の市場拡大が見込めるスマートホンやタブレット向け中小型液晶に特化する。市場シェアでも世界トップとなる見込みだ。一方、パナソニックでは有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレー量産化に向けて、姫路工場での稼動を計画中である。有機ELは、次世代の高精度ディスプレーとして韓国メーカーが技術的優位に立ち、年内に新製品を発表する予定であるが、姫路工場では、これに対抗して、一貫生産型の垂直統合モデルから外部委託や共同生産を視野に入れた利益優先型の生産体制の構築を進めている。また、ソニーでは、テレビ事業などの不振事業の縮小・撤退、スマホや医療など成長分野に集中。化学製品事業を整理し、医療機器・メディカル事業ユニットの新事業を展開する予定である。3イノベーション政策の提言最近、日本経済団体連合会が「イノベーション立国・日本」の提言を発表した。これからの世界が求める重点7分野「先端医療、水、次世代自動車、鉄道、エネルギーマネジメント、コンテンツメディア、ロボット」というイノベーションが日本製造業の将来を開く道だという。例えば、太陽電池の効率・低コスト化、バイオマスやメタンハイドレードなどの資源開発、レアアースのリサイクル技術などは重要なエネルギー技術であるし、電気自動車の高性能リチウム電池開発なども世界的な需要が見込まれる。日本の技術開発力が活躍できる場は無尽蔵にある。国内市場では、高齢化時代に適応した高度医療機器やテーラーメイド治療の開発、災害予測・モニタリングシステムやハザードマップ・監視ネットワークの整備などが求められるだろう。介護や災害対応ロボットなどのニーズも高い。産業全体の振興のために、多くの製造業と各業界が協力しながら技術の切磋琢磨を進め、新たな製品やサービス分野を立ち上げるべきと提言されている。これからの日本のものづくり体制は、量産・モジュラー型から受注・すり合わせ型製品にシフトしていくべきではないだろうか。それが技術のブラックボックス化による競争優位を生み出すのではないか。前述の事例でも、不振の弱電に対し、日立製作所、三菱電機、東芝の3社は赤字を出していない。情報技術や幅広い技術分野の存在が明暗を分けたといえるだろう。7 ASAP