ASAP2013vol_5

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江頭:「郷に入っては郷に従え」といいますが、日本と中国では社会的慣習に大きな違いがあります。また中国社会ではキーマンに交渉することが極めて重要であり、話を持っていく窓口を間違うとビジネスは円滑に進みません。こうした戸惑いから、中国で事業を始めてから一度も挫折感を味わったことがないという人は恐らく皆無ではないでしょうか。私自身もこれまで中国で経営を続けて来られたのはそういう方々との付き合い方と、優秀な中国人スタッフのおかげだと思っています。やはり人間関係の基礎はコミュニケーション。それは中国でも同じです。ある日系部品メーカーの社長が女性の総務部長を通訳にし、コミュニケーションを取っていたケースがありました。しかし、彼女の伝達の質の問題で大きなトラブルに見舞われました。問題はその女性の日本語が中途半端だったからなのです。従って社長の意向は正しく伝達されず、社員に誤解を与えてしまい、社内の人間関係は非常に悪かったようなのです。そしてその陰に隠れて不正も行われていました。小西:海外進出では雑多な問題が発生しますが、中国に進出した企業が失敗する主な理由は何でしょうか。またどういう点に気を付けるべきなのでしょうか。江頭:失敗の原因として考えられることは、中国進出の目的が曖昧であるケースです。中国に進出する目的、ターゲット、戦略がはっきりしていない。中国市場と中国での営業方法が理解できていないことが問題です。これでは勝負にならないと思います。また、最初に中国に進出を担当した責任者が3年ほどの任期で満了後に帰国してしまうことも問題でしょう。中国進出の一般的スタイルは、最初は立ち上げチームとしてエキスパートを派遣、そして、会社設立・事業化・材料や調達先の確保・品質管理などの一連の作業を実施するのが一般的です。しかし、その立ち上げチームは約3年の任期で帰国、後を受け継いだ新たな責任者が苦労するわけです。現場の事情だけでなく、中国の現場の状況に疎いため、状況を把握するだけでも半年はかかるでしょう。また引き継ぎも一ヶ月程度では絶対に充分ではありません。交代で中国に赴任した駐在員の方は立ち上げの苦労を知りません。当然、日本とは全く異なる中国社会の法則や習慣をよく理解できないことになります。だから現象だけを見て、「中国人は働かない」「すぐに辞めてしまう」という先入観を持ってしまうのです。帰任者は他に責任転換するのではなく、引き継ぎをしっかり行っていくことが何よりも重要です。米沢藩の上杉鷹山公は改革を妨げる障壁として、制度の壁・物理的な壁・意識(心)の壁の3つがあると述べました。そしてこれは中国進出にもそのまま当てはまる考え方です。まず、制度の壁とは、法制度や社会の慣習のようなものです。中国大陸では性善説で良心に訴えるだけでは不十分で、性悪説を前提にした罰則を伴う法律がなければ社会規律が徹底されません。物理的な壁とは、水質、大気、電力、燃料などの環境条件が日本と全く異なることです。中国では国家管理のため電力供給が不安定で、燃料なども石炭に頼る割合が高くなっており、CO2削減を重要課題とする政府は、省エネの削減値を達成するために強制停電などもあります。一方、中国の水はカルシウム分を多く含んだ硬水なので、日本と同じ規格では大きな問題となる場合も多々あります。また様々な工業規格等の制度も日本と大きく異なります。こうした基準値の違いを理解したうえで工場建設や省エネ対策を考えていく必要があるのです。3つめの意識の壁とは、常識と考える事が大きく違っていると言うことを意味します。省エネが達成された場合、どういうメリットがあるのか、理想の状況を具体的にイメージできるよう啓蒙し続けることが大切です。そして、「意識」と言うことでは先ほどのキーマンを見つける話とも関連しますが、中国では「誰が何をいっているのか」が重要なのです。小西:これからの中国ビジネスの可能性はいかがでしょうか。江頭:2011年3月の全人代で中国政府が傾注する「戦略的新興産業」が発表されました。それは「省エ5 ASAP