ASAP2013vol_5

ASAP2013vol_5 page 9/12

電子ブックを開く

このページは ASAP2013vol_5 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
ASAP2013vol_5

 次に重要となるのが、「工場内や工程間の物と情報の流れ」です。工場内は、“モノの流れ中心のレイアウト”を考え、整流化されたラインを構築することが必要です。整流化とは、「モノや情報が入り乱れたり、途中で停滞・逆流したりすることなく、定められた順序で工程を流れるようにすること」です。この整流化は工場新設時にどれだけ検討できたかが非常に重要となります。なぜならば、後々に乱流状態のモノの流れを改善しようとしても、レイアウト変更に要する多額の費用により、諦めるか妥協しなければいけない状況になってしまうことが多いからです。一方、情報もモノと一元化して管理ができる仕組みを構築する必要があります。モノと情報が一元化されていないと実績数と在庫数のズレによる欠品や死蔵品の発生、生産遅延状態の把握遅れ等、大きなリスクを抱えやすい生産ラインになってしまいます。材料から完成品までの物と情報の流れを明確化し、リアルタイム情報によりクイックアクションを取れる体制を目指していくことがポイントとなります。 3つ目に重要となるのが、人員配置です。人員配置は人件費に直結するため、安易な決定は禁物です。作業負荷率表、M-M(Man-Machine)チャート、ラインバランス表等のツールをしっかりと活用し、最小人員での生産体制を構築していくことが必要です。作業負荷率に関しては、設備のオペレーションが中心となる作業では75%以上、検査等の手作業が中心となる作業では95%を最低でも確保しなければ、その工程計画は失敗と言われています。これを達成するために、M-Mチャートにより作業の組み合わせを決定し、ラインバランス表により工場全体の負荷バランスの調整を行ないます。 上記の3つ以外にもコストミニマムで工場を立ち上げるためには様々な検討が必要となります。大事なことは、それぞれの検討項目は独立しているものではなく、1個変更がある場合は他も修正する、というように随時修正を繰り返しながら検討内容の質をブラッシュアップしていくことです。また、それらの計画・実行を統括する立上げプロジェクトリーダーは新工場立上げの成功を左右する重要な人物であるため、新工場の立上げ計画が決まっている時は、計画的に複数の部署を経験させることで備えていくことが必要です。 今回は、新工場建設時の工程計画に関する考え方の一部を紹介させて頂きました。これらの計画・実行が“不十分”である場合、投資の増加や立上げ期間の長期化により、結果的に数十パーセントものコストアップになってしまった事例もあります。新工場を建設中あるいは計画中の際は、一度現在の検討状況を確認してみてはいかがでしょうか。大手自動車メーカーの生産技術部門において、生産性向上プロジェクトやTPSを用いた国内外工場の量産ライン新設立上げ・工程改善等に従事する。また、新規生産ラインの垂直立上げ管理や立上げ業務の効率化、据付リードタイム短縮など、間接部門の改善活動にも大きく寄与してきた。その経験を活かし、テクノ経営総合研究所のコンサルタントに転身し現在に至る。PROFILE株式会社テクノ経営総合研究所 東北カンパニー マネジメントコンサルタント藤澤 俊明ふじ さわ   とし あき 近年、ものづくり拠点の海外移転や工場老朽化に伴う新工場立上げに関するご相談を頂くことが増えています。実際に私自身も中国における日系企業の新工場立上げをご支援させて頂いております。弊社に寄せられるご相談の内容を聞いてみると、正直なところ「もう少し早い段階でご相談頂ければもっとコストを抑えることが出来たのではないだろうか」と感じることが多々あります。新工場の立上げには、図1のように、事業企画、建屋・原動力計画、工程計画、人材教育訓練計画等、様々ありますが、今回は工程計画を行なう際のポイントをご紹介します。おわりにはじめにASAP 8