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概要

ASAP2015vol_2

 すでに海外生産・調達が普通になって久しいですが、1990年代までは国内での生産・調達が主流でした。当時は開発・設計部門と協力工場やサプライヤとの連携があり、モノづくりの技術レベルが高い水準に維持されていました。 ところが近年、海外拠点で開発・設計を行う企業も大幅に増えてきました。海外で設計する場合の問題は、まず日本に比べてまだまだ技術力が低いことです。また、海外調達でも部品などのスペックが頻繁に変更されたり、品質のバラツキが多いなどの課題を抱えています。 そこで国内と同じレベルで考えているとさまざまな問題が起こります。たとえば、日本から図面を出しても、同じモノがでてこない。開発者の意向を考えながら図面を引くのが日本の設計部門ですが、海外の場合は与えられたスペックだけで設計してしまいます。背景にある課題や意図を理解し、設計に反映させる繊細さは期待できません。それを承知のうえで海外からの情報に当たらなければムダな遠回りをしてしまうことになります。 一般に、製品の性能は95%、コスト・品質は80%が設計で決まると言われます。開発・設計部門の重要性はますます高まっています。開発・設計をはじめ、間接部門の仕事は途中の進捗経過が見えないことが最大の悩みです。しかし、変化する状況に合わせて、その業務レベルを上げていかなければ対応できない時代になっています。 私自身もコンサルタントになる以前は、設計部門の責任者をしていました。今回は、その当時の経験を踏まえながら、技術者である部下のモチベーションアップについてお話ししたいと思います。 激変する開発・設計環境のなか、若年層の技術者に共通する弱点は経験年数が少ないことです。ゼロからの設計経験がなく、先輩の設計データを編集して作業する場合が多く、この20年間ほどで個人の技術進歩が停滞気味になっている。また問題解決のスキルが低いが、上の人が教えてくれない、海外進出で国内生産が縮小されている、実際の現場・現場との接点がないなど、設計部門を取り巻く厳しい環境が続いてきました。 そういったなかで新しい設計の仕事も少ないという不都合な現象が起きています。仕事の進捗・課題が見えず、特定の人ばかりに仕事が集中する現実。そこで新規業務で問題が噴出、コストダウンが進まず、時間が足らない状況が生じています。 そうした状況のなか、部門長に課せらせた役割とは何でしょうか。それは設計部門の部下を動機づけ、自ら行動を起こすように仕掛けること。そして目標に向けて知恵を出しながら継続した活動ができる環境をつくることだと思います。 開発・設計部門のセミナーで「部門長は楽しいですか」とお聞きすると、「あまり楽しくない」という意見が多いことに気づきます。では、どういうところが楽しくないのでしょうか。それをまとめてみると「自分のやりたい仕事ができない」「思うように部下をマネジメントできない」「部門長としての仕事の成果がつかめない」といった項目が挙がってきます。また、なかには「むしろ技術者であった方が楽しかった」という方もおられました。 一方、「あなたの部下は楽しそうですか」という質問では、「いつも仕事に追われており余裕がない」「技術者なので非常に扱いにくい」などの声が聞かれました。 これらの質問から上司も部下も仕事に追われている状況が伺えます。しかし、これは技術部門だけではないのですが、仕事に楽しさを見出すことは非常に重要なテーマです。そして、特に技術部門では楽しくなければ仕事の効果がでないからです。部下に仕事の楽しさを感じさせ、やる気を出させることが部門長の役割であると思います。海外対応で高まる設計業務の重要性若手の技術者に見られる傾向部門長の役割とは部門力を結集 真価を発揮するマネジメントコンサルタント 河村 一郎特集2開発・設計リーダーの役割5 ASAP