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概要

ASAP2017vol_1

 品質・安全にとってもっとも大事なことは、前に述べた作業者の「気づき」を活かすボトムアップ型の活動と、トップダウン型の管理体制とが合体融合することが求められます。 このためにはボトムアップの力を醸成し、有効に活用するような仕組みの構築や、品質・安全に対する企業文化の醸成が必要です。 すばらしい品質・安全を達成するための組織の努力の共通点は、企業のトップダウンの品質・安全施策と、現場の作業者によるボトムアップの力が見事に結合し、問題点の背後の要因を徹底的に追及し、具体的対策を創り出していることにあると言われています。  作業者の「気づき」を醸成し、ボトムアップ活動を進めること、トップの方針を展開しボトムアップ活動と融合させることは、VPM活動そのものでもあります。VPM活動を推進することが、価値作業の比率を高め活人化を推し進めるのみではなく、ヒューマンエラーの防止に留まらず、高い品質・安全を推進する組織の構築にも繋がるのです。④検出 作業ミスが発生しても、その後の工程で検出され是正されるようにすること。⑤影響緩和 作業ミスの影響を拡大しないよう、緩衝物や保護を設けること。 これらのように、一般には①排除、②物理的制約、③負担軽減までをエラー発生防止、④検出、⑤影響緩和が拡大防止と定義づけられています。 しかしながら皆さんは、現場でよく気がつく作業者は、材料や製品の色合いや質感の違いや、2S上の課題など、その工程での確認項目以外の想定されていない問題点までも拾い上げ、放置すれば品質や安全事故となる問題を未然防止してくれる事例も数多く経験しておられると思います。 一方で最近の報道によりますと、ヒューマンエラー対策としては最も先端的な自動運転車の事例では、想定外の画像センサーの受光により、AIが誤った判断を行い、死亡事故を招いているのは記憶の新しいところです。 この二つの事例から、②の物理的制約は、万能のものでは無く、想定外のエラーには対応がとれず、一方で、④の検出「気づかせる」は、エラーの拡大防止に留まらず、発生防止にも有効な手段と言えるでしょう。  「気づかせる」とは言っても、簡単に色々なことに気づく作業者を容易に育成することは困難です。未然防止のためには、より高いレベルに作業者の気づきを維持すべく、常に気づきを活性化させる工夫が必要です。 この方策の一つとして、現場を皆で観察し、気づいたことを皆で書き出し、気づきのレベルを高めていく活動が有効です。皆で観察することにより、他の観察者の物の見方や着眼ポイントの違いを参考にして、作業者自らの“感度”を磨く訓練ができます。最近では医療や介護の現場でもこういった活動が実施されている事が報告されています。PROFILE大手電機メーカー、機械部品メーカーにて、製造現場・製造技術・生産技術・製品設計マネジメントを経験。その後、海外工場の責任者、ビジネス責任者、環境部門責任者を歴任、ビジネス戦略の立案・実行から、製品設計、生産技術、海外工場の展開企画、立ち上げ、人財教育、工場運営まで一貫した経験を積み、コンサルタントに転身。これらの経験を活かして、経営に結びつけた現場感覚に基づいたコンサルティング活動を行なっている。株式会社テクノ経営総合研究所 開発カンパニー マネジメントコンサルタント橋 本 幸 明はし もと   よし あき気づきの活性化高い品質・安全を実現する組織とはヒューマンエラーも低減するVPM活動気づき活性化活動の例ASAP 8