ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

ASAP2019vol_2

 どこまで自動化を進めるか 人手不足の対策として自動化が有効であることは言うまでもありません。しかし、自動化は全体最適の視点を持ち、徹底して行うことが重要です。 人手で行っていた複数の加工職場を1つの設備に置き換え、省人化を図ったというケースがありました(図2)。しかし、複数の前工程職場からモノが集まって来て(合流)、複数の後工程職場にモノが供給される(分岐)状態が発生し、かえって生産のリードタイムを伸ばさなければならなくなり、工程間在庫が増えてしまいました。その結果、工程間在庫を置くスペースが増えただけでなく、運搬や移動といったマテリアル・ハンドリング(マテハン)が増え、期待通りの効果が得られませんでした。こうした現象は、高価な設備を導入した企業でよく見られます。 また、単に加工時間の部分だけの自動化が行われ、ワークの投入や排出、運搬具への積み下ろしにまで目が向けられていないということはないでしょうか。中途半端な自動化で作業者が付かなければ動かないという状態は避けたいものです。 目先の工数削減にとらわれることなく、前後工程までを含めた全体のモノの流れまでをつぶさに検討し、作業のデザインを行うことが真の自動化と言えます。 標準化・単純化の考え方 自動化と並んで人手不足の対策として挙げられるのが多能工化です。私はこの多能工化の考え方を変えていく必要があると考えています。これまでの多能工化では、「誰もが何でも出来るようになる」ことが目的と考えられています。しかし、ただでさえ負荷の高いベテラン作業者の時間をこれまで以上に教育、指導に充てることには限界があります。また、入れ替わりの激しい非正規雇用者を早期に戦力化していくことも同時に考えねばなりません。 そのためには、一連の作業内容を細かく分解し、特別な技能を要する要素とそうでない要素に分けるということが重要です。特別な技能を要する要素が隠れていると、その作業、その工程自体が難しいものと捉えられ、多能工化が図り難い、教育がし難いものとして敬遠されがちです。しかし、細かく分けることで特別な技能を有する作業者が全てを行わなくても作業が出来る可能性があります。 たとえば、大型コイルに線を巻きつけるという巻線作業では、どれぐらいのテンションを掛け、どれぐらいの回転スピードで線を巻いていくのか、全ての作業条件を定量化できれば良いですが、コイルの径であるとか、線の太さであるとか、バラツキ要素が多く、どうしてもベテランの経験に頼らざるを得ません。しかし、コイルを巻線機に上げ下ろしをするとか、次のコイルや線を準備するといった作業は安全喚起を含む作業手順とタイミングさえ教育すれば、経験の浅い作業者でも実施することが可能です。1 自動化だけでなく標準化・単純化図2:自動化が不十分な事例前工程加工工程後工程前工程加工工程後工程合流分岐省人自動化設備リードタイムが膨張仕掛在庫増加マテハンの増加モノ探しの発生自動化設備導入後自動化設備導入前14