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概要

ASAP2019vol_4

最強の設計部門をつくるための第一歩設計開発力診断株式会社テクノ経営総合研究所 柴田 明尚 製品の品質とコストの80%は設計段階で決まると言われる中、設計力向上を課題として認識されている企業は多いのではないでしょうか?しかしいざ設計部門の改革に着手しようと思っても、どこから手をつけるべきかわからない、他社と比較して自社の設計部門の実力がどの程度か把握できていない、などの理由から設計部門改革への取組みが、なかなか進まないという声を良く耳にします。そのような状況にある設計部門にお勧めしたいのが「設計開発力診断」です。この診断は各企業の設計部門の実力を、一般的に設計の実力が高いと言われる企業と比較して、どういうレーティングになるのかということをご提示し、改革へのロードマップ作成に向けた指標をご提供するものです。 この診断を行う際には①開発プロセス②製品アーキテクチャー③ I Tシステムの活用④人材育成・技術継承という4つの視点で、企業の設計開発力を評価しています。 ここではこの4つの視点について具体的に説明していきたいと思います。 まずフロントローディングについてですが、出図遅れがあった時に、検討開始をもっと前倒しにすればいいのではという、間違った使い方をされている管理職の方をよくお見受けしますが、フロントローディングとは、ある目的達成に向けた手段であり、プロセスの改革です。例えば提案依頼、見積り依頼の営業段階に、設計部門が設計のピークを前倒しして、参画し、御用聞き営業から脱却し、攻めの営業への転換を図るということが、設計のフロントローディングとしてあげられます。今後サプライヤーは提案型でないと生き残れないため、この取組みはさらに重要になると思われます。また、3次元データがあることが前提ですが、出図する前に、性能、生産性、コストダウン案など、色んな評価を前倒しで検討して、出図段階ではその辺の問題を全て消してから出すというようなコンカレントエンジニアリングの取組みも、設計のフロントローディングの一つです。従来の設計業務における、企画段階~基本設計~詳細設計~製造試験という並びが、フロントローディングでは、基本設計、詳細設計は期間も工数も増えるため、設計にかかる負荷は非常に大きくなります。ただこの取組みにより、設計後の試作や試験の期間が短縮され、一番コストの高い部分が減るという効果があります。これらフロントローディングとコンカレントエンジニアリングの取組みにより、1980年から1990年の間に、自動車メーカーでは相当な期間短縮と試作の削減を経験してきました。そしてその先進的な取組みは、自動車部品メーカーやその他大手の製造業にはその5,6年後ぐらいに伝わり、その他業界へは10年後、中小のメーカーなどには20年ほど遅れで伝わったと思われます。中小企業は、自動車メーカーがいろんなことを試した成功例、失敗例から学べば良いのですが、まだ現状で2次元CADを使っている会社が、あと2,3年で3次元に切り替えるような場合には、改善ベースで取組むのではなく、自動車メーカーの事例をあるべき姿として、そこまで一気に飛ぶことが可能です。これには改善ではなく、改革として取組まなければ、そこまでは到達できないという覚悟が必要になると思います。 モジュールデザインと言う考え方が現在のトレンドで、私のところにも自動車部品メーカーをはじめとして、様々なメーカーから引き合いが来ています。モジュールデザインはニーズの多様化、非常に多くの仕様への短納期対応など、現在の設計部門の負のスパイラルが要因として出てきたものです。モジュールデザインはスウェーデンのスカニアという中堅のトラックメーカーが起源と言われています。特筆すべきはその利益率の高さで、ベンツ、ボルボなどの大手メーカーの利益が5%程度であるのに対して、約20%の利益を出しているのです。そしてその成功要因が、このモジュールデザインにあると言われていて、それを2000年ごろからVW、トヨタなどが追随し1 開発プロセス2 製品アーキテクチャー15