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概要

ASAP2020vol_1

◆まずソントンホールディングスの会社概要についてお聞かせください丹羽氏 弊社の創業経緯としては、大正時代に兵庫県中心に布教活動をされていたJ・B・ソーントン氏が深く関係されています。同氏は当時の日本の農村部の状況を見て、非常に栄養不足であると感じられ、アメリカの製造技術で作ったピーナッツバターを、栄養補給のために提供する慈善事業と教会運営の資金として販売事業に活用していました。ソーントン氏の弟子であった創業者の石川郁二郎は、その活動に非常に感銘を受け、事情がありアメリカに帰国することになったソーントン氏の活動を引き継ぎ、ピーナッツバター作りを事業化し、それが弊社の起源となりました。当初は甘くないピーナッツバターの販売をしていたのですが、その後1952 年に現在の弊社のピーナッツクリームに近い、少し白濁した甘いピーナッツバターの開発に成功し、コッペパンを販売しているパン屋さんに業務用として販売していたところから、事業として軌道に乗ってきたという歴史があります。その後1960年には家庭用の紙カップが出来て、以降続けてジャムなどが発売されました。弊社の事業は大きく分けて2つあります。一つはB t o B の業務用の事業で、大手企業から町のパン屋さんまでを対象にして、フィリングと呼んでいるパンの中身を販売しており、付加価値創造ビジネスを通じてソントンブランドの認知を拡大しています。そしてもう一つは家庭用の事業です。家庭用の紙カップ「ファミリーカップ」は来年で発売6 0 周年。ピーナッツ、イチゴ、チョコ、オレンジは不変で60 年選手です。現在の販売割合はピーナッツ、イチゴが同数でその次がブルーベリー、チョコの順。最近はその下にカスタードが続いていて、カスタードは当社ならではの技術力を評価していただきウェイトが増えています。 事業割合は家庭用2割、業務用8割となっていて、家庭用では弊社の場合、元々お得なカップというイメージがあるため、経済状況がデフレ志向になった時、瓶入りなど高価格ゾーンは拡げにくいのが実態です。そのためやはり軸足はきちんと、家庭用のジャムと業務用のフィリングに固めた上で、販売されるパンの種類が昔とは比べ物にならないほど増えていることから、その需要に対する業務用の構成比を拡大させています。業務用のフィリングでは大手企業が作られているパンの中身が圧倒的に多いのですが、それ以外にも街のパン屋さんが店で絞ったり、中に詰めたりするものも作っています。◆長い歴史における経営の転換点についてお聞かせください丹羽氏 弊社の経営の転換点としては元々業務用からスタートした会社なので、家庭用のものを手がけたことが一つの転換点だったのかなと思います。私が入社したころは、業務用6割, 家庭用が4割程度でその比率を半々にすることを目指していました。弊社では創業以来ずっと業務用の比率が家庭用より高い状況にありますが、元々業務用の品種は現在の4分の1程度でした。しかしCVSとのお付き合いの中、メニュー展開のサイクルがどんどん速くなり、同業者の間でもこのスピードにどこまで付き合っていくのかという議論が交わされていましたが、弊社は甘さ、辛さなど、CVSの色々なこだわりにオーダーメイド的に丁寧に応えていこうという方針をとりました。その結果現在の業務用はものすごく品種が増え、それを造るための原料も増えました。CVSとのお付き合いの中から業務用ビジネスが拡大してきたこの20年~30年の流れもある意味大きな転換点であったと思います。 また食品メーカーとしての安心・安全への取組みという観点から考えると、弊社は原料であるピーナッツに関して品質面で過去に大きな壁に当たったことがあります。メディアの報道などでも取上げられ、経営的にも一時非常に厳しい状況となりました。しかしこの苦境を実質1年で乗り越えて、当時の経営トップであった前社長の指示により、原料に対する品質の裏づけを行う研究を徹底することになりました。この取組みは品質基準を厳格化し、安心・安全の軸を確立しようという大きな転換点であり、歴史的に優秀な技術者が育成されてきた背景にもなっています。現在弊社の原料に対する規格は厳しく、それに対する検査基準や現場でのインスペクションなども非常に厳格に行っています。私はこれが現在まで弊社が独立企業として70年以上継続できた大きな力になっていると考えています。 また業務用ビジネスでCVSから採用をいただくと、一時に何十トンという単位のオーダーがありますが、その際最も求められるのがトレーサビリティです。イチゴにしてもピーナッツにしても基本的には、この原料は何処生産事業本部長執行役員丹羽 昭吉 氏ソントンホールディングス株式会社4