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概要

ASAP2020vol_2

03 より効率的な組織づくりと社員の成長を実現する企業改革への取組み 清水氏によると、東日本大震災以降の価格競争の激化、超高齢化社会の到来など、日本社会の構造変化に伴う市場縮小など、夕月の経営を取巻く外部環境の変化と共に、家内工業的な事業から急成長を遂げた歴史の中で、社内の「質」の変化が追いついていなかったことが、今回のコンサルティング導入の背景にあるという。清水氏 コンサルティング導入時の課題は、当社のこれまでの歴史に基づいたものであり、急成長を実現した際の設備と、それに付く人員の配置。そして、その動き方が現在の経営状況に即した形になっていないことにありました。一つの機械に対して人員が多く付いてしまう傾向にあり、縦割りのような形になってしまっていて、このラインには、この人数が絶対に付かないといけないという状況を生んでいました。売上が拡大し、市場が成長している時はそれでもまかなえていたのですが、現在はかまぼこに対する需要が減少し、流通でのスペースもどんどん縮小されています。日本社会の人口構造も本来とは逆のピラミッド型で、高年齢化がますます進行しており、消費の力強さも欠けている状況です。このような状況を踏まえた上で、現在の板かまぼこを中心としたビジネスから、将来的に新たなカテゴリー拡大などに取組み、更なる成長に向けてチャレンジする可能性を追求していくためには、当社の資産である現状の人、設備を活かした、効率の良い生産体制構築が不可欠だと考えていました。 清水氏がもっと効率的な人、設備の活用の仕方があるのではないかと考えておられた時、ちょうどテクノ経営からのDMで、現在コンサルティングを担当する沢柳が講師を務めるセミナーの案内が届いた。セミナーには清水社長と夕月の将来像についての検討を進めていた専務取締役 奥野 高士氏も一緒に参加することになった。奥野氏 私は30 歳で当社に転職し、入社以来ずっと営業部門を担当していました。担当エリアも東京支店だったため、工場に来るようになったのは、事業統括部長という役割になってからのことです。以降、工場の現場で様々な仕事に関わるようになりました。工場に来た当初、何かちぐはぐな印象を持っていたのですが、それが具体的にどこから来るものかよくわかりませんでした。ただ当社の場合、創業以来、良い意味でも悪い意味でもワンマン経営という側面があって、現場が思ったところを意見しても、跳ね返されてしまい、結局上から言われたことをやるしかない。それを無難にこなしていればいいというのが当時の工場の雰囲気でした。自分としてはそういう状況は今後会社の成長を考えた時、あまり良くない風潮だという意識を持っていました。 奥野氏は営業視点で現場を見た時、効率の悪さ、目的意識の欠如などに疑問を感じ、自分達が何のために働いているのかという、企業としての根源的なテーマが現場に浸透していないため、色んな活動が空回りしており、同じベクトルで動いていないことに問題があると考えていたという。そこで社員の意識を変えるために、意識改革のセミナーを開催し、セミナー受講後に今まで閉鎖的だった社員が少しずつ変化し、発言なども増えてきたことから、やはり企業を変えるためには社員の意識が重要だということを再認識し、社員を様々なセミナーに参加させる取組みを継続することで、以前と比べると社内がかなり活性化してきたという印象を持っていたという。し中、いわき市が拠点では風評被害なども免れないという意見もあり、一時、工場を関東の近くに移転することも検討した。しかし、思ったほど風評被害も出ず、またそのような検討に時間を割く間も無い状況で、営業担当を中心とした、並々ならぬ努力の結果、棚の8割を震災前の状態に戻すことが出来た。ただ新潟の大手メーカーが黙っているわけも無く、価格競争を生み出すことになってしまい、以降、経営的には非常に厳しい状況が続いている。 現在のかまぼこ市場は量販店のシェアが拡大する中、海外からの安い輸入品なども入り、価格競争がさらに激化している。大型スーパーの魚肉練り製品コーナーは、かつて最大16尺ほどの大きなスペースであったが、現在はその半分程度になっていて、かまぼこ市場の低迷は深刻な事態である。しかし、近年、再びかに足商品のブームが起こるなど良い兆しも見られる。時代に則した商品の開発などにより、新たな需要の喚起を掘り起こし、伝統食としてのかまぼこの復権が期待される。13