ブックタイトルASAPplus2020

概要

ASAPplus2020

2020年は後世になって振り返った時、一つの新しいウイルスの流行により世界がかつてない規模で変革し、それまでの全ての価値観を見直す起点となった年と位置付けられるだろう。それは生態系、国家、都市、企業、家族、個人といった全ての属性に対して、「持続可能性」という概念が、今後の世界で最も重要視されることを明確にし、その実現は常に「変革」し続けることでしか得られないという事実を認識させた最初の年代としての記憶だ。私たちは歴史を通じて生産と流通の巨大ネットワークを持つ「文明」が崩壊したとき、人びとの暮らしに何が起きるかを学ぶことが出来る。古代ローマ文明は自分たちが必要とする品物の多くを、ときには何百マイルも離れた場所で働く専門家に依存する複雑で洗練されたネットワーク（バリューチェーン）をつくりあげたが、ローマ帝国の終焉と共に、ひとたびこの優れた生産・流通システムが崩壊してしまうと、地域によっては先史時代の水準にまで後退し、回復には数世紀を要したという。2020年に世界で起こった様々な変化も、このような視点でみると、一つの文明の「終わりの始まり」と捉えることが出来ると共に、新たな「変容」に向けた始まりであったとも言える。歴史は決して後戻りはしないし、いったん進みだした時計の針は私達の想像をはるかに超えるスピードで回り続け、気がついた時には既に新しいルールが適用される時代になっているのだ。これからの世界でのイノベーションは、既存の考え方や、アイデアの延長線上には無く、全く新しい発想でのブレークスルーによってもたらされるものとなるはずであり、そのための準備は既に多くの企業においてスタートしている。新たな価値創造が競走優位、持続可能性に対する前提条件となり、今その実現に向けた取組みは、全ての製造業に同等に求められている。変革の時代に求められる新たな価値創造1