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概要

ASAPplus2020

不確実な時代に対するコンサルタントの視点Feature 02アフターコロナに向けて今製造業がとるべき針路とは「ビフォーコロナの人手不足問題は未解決であり、国内製造業最大の盲点。今その解消に向けた大きな改革が必要」[ VIEWPOINT 1 ] 平井 康之( 専務執行役員 西日本事業部 事業部長) 現在国内製造業で問題となっているのが、操業の一時停止や減産といった事態を受けた「人余り」の現象である。余力を放置することでの弊害としては「問題異常の埋没」「過剰な作業の発生」「改善意欲の低下」「ゆるみによるミスやケガの発生」などが挙げられ、長期化するとこれまで積み上げてきたルールや規律が崩壊する可能性がある。 このような「人余り」に対する対策として、現在よく見られるのが、残業・休日出勤の削減、派遣・パートの雇い止めなどによる「余力圧縮」と5S、研修、手順書作成、外注の内製化などによる「余力活用」だが、これらは果たして本当に適切な対策と言えるのだろうか? 1年前を思い出して欲しい。今はピンと来ない方も多いと思うが、人も時間も無く、生産性向上に取り組みたくても、取組むことが出来なかった状況を。 人余りの現象が起こっている現在、「人手不足」という大きな課題が過去のものとして忘れられていないだろうか?国内の製造業就業者数については、2002年の1,202万人から2019年には1,063万人と、20年間で11.6%減少しており(図1)、全産業に占める製造就業者の割合も2002年の19.0%から2019年の15.8%に減少している。また今後国内の労働力人口は2020年からの10年で1割減、約700万人の減少となる。(図2)これはあらかじめ決められた未来であり、必ず人手不足の時代はやってくる。またその際の貴重な人員も介護事業、医療事業などに多くの労働力人口が流出し、不確実性が高まる時代背景により、中小より大企業へという安定志向が高まる。つまり中小の製造業には非常に厳しい時代となることが予測されるのだ。 この流れに対して、政府は外国人労働者を増加させる対策を進めているが、現在受け入れが予定されているのは5年間で35万人であり、2030年の700万人減少には全く足りない。私は今後のアフターコロナに向けた国内製造業の最大の盲点は「人手不足」にあるように思う。 1年前、生産性向上への取組みを進めようと思っても、時間も余力も無く進めることは困難だった。しかし今は人、時間が余っている。ところが優先順位の低い取組みを進めたり、経営が厳しいことを理由に派遣を雇い止めしたり、せっかく得た余力を有効に使えていないのではないだろうか? 私が提言したいのは、アフターコロナの世界に向けて、将来の人手不足問題を解消するため、中途半端なものではなく、「生産性200%」というような大きな改革に「今」取組んで欲しいということ。確かに口で言うほど簡単なことではないが、現在は人も時間も充分ある。今取組まなければいつ取組むのか?そういうチャンスの芽は今そこにある。 アフターコロナまであと1年しかないと思っている企業と、まだ1、2年はあると考え、この状況を放置している企業とでは、1年後、2年後に大きな差がでる。今が最大のチャンスと捉えて、企業改革への取組みをスタートするべきではないだろうか。[図1]製造業就業者数推移 [図2]我が国の労働力人口の推移7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,000025.020.015.010.05.00.02002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019非製造業製造業製造業の割合(備考)2011年は、東日本大震災の影響によりデータが欠損している。分類不能の産業は非製造業に含む。(資料)総務省「労働力調査」20