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概要

ASAPplus2020

 本年度「ものづくり白書2020」は、コロナ禍における緊急事態宣言の解除直後、国全体の経済活動が停滞し、各企業においても深刻な影響が出ている時期(図3)に発行された。そしてその中で提言されたのが「企業変革力」である。私はこの言葉を、厳しく先の読めない状況においても、変化に対応し、成長への歩みを止めない企業の姿と解釈している。 例えばある食品メーカーではコロナ禍により家庭内の需要が増えて、スーパー向けの出荷が増加する状況となり、生産性を向上させるための改善が必要であったため、リモート会合などで継続して改善活動を行い、現在はまた訪問での活動を再開している。またある鍛造・切削加工メーカーでは利益率の高い製品の出荷が大幅減となり、仕事量が平常時より減ったため、この時期を活用して色々な実験をするなど、より積極的に改善活動への取組みを進められた。この2つの事例には、コロナ禍において出荷の増減という相反する2つの状況にある企業が、それぞれが直面する課題を前向きに捉え、変化するための活動を停滞させることなく継続したという共通項がある。我が国の製造業を取巻く環境は依然厳しく、アフターコロナがいつ訪れるのかを予測することは難しい。コロナだけでなく様々な要因で今後さらに「不確実性」が高まった世界で、企業が持続可能な経営を維持していくためには、その時々の変化に対応するために自らを変革していく力が求められる。私はそのために改革・改善活動が果たす役割はこれまでより大きくなると考えている。 ではどのような企業が改革活動を強力に推進し、真の成長ドライバーにしていけるのであろうか?私はこれまでのコンサルティングでの経験上、以下3つのポイントが重要と考えている。①「トップの誘導力がある」トップの考え、想いが組織全体に落とし込まれており、改善活動にトップが定期的に参画、関与している。②「組織活用力がある」人・組織の協働により、部門間の問題を解決できる場があり、積極的な問題解決を行っている。③「改善実践力がある」現場のミクロ改善活動とトップダウン活動が融合して機能している。特に治工具、設備改善のスピードが重要。 これらが改革活動を積極的に推進している企業に共通してみることができるポイントだが、逆にあまり改革活動が進まない企業の共通点としては以下の2つをあげることができる。①「携帯電話が鳴り止まない」連絡に関してはメールでというのがルール化した中で携帯電話が鳴るというのは事前連絡、案内などが不十分など何か問題があることを示唆しており、それが頻繁に鳴るという状況は段取りの悪さを表している。②「約束の時間に集まらない」時間に対する意識が希薄であり、周囲への配慮が希薄な状態を表している。 私のこれまでの経験上から改革活動を進める上でのポジティブとネガティブなポイントをそれぞれご紹介させていただいたが、現在すでに活動に取組まれている方は一度これらのポイントから活動状況をチェックしていただき、今後活動の検討をされている方はこれらのポイントを踏まえて活動の導入を検討いただければと思う。 いずれにしてもアフターコロナの世界に向けて、「企業変革力」を身につけることが「持続可能な経営」の実現には不可欠となる。コロナ禍においても成長し続けるための取り組みを、今積極的に進めていただきたいと思う。コロナ禍でも製造業が成長を実現するためには「直面する課題を前向きに捉え、変化するための活動を停滞させることなく継続することが重要」[ VIEWPOINT 2 ] 沢柳 知治( 東日本事業部 みらいカンパニー カンパニー長)38% 16%減少84%100%  90%  80%  70%  60%  50%  40%  30%  20%  10%  0%39% 7%[図3]2020年4月の売上げが減少した製造業の割合(注)全国の大企業、中小企業を対象としたアンケート調査(2020 年4 月23 日-5 月12 日にインターネットで実施  するアンケート調査のうち、4 月28 日午前9 時までに回答があった者を速報値として集計したもの)  「貴社の今年(2020 年)4 月の売上高は前年同日を「100」とすると、どの程度でしたか?」との質問に対する回  答割合(回答数6,186 者)(出所)東京商工リサーチ「第4 回新型コロナウイルスに関するアンケート調査(速報値)」(5 月1 日公表)を基に作成。(前年同月比)増加または変化なし1割以上3割未満1割3割未満 未満21