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概要

ASAPplus2020

不確実な時代に対するコンサルタントの視点Feature 02 新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、タイを始めとするアジア・ASEANのグローバル経済における課題をあらためて浮き彫りにした感がある。それはグローバルSCM の名の元での中国への一国依存であり、中国のロックダウンによって、サプライチェーンが分断され、製品・部品が入ってこないことで、計画はあってもモノづくりが出来ないという状況が各国で発生したことに示される。(図4)この結果を踏まえて、コストだけを重視して一国に供給を任せてしまうことの危険性にあらためて気付かされ、グローバルSCMを見直しする動きが出ている。今回のコロナ禍を踏まえ、今後に向けた5つの課題を整理すると①グローバルサプライチェーンの分断②自社社員の罹患による工場の操業停止③入出国規制の問題④ロックダウンによる人、モノの移動停止、経済の停止⑤ロックダウン解除後も経済が停滞 ということになるが、これらの課題解決に際して重要となるのが、「危機管理」と「リスク管理」の取組みで、私は今後各企業がこれらをきっちりやっていく必要があると考えている。危機管理とリスク管理を同じように捉えている方もおられるかもしれないが、危機管理とはまさしく有事が発生している中で、そのダメージを最小化していくための活動であり、リスク管理とは平時から有事に備えて、様々なリスクを想定した上で、その対処法を策定し、常に最新の情報に更新していく活動のことを指す。今回のコロナ禍だけでなく、現在は先行きの見通しが立てにくい、不確実性の時代である。このような状況下で、企業は常に潜在的なリスクを想定し、リスク管理と危機管理のマネジメントをPDCA でしっかりと回して、今後もコロナ禍は必ずやって来るという観点から、この取組みについて考えていくことが求められる。 さて今回タイではロックダウンにより経済より人の命を優先するという政策をとった。それによって多くの国民の生命が危険にさらされるような状況が回避できたことは、大いに評価されるべきだと思う。しかしその反面経済活動が停滞すると国全体としての需要が落ちる。そうすると全ての企業で受注が減り、売上、利益が減少する。そして最終的には多くの企業が存続の危機に陥るという負のスパイラルが今後予測される最悪のシナリオだ。この予測に対して、持続可能性のある経営を維持していくためには、いったいどのように考えればよいのだろうか?その一つの答えとして、私はリスク管理の観点から、今後企業は利益を最重要視した経営にシフトチェンジし、常に利益を出す企業体質を作っていく必要があると考えている。さらに今回これまで構築してきたサプライチェーンが分断され、全く機能しなくなってしまったことから、ある程度の需要が見込まれるなら、タイ国内での部品調達ということも考える必要があると思う。 また今後、社員の中から感染者を出さないためには、職場衛生環境のさらなる強化が必要となる。職場でまず手を洗うとか、うがいするとかいうことから身につけさせて、プライベートも含めた日常習慣化を図ることが非常に重要で、ワクチンが開発されるまではマスク着用の義務付けも必要となる。 いずれにしても今回のコロナ禍の経験を活かして、次にコロナ禍が来た時にどのように対応すべきかという準備と、継続的な危機意識の徹底が企業には求められる。不透明さが増す海外拠点における事業継続の鍵とは「リスク管理と危機管理のマネジメントを回して行くことが大切」[ VIEWPOINT 3 ] 藤井 秀文 ( 海外事業部 TMCT 副カンパニー長)30%25%20%15%10%5%0%2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019[図4 ]各国の輸入元に占める中国への依存度経済産業省「新型コロナウイルスの影響を踏まえた経済産業政策の在り方について」より引用日本韓国ドイツ米国世界22