コラム/海外レポート

2016.04.05

人を育てるVPM活動

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  • 現場改革・生産性向上
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  • マネジメント

執筆者:

海老名 英幸

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
リーダーの力量が低下している

海外生産と国内工場の連携、顧客からの品質要求の高度化や短納期要求、製品ライフサイクルの短期化など、モノづくり現場に課せられる条件は日々複雑化しています。
そうした状況下、効果的な社内改革を進める秘訣は何でしょうか。それは改善活動の推進役となるミドル層の意識改革であると私は考えています。特にトップ方針の上意下達やグループ内の調整など、リーダーシップを発揮しながら改善活動を牽引することがミドル層の担うべき役割は極めて大きくなっています。ところが近年の傾向として、いわゆる中間管理職であるミドル層を中心にトップ方針をブレークダウンして伝える力が弱体化していると言われます。
その原因の一つは職場環境の変化です。近年、モノづくりの現場でも勤務形態の多様化が進んで来ました。派遣社員・パートタイマー、外国人労働者など非正規社員の比重が増え、一方通行の指示命令やコミュニケーション不足に陥る傾向が見られます。
新たに管理職になったが、お手本となるベテラン社員がいないという話も良く耳にします。またミドル層に課せられる仕事の比重が高まっており、目標達成の為プレイングマネージャーとして、過度の残業により疲弊しているという状況も有るようです。しかし企業改革を推進する求心力となるのが職場リーダーの存在。まず彼らが変わらなければ組織力の強化は難しいのが実情です。

キーワードは「人・意識」

テクノ経営が提唱するVPM活動では、推進力の要であるリーダーの能力開発を重視しています。リーダー育成を狙った改善アプローチがそれです。それを解決するためにムダ排除の視点として、具体的な解決アイデアを提示しています。
そしてVPMの狙いは、リーダーを含めた活動メンバー全員の意識改革に有ります。多くのモノづくり企業では、QCサークルや5S・改善提案など幅広い活動を展開されている事と思います。しかし、どんな活動を導入するにしても「何の為にやるのか」という目的意識を持つことがまず重要です。単に手法を真似るだけでは本当の改善定着は図れません。最初に何を目的にやるべきか、何をしたいかを明確にする事。手法も大事ですが、目的の設定と共有化が大切です。それによって結果が大きく変わって来るからです。
活動を進めるリーダーにとって必要な事は、自分自身の言葉で「何をしたいのか」をメンバーに語ること。コミュニケーション力や対人スキルの向上と同時に、参加メンバーの本音や価値観に焦点を当てながら、会社方針をブレークダウン出来るようになる事です。そこから活動に加わるメンバーのモチベーションが高まり、グループに笑顔や一体感が生まれて来ます。大切な事は改善のベクトルを合わせる事です。

改善推進の着眼点

VPMでは、職場の作業を価値作業(主体作業)、付帯作業、ムダ作業に三区分して捉えます。価値作業とは、純然たる価値作業でお客様からお金を戴ける部分。付帯作業とは、例えば運搬や片付けなどの作業。ムダ作業とは、空歩行やモノ探し等を指します。
テクノ経営では「一日工場診断」を実施していますが、工場を拝見した結果をお伝えすると、現場のムダの多さに驚かれる場合がよくあります。工場診断では現場観察の一つの手法としてワークサンプリングをよく用いますが、その目的は現場の作業状況を数値化して捉えることにあります。各職場の価値作業の割合はどうか、それを客観的に現状把握することが出来ます。その数値に関しては、例えば私の経験では約30~40%程度の企業が多いように感じます。ただ改善が進んだ自動車関連の企業では70%近い数値に上ると言われます。
価値作業の割合を観れば、仕事に習熟していない、教育されていない、前工程との連携が悪い、仕様が曖昧であるなど。それらの現場の問題が判ります。何が価値を生み出す作業なのかを理解することによって、それまで現場に潜んでいたムダが明らかになり、改善の糸口が掴めるようになって来ます。現場にムダ発見の意識を醸成し、気づきを与える事がVPM活動の狙いなのです。