2013.06.20
知らないと損をする! 工場改革成功の条件(5)
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執筆者:
沢柳 知治
■ はじめに
改善提案が活性化しない・・・
決めたルールが守られない・・・
改善活動が経営成果に結びつかない・・・
『 知らないと損をする! 工場改革成功の条件 』 最終回の今回は、活動の定着や改善からの成果創出など、長い年月がかかるような課題を大幅に短縮するための秘訣をご紹介します。
その秘訣とは、行動科学の理論のひとつである「シェーピング」です。これを活用することで、社員の行動スピードと質は確実に良化し、みなさんが期待する効果が短期間で得られ、想像する以上の人材育成にもつながります。
■ 「シェーピング」とは
「シェーピング」とは、南アフリカの精神科医ジョセフ・ウォルピが開発した行動療法がベースとなっており、最終的な目的となる行動の獲得に向けて、より簡単な行動課題から段階的に取り組み、最終的な目的に到達していく方法です。
「シェーピング」は、経験の有無にかかわらず、最終的な目的となる行動に向け行動をブレイクダウンしていくため、これまでに身につけていない、経験していない行動を起こさせることが可能です。
■ 「シェーピング」による短期間での効果の出し方と人材育成の進め方
例えば、改善提案を提出するまでのプロセスを考えると、「改善提案を提出する」ことが最終目標となる行動です。そして、最終目標までのプロセスは次のようになっています。
(1)作業中、つらいな、やりづらいな、不便だなと感じたことをメモする
(2)なぜ、不便だったかの原因を考え、真因をつかむ
(3)真因をつぶすための改善案を考える
(4)改善案を試行する
(5)改善試行の効果を確認する(効果がなければ(4)に戻る)
(6)第三者でも効果が分かるようにデータをまとめる
(7)改善提案シートに(1)~(4)を記入する
(8)改善提案シートを提出する
この中で、(1)~(8)までをできる人と、(1)さえもできない人がいます。社員それぞれが、(1)~(8)までのどこができていないかを把握し、できていない箇所をサポートしていく必要があります。
今回の目的は「改善提案を提出する」ことです。しかしながら、改善提案シートの書き方を説明するだけでは、「改善提案を提出する」ところまでたどり着けない社員には、いつまでたっても改善提案を書く機会がめぐってきません。 そのため、各プロセスのどこをサポートする必要があるかを考え、観察しながら最終目標へ近づけて行く必要があります。これが「シェーピング」です。
しかしながら、「シェーピング」は甘やかすことではありません。(1)ができない人に対して、(1)ができるようになれば、ほめる。そして、ほめられることで(1)を体得する。 (1)が当たり前にできるようになれば、(1)だけではほめず、(1)+(2)ができるようになったらほめる。このように、「その人が普通にできるぎりぎりの線を上回ったらほめる」ことがポイントです。 全員に対して画一的な基準で接することは教える側は楽かもしれませんが、教わる側の人材育成を遅らせてしまうことにつながります。
■ あとがき
これまで、全5回のコラム「知らないと損をする! 工場改革成功の条件」にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
私のコンサルティング経験と、行動科学の原理原則を合わせてご紹介してきましたが、これを読んだだけでは会社も人も、あなたも変わりません。
あるデータによると、本を読んで実行する人の割合は. おおよそ 10 人に 1 人の割合だそうです。
つまり、工場改革に成功したければ、これまでのコラムでご紹介した内容のひとつひとつを実践して下さい。『学んだ知識を実践してみる』これが“工場改革成功の最後の条件”です。
このコラムを読んで下さったあなたと共に、ものづくりの未来を創造していきたいと思っております。最後までお読みいただきありがとうございました。