ごあいさつ
「経営改革に役立つコラム」ということで、今回より3回に分けて掲載させていただきますのでよろしくお願いいたします。
今回は「経営成果達成へのステップ」というテーマで進めさせていただきたいと思います。
経営成果達成へのステップ
「改善・改革活動を行なっているが、成果が見えてこない」というお悩みが、よく聞かれます。 いかに「改善活動のみ」に終らせず、その効果を成果に結びつけて行くのか。その進め方を模式的に下図に現わしています。
「経営成果(経営指標)達成」の段階
経営指標は、分類しますと、○収益性、○成長性、○安全性、○総合評価の4種類に分けられます。
これらのうち、「総合評価」に使われる「自己資本利益率(ROE)」を取り上げて、見ますと、下記の取り組みと経営成果への流れがあります。
(1) 販売数量を増やして、売上を上げ、利益を増やす。
(2) 付加価値の高い製品を生み出して、販売単価を増やし、利益を増やす。
(3) 製造原価・物流コスト・営業経費を減らして、コストを下げ、利益を増やす。
(4) 流動資産・棚卸資産を圧縮し、資本回転率を上げる。
(5) 上記(4)に加え、借入金・負債を返済し、自己資本比率を上げる。
「活動成果の実現」の段階
上記の実現に向けて、いかに実践・実現の活動を展開すべきか、という点を実績に基づいて整理しますと、次のようになります。
1)ムダ時間を排除して、余力時間を捻出する
2)余力時間を活用して、改善・改革活動を行なう
3)コストダウン施策を実施し、利益を増やす: (3)
4)仕掛り・在庫を削減し、流動資産・棚卸資産を圧縮する: (4)(5)
5)営業活動を活性化して、(1)販売数量を増やして、利益を増やす: (1)
6)研究・開発・設計を活性化して、付加価値の高い新製品を投入する: (2)
「改善対象の選定」の段階
「行動・業務のムダを排除する」ことで、「余力時間を捻出する」わけですが、いきなり実効可能な「改善案」は、すでにやり尽くされているので、なかなか見つからない。
そこで、必要な視点は「改善対象行動」あるいは「改善対象業務」を「特定すること」なのです。
例えば、「ムダな時間をみつけて、余裕をつくりなさい!」という指示を出すだけではなく、「この運搬にどれだけ時間がかかっているのでしょう?」「その時間を半分にするために、どしたら良いと思いますか?」と踏み込んで行くのです。
また、「仕掛り・在庫を削減しなさい!」と言うだけでなく、「ここに○○○が置いてあるのは、なぜか」と追求して行くところから始まります。
「改善余地への気づき」の段階
ここまで、「経営成果達成へのステップ」というテーマでお話をしてきましたが、一番のポイントは、「いかにして気づくのか?」という点です。 「気づいた価値は、百万両」と言われておりますが、このことであります。
先の「運搬時間短縮の例」で申しますと、
Ⅰ: 「運搬に時間がかかっていること」に気づく、
例: 「色々な仕事があるけれど、運搬が結構あるな!」
Ⅱ: 「運搬の時間を減らそう」という目標を持つ、
例:「運搬を減らせないか?」
Ⅲ: 「運搬の時間を減らす着眼点」を見つける、
例: 「運搬を無くせないか?」「減らせないか?」「方法を変えられないか?」
「簡単に・誰でもできるようにならないか?」「ついでに運べないか?」
Ⅳ: 「運搬の時間を減らす具体策」を練り上げる、
例: 「そもそも、この簡易プレスを運搬先に移動できれば、運ばないで済むのではないか?」
「フォークリフトで運べるくらいの大きさだから出来るかも!☆」
「改善余地への気づき」に関する環境づくり
上記のように、Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳのような「思考や会話の連鎖・展開」が自然に・活発に行なわれる職場の環境づくりが必要になってきます。
そのためには、「改善効果・成果」をいきなり強く求めないで、「全員参加・参画」できるようなコミュニケーション活性化重視の「助走期間」を数ヵ月持ってから、その後に本格的な「改善・改革活動」に入って行く・段階的な進め方が効果的です。
今回のまとめ
今回の内容を要約しますと、つぎのようになります:
*「経営成果達成へのステップ」の最初は、「改善余地への気づき」です。
*「改善余地への気づき」には、「思考や会話の連鎖・展開」が自然に・活発に行なわれる職場の環境づくりが必要です。
*「改善案」をいきなり探すのではなく、「改善対象行動、あるい業務」を特定することから始めて成案化して行きます。
以上、「経営成果達成へのステップ」ついて、お話させていただきました。