【3】活人化による新しい収益源を獲得していく進め方
【3.1】 間接部門の少数精鋭化と活人化の進め方
(1)人と組織とアウトプット成果の視点
まず、組織に対する情報とモノの流れを描き、各部門へのインプット、業務処理、アウトプット、部署間の接続となるバトンリレーの関係を図示化して整理します。次に、 現在の情報とモノの流れやそれに関わる各セクション名称を記載していきます。このような図を書くと、各セクション間で、中間アウトプット成果のバトンリレーが発生し、 かつ多くのセクションが同一類似業務に関わっていることが実に容易に理解できます。まるで短距離100m競争を4名で25mのバトンリレーをしているような業務運営となって いることに気づくはずです。大企業ほどこの分業バトンリレーの傾向が強く現れています。例えば、中小企業では受注・経理・購買・生産計画・出荷管理まで、一人で 多業務持ちが当たり前となっています。
日本の高度経済成長時代における作れば売れる時代のやり方、その延長線で分業スタイルのバトンリレーでつなぐ業務のやり方が今なお継続されていることに強い疑問を 感じます。このような人と組織のあり方は現在と合わないのではないでしょうか?
現在は変種・変量で顧客ニーズも多様化して常に変化しているのです。世の中が大きく変化しているこのような背景から、人と組織のあり方も大胆に変える必要があると考えます。 分業間で発生する調整、バトンリレーで必ず発生するリードタイムの増加、重複業務等はアウトプット成果を直接生み出す業務ではなく、増加させても成果に直結しない付帯業務で しかないのです。この付帯業務は人員を単に増大させているだけです。この視点から問題発掘を実施し、本質的な問題提起と原因追究により改革を進め、少数精鋭化と活人化を 進めることが必要です。
(2)業務機能のインプット・業務処理・アウトプットの視点
インプット視点とは情報・モノの集め方を考えることです。間接部門では、個人別のやり方が実に多く存在しているからです。これを生産現場に置換えると材料を集める作業と同じです。 どのタイミングで、どれだけ、どのように情報・モノを集めるのか、そのコツが共有化されていないために、間接部門の職場では2S(整理・整頓)すら満足にできず、業務効率を押し下げて いるのではないでしょうか?この問題は、インプットのコツを共有化して実践して行くことで大きく効率性が改革されます。段取り八分と昔から言われているように、やり方次第で大きく 効率が違ってくるものです。
業務処理視点では、 まず始めに業務ありきではなく、アウトプット成果視点から、業務そのものの目的をゼロベースで問い直す視点が必要です。そもそも何のためにという機能設計面から 疑問視点で業務を再度見直します。次に必要であれば、業務処理の手順と内容も見ていきます。個人の技量に任させた手順で、それぞれのやり方となっている実態が見えてきます。 これを生産現場に置換えると加工・組立に相当します。生産現場では、加工や組立の技術がバラバラだと品質不良、時間のばらつき、モノを正常に作ることができません。間接業務でも 同様のことが起きることは容易に想像が付きますが、何故か、ツボとなる手順のコツさえもブラックボックス化してよく見えません。逆に工夫点をオモテ化せず、自分しかできないとの 誤った考え方をしている担当者もいるようです。類似業務の処理時間で2~3倍違うことが多く、ここにメスをいれていくことも必要です。
アウトプット視点とは、どのように次業務に流すかという視点です。情報とモノの流れ図からも理解できるように、加工した情報の次業務工程への流し方です。生産現場に置換えれば、 後工程との能力バランスで工程間にモノが停滞する、反対にモノ待ちが発生する等のムダが見えます。また、間接業務でも情報の停滞・待ち・さらには、調整というムダが発生しています。 次業務との接続方法を改革の視点として進めて行きます。
できるだけスピードを持って成果を出すため、一連の業務を流れ方向でとらえ、分業化ではなく多業務持ち化を推進し、会議、調整、連絡を極小化するかたちで少数精鋭化⇒活人化を 進めること。これが大変重要な改革の視点となります。
【3.2】 直接部門の少数精鋭化と活人化の進め方
(1)人の仕事量を定量化する視点
生産部門では、情報とモノの流れを描き、各工程に於ける人の働き方に特に注目します。なぜなら人・モノ・設備・方法・生産速度の各視点からムダ発掘が可能だからです。
ここでも人の仕事量を定量化して、受け持ち範囲を最適化する検討不足が多く発生していると感じています。なぜその人員編成か理解できない現場が多く見受けられます。 現場を拝見すると、おおよその工程ごとに、どんぶり勘定で人員が割り付けられている光景をよく目にします。その背景には、人の仕事と設備の仕事が混同されていることがあるようです。
わかり易い例として、自動設備を運転するオペレータの事例があります。オペレータの仕事は、周期的な材料の投入と品質工程内の管理です。自動設備が自動運転している時間は人の仕事 ではありませんが、人と設備の仕事を区分するため、人の負荷率のみを抽出すると非常に低く、実に多くの手待ちが発生していることがわかります。このように多め多めの人員配置に なっている場合がよくあります。本来は、多くの工程や多台持ちが可能であるのに半分程度の負荷率で人員配置されている現場。そして、それが常識化することで、何の問題意識も持たない 高コスト体質生産現場が当たり前とされてしまうのです。これは人の成長を妨げ、知恵を錆びつかせることにつながります。負荷率を正常状態にして人の知恵を引き出し、さらに桁違いの 生産性を目指すため、さらなる知恵を入れることで、『人財』をつくり、コスト競争力をつけて行くのです。この視点から少数精鋭化⇒活人化を進めます。
(2)品質不良・トラブルゼロの視点
工程内での不良品、設備トラブル発生の対応として、余計に人員編成されていることがよくあります。
これでは、仕事が直接付加価値生み出すどころか、人が多ければ多いほど、コストが増大し、ムダな仕事が増えます。不良品が出るから、トラブルが発生するから人をつけ、 それがその職場で常識化し、多め多めの人員増加となっている光景もよく目にします。この魔のサイクルから抜け出す努力、それが中途半端であることが根本的な原因である場合が多いようです。
KKD、経験(K)と勘(K)と度胸(D)だけで、問題発生のメカニズムと本質的な原因追究に対する改善が実施されず、繰返しモグラ叩きとなっていることがよくあります。不良やトラブルが 何故発生するのでしょうか?ものをつくり込む原理(機能)である原則(条件・基準)の崩れが発生しているからです。原理を崩す原則のズレを体系化して改革していく考え方でターゲットの品質不良、 トラブルをゼロ化して行きます。あくまで目標はゼロ化です。削減という考え方では、その時点で取組姿勢の意識が半減されてしまいます。これは、大変重要な考え方です。原理原則から改革進め、 ターゲットの品質不良、トラブルをゼロ化し少数精鋭化⇒活人化を進めます。
直接部門の改革のキーは付加価値を生み出す仕事にタイムリーに人を付ける、品質不良・トラブルゼロを目指し少数精鋭化⇒活人化を進めることが人の成長、『人財』をつくることになります。
次回のコラムでは、コスト意識と主役意識を高め成果を確実にするためのポイントについてお話し致します。