人材育成が進まない本当の理由…
こんにちは、㈱テクノ経営総合研究所 マネジメントコンサルタント 沢柳知治です。
日々、様々な業種の生産革新活動のお手伝いをさせていただいておりますが、最近は業種を問わず“自分の意見が言えない”、“異常を異常と気付かない”、“漢字が書けない”若手社員をよく見かけます。
この現象は、ゆとり教育の影響でしょうか?そもそもやる気がないのでしょうか?
彼らがそうなった本当の理由は“自分の意見を言う、異常を意識する、漢字を積極的に使う『機会』が無かったからである”これが私の見識です。
みのもんたさんは、この絵の女性(図1)に何と声をかけるでしょう?
きっと彼は「“お嬢さん”、今日も寒いですねぇ」と声をかけるに違いありません。
絵の女性が老婆に見えていたとしても、若い女性に見えていたとしても、彼は、一瞬で、
❶ 五感で相手の様子を把握する
(今日は寒い、老婆、若い女性共に首にファーを付けている)
❷ 相手のことを考え、伝え方を考える
(老婆におばあさんと言うと失礼かな…)
❸ 相手が笑顔になる言い回しで発言する
(優しく「“お嬢さん”、今日も寒いですねぇ」と発言)
をやってのけているのだと思います。彼は何故一瞬で3つのステップができるのでしょうか…?
それは、彼が日々円滑にコミュニケーションをしなければならない『機会』に遭遇しているからでしょう。
先ほどの若手社員も、発言の『機会』、異常を異常と認識する『機会』、漢字を書く『機会』に恵まれれば、みなさんの期待に応える社員に成長し、末永く企業を支えていく人材になることでしょう。社員に『機会』を与えることが、人が変わり、企業が変わる第一歩です。
人が育つ機会の与え方とは…
社員を成長させるために、社内研修、外部研修、通信教育、資格取得、eラーニング…様々な手段がありますが、最も効率的で明日からできる人が育つ機会の与え方とは何でしょうか…?
それは“読書”です。私が提案するのは“読書”といっても、課題図書を与え、一字一句黙々と読ませ、読書感想文を書くのではありません。
効率的な人材育成を目的とする読書は、限られた時間で本に書かれている言葉をヒントに、自分の意見を発表し合う読書、つまり“行動する読書”です。本を読み、自分の意見を発言させることは、知識を見識に昇華させ、社員の発言力を鍛えます。このような機会を与え続けると、生産性向上活動、品質向上活動、小集団活動等あらゆる活動を推進する基盤ができあがります。
技術・技能伝承活動による人材育成
生産性向上活動、品質向上活動等、様々な活動のお手伝いをさせて頂いておりますが、今回は技術・技能伝承活動による人材育成についてご紹介致します。
技術・技能伝承は2012年問題として知られる団塊世代の大量退職への対応として、全ての業種で取り組みが必要とされる課題です。 私どもの技術・技能伝承活動は“暗黙知の形式知化”をコンセプトに作業一つ一つを文書化、さらには画像化、動画化することで誰でもわかる作業標準書を永続的に更新し続けられるしくみを構築していく活動です。
特徴は“技能”と一言で括られる作業を、“技能”、“知識”、“情報”、“治工具”の4要素に分類し、簡潔に整理していくことです(図2)。
この活動を通して、誰にでも内容を伝えられる伝達力、定性的な作業を定量的にあらわす表現力、日々の作業を見つめ直すことで新たな作業改善への気付きが得られ、人材育成につながります。
人材育成と経営改革を両輪で進めるには…
人材育成と経営改革をどのように進めて行けば良いでしょうか?この根底にあるのが“気付き”です。気付きがなければ、現状維持から抜け出せず、人も企業も成長はありません。それでは、気付く『機会』をどのように与えることが人材育成と経営改革を効率的に進めてくれるのでしょうか…?
それは、トップがあるべき姿、取り組むべき優先課題を示し、ミドル、ボトムが各自の役割を認識して全社一丸で経営改革のための生産革新活動に取り組むしかありません。
トップが生産革新活動に取り組む『機会』をミドル、ボトムに与え、気付きの喜びをミドル、ボトムが体感し、小さな成功体験を積み、さらなる成果創出に向けた活動を自主自律で進められるしくみを構築することが、人材育成と経営改革を両輪で進める唯一の方法です。
先が読めない時代、社員を小さな変化にも気付き、行動できる人材に育成すべく、成長の『機会』を社員に与え、将来に備えませんか。