コロナ禍のこの数ヵ月、公私に渡って社会生活や経済活動は大きく変化した。緊急事態宣言により始まった不要不急の外出自粛や、仕事における在宅勤務やリモートワークなど、それまでの日常生活が急激に移り変わり、先行きが見えないモヤモヤとした不安感と心身の不調に悩まされる日々を過ごした人も多いだろう。
ある研究によれば日本人はもともと不安を感じやすい傾向を持った国民なのだそうだが、それは脳内伝達物質を受容する遺伝子の違いにあるらしい。
セロトニンといえば精神を安定させる働きを持つ脳内伝達物質として有名だか、実はこのセロトニン・トランスポーターの機能が日本人は弱い。そのため日本人は個人競技よりも団体競技で実力を発揮するなど、周囲の状況を伺いながら行動することに慣れているようだ。
ちなみに日本人の多くが持っているセロトニン・トランスポーターはSS型。逆にアメリカ人にはLL型が多く、物おじせず自己主張が強い傾向がみられる。
日本の職場には仕事の根回しや儀礼的な行動を重んじる文化がある。ところがコロナ禍で一同に会せないリモートワークとなるとこれらの腹芸は使えない。今までの常識がガラガラと崩れ落ちるなか、現れてくるのは本質的なビジネスの姿だ。
コロナ禍による働き方の変化では、定時に出社するという常識さえ過去のものになる。オフィスさえも撤廃して、社員同士のコミュニケーションはリモートワークのみで行うという企業も出てきた。まさに究極のスモールオフィスである。
社員の通勤費、オフィス賃料、コピー・印刷費、その他経費もカットされ、大幅なコスト削減になり、社員は自らの業務に集中できるメリットがそこにはある。ただ、すべての業種や企業でオフィスを無くすことはできない。これからは従来のオフィスワークを中心に在宅勤務やリモートワークの比重が高まっていくと思われる。
そんな状況下、これからのビジネスパーソンに求められること、特に対面型のコミュニケーションが重視される「営業」という仕事ではどうだろう。最近では顧客企業の訪問も可能になったが、コロナ再燃により状況はいつ変わるかわからない。今のうちからテレビ会議などを使った顧客先との非接触型のコミュニケーションを試みておきたい。
マネジメントの立場では、仕事のQCDをチェックする仕組みづくりが重要である。たとえば個人目標の達成状況など数値的な情報は管理しやすいが、個人の仕事に対する考え方など定性的な情報はリモートではつかみにくい。これらについては「1on1」での情報交換などを定期的に実施して、部下とのコミュニケーションを強化することが必要ではないだろうか。
先述の様に、日本人の特性である「場の空気」を読む感性や、いい意味での刺激であった他者の視線が在宅でのリモートワークにはなく、ともすれば仕事と私生活のけじめが曖昧になりがちだ。自己管理力とプロセスの標準化で、ライフワークバランスのとれたリモートワークのメリットを最大化する工夫をしたい。
緊急事態宣言の解除と共に、少しずつ動き始めた国内経済。10月1日からは外国人の入国も一部緩和される。「GoToトラベル」に東京が加わり、インバウンドが去った観光地にも明るい陽射しがみえてきた。
今こそコロナをいいわけにする「ネガティブ思考」から、コロナをチャンスととらえる「ポジティブ思考」へ発想の転換をはかりたい。