海外レポート

2021.04.13

米ISM製造業景気指数、3月は37年ぶり高水準も人手不足は解消せず、回復の足かせに

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全米供給管理協会(ISM)が4月1日に発表した3月の製造業景気指数※は64.7と、1983年12月以来37年ぶりの高水準となった。新規受注が力強く伸び、期待されていた経済の急成長が始まっている可能性が示された。米国の製造業回復に向けた政府の動きとしては、本年1月25日にバイデン米大統領が政府調達で米国製品を優先する「バイ・アメリカン」法の運用を強化する大統領令に署名。政府機関に米国製品の調達拡大を促し、国内製造業を支援することで、支持者である労働者層を重視する姿勢をアピールした。バイデン氏は「税金を米国の再建に活用し、米国の製品と労働組合の雇用を支える」と述べ、新型コロナウイルスで打撃を受けた製造業を支援して景気や雇用の回復を急ぐ考えを示した。バイデン政権は内政では製造業の復活と雇用の増大を政策の中心に掲げている。バイデン政権における「米国第一主義」とは、何よりも製造業を守り、米国の中間層を支援しようとするものであり、このような政府による強力な支援により、今後も米国製造業は回復に向けて堅調な動きを示すと思われるが、その足かせとなりかねないのが米国製造業の人手不足問題である。
米国製造業は長年、労働者不足を訴えてきたが、この1年は特に厳しい状況に見舞われた。コロナ禍でホテルやレストランなどサービス業を中心に多数の失業者が出る一方、製造業では全ての製品の需要が急増し、多くの工場がその対応に追われた。しかし、失業率が高水準にあるにもかかわらず、工場に求職者が殺到する状況は見られない。米労働省が4月2日に発表した3月の雇用統計では、製造業は5万3000人増加し、半年ぶりの大幅増となったが、雇用者数は依然コロナ禍前の水準を4%(51万5000人)下回っている。
米国の製造業における人手不足の要因として指摘されるのは、現在の失業者と工場で必要な人材のミスマッチだ。せっかく広告費を投じて採用した人間が工場の環境に不満を抱いて数日で辞めてしまうことも決して珍しくはない。ある製造業の経営者は「当社の仕事はスターバックスではない」と訴える。しかしこのような現象は何も米国だけのものではなく、日本でも不景気やグローバル化を背景に、製造業へのマイナスイメージは増加したことに加え、一般的なイメージである、きつい、汚い、危険の3Kがさらなるマイナスイメージを生み、製造業で働きたいと考える人材が減っている。
バイデン米大統領は3月31日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグで演説し、インフラ整備や製造業強化に向け、8年間で総額2兆ドル(約220兆円)規模を充てる投資計画を発表した。バイデン氏は31日の演説で「この計画で数百万人の雇用を創出し、技術力を強化することで世界的な競争力が高まる。米国の未来のために必要な投資だ」と強調している。計画には製造業強化のための研究開発や人材育成のほか、先端技術の要となる半導体などの製品供給網(サプライチェーン)強化が盛り込まれており、同氏が大統領選時に掲げた、米国製造業の復権とそれに伴う500万人の雇用創出という公約を、1月の「バイ・アメリカン」法の運用強化に続けて具現化したものと思われるが、米国政府の想定するシナリオ通りの展開を描くためには、求職者と製造業のミスマッチの解消も一つのポイントとなりそうだ。
※ISM製造業景況感指数とは、ISMが公表しているアメリカ製造業の景況感を示す指数。300を超える製造業企業に対して「新規受注、生産、雇用、入荷状況、在庫」といった項目に関するアンケートを実施して、回答結果から指数を算出しており、一般に、数値が50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退と判断される。

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