タイでは、年末からの感染拡大により、2月上旬まで一部の地域で越県に対する規制が入るなど感染拡大を封じ込めるために、タイ政府による対応が取られ、その政策により収束に向かいつつあった。
外国人コミュニティーへの積極的なPCR検査の実施などにより一時は感染者数が、タイ全土で100人を切るところまできていたが、4月16日タイ政府は第三波の発生を理由に急遽規制を発表した。これによりタイ国内全都県で規制が強化され、教育施設は閉鎖、リモート授業への切り替え、遊戯施設等も閉鎖となった。飲食店を含むレストランは、午後9時まで、その後、午後11時までは持ち帰り対応のみ。当然であるが飲酒は禁止、コンビニ等の営業時間も夜11時までとかなり厳しい状況である。
政府の一部からはロックダウンを行うべきという様な強硬意見も出ていたが、プラユット陸軍大将兼首相は、経済を止めてはいけないとの理由から、規制強化に留めた。
今回の感染拡大の主な原因は、コロナ疲れによる反動と見る事ができるかもしれない。夜の飲食店でのクラスターが多く発生した。今回の第三波では、一日の感染者数が1500人を超えており、過去最多を更新した。
また、日本人駐在員が多く住む、スクンビット通り周辺では、多くのコンドミニアムでも感染者が見つかっており、日本人駐在員にも感染が確認されている。この影響でサミティベート病院等一般の総合病院では、一般のPCR検査が出来ない状況となっている。
2020年の年末の第二波に引き続き、今回の第三波も日本人感染者による影響であるという様な、噂が出回っている。本当の所は、よく分からないが、一要因となっている可能性は捨てきれない。夜の会食など感染に繋がる行動は控える等の対策は必要なのかもしれない。
一方でタイ国内の経済状況であるが、自動車を中心とした生産は引き続き好調を維持しており、自動車の輸出が堅調な状況から、2019年末よりも生産量は多い状態で推移している。現段階では2021年の7月頃までは、この状況は維持される見通しであるが、その先は見えないというのが、多くの経営者の認識である。
先行きの見通しが立たない為に、設備投資や従業員の増員には踏み切れない状況が続いている。そんな中、タイの日系企業の経営者の中からは、この状況を打破すべきとして改革に着手する企業も増えてきた。
これまで手付かずだった、人事評価制度の見直しや、管理職の意識改革など、プロジェクトを組んで仕組みの見直しや、管理者教育に着手し始めている。
特にこの1~2年の間に、55歳の定年を迎えるタイ人工場長やタイ人マネージャーが増加する事から、後任人事が喫緊の課題となっている。
日本人中心の企業運営が続いてきた事から、若手の管理者の伸び悩みに頭を抱えている経営者も多い。弊社でも、そうした企業経営者から多くの相談を受けており、こうした企業への支援も増加傾向にある。
タイ政府の動きも本格的な観光客の受け入れや、投資の増加を狙った開国を意識したものになって来ている。これまで入国後14日間の隔離であったが、4月1日からは、一部の国と地域を対象に、10日間の隔離へ短縮した。ワクチン接種者に対しては、7日間の隔離措置というようになってきている。アセアン各国でも同様の動きになってきている。
他のアセアン諸国の動きを見ても、既に、2020年9月より特定の国や地域からは、隔離無しでの入国を認めている。
インドネシアでは、バリ島で2021年6月~7月にかけて、観光客の受け入れを検討している等、まだまだ完全な開国ではないものの、国を開く方向で動き出している。
ただ、フィリピンやベトナムの様に、変異株(イギリス型)の感染拡大がさらに進んでいる国では、またロックダウンが始まってしまい、普段の生活に規制が掛かる状況の国もある。今後の状況も踏まえて、見ていく必要があるが、まだまだタイ、アセアン地域への自由な渡航には、数年を要するとみるべきかもしれない。
我々日本人駐在員も、改めて感染防止を意識した行動をとる必要に迫られている。