新しい分野にチャレンジしていくためには、ボトムアップ活動による現場力向上が重要である。社長に就任して1年、製造現場のレベルアップと作業標準化による職場改革を寺澤社長は考えておられました。
【背景と課題】
4S・標準作業ができていない!
1938年創業の当社では80余年の歴史を通じて、建設機械やオートバイを中心とする鍵やシリンダ廻りの製品を製造してきました。長い歴史を通じて、製品の品質についてはお客様から高い信頼をいただいているのですが、今や建設機械やオートバイについても電動化が進んでいます。従来の技術に依存する当社の製品はいずれ無くなっていく傾向にある。当時、社長に就任して1年目の私はここに強い危機感を抱いていました。
ところが社内ではモノづくりの基本である4Sや標準作業の考え方が職場に浸透しておらず、それぞれが自分のペースで業務を行っている状況でした。将来を見据えて、新しい分野にチャレンジするためにモノづくり現場の改革と次世代リーダー育成が喫緊の課題となっていたのです。
その頃、「こんな案内が来ているから」とセミナーパンフレットを会長から手渡されました。会長としては特に深い意味があってのことではなかったと思いますが、ちょうど関心を持っていたボトムアップ改善に関するテーマだったので参加してみました。
セミナーに参加した感想は、私自身の現場改革に対する考え方とぴったり同じだなと感じたことです。これは当社でもやらなければならないことだと思いました。そこで現場改革に取り組む前に、第三者の眼で冷静に分析してもらう「一日工場診断」を受けることにしたのです。
「一日工場診断」を受けた感想は、よく見ていただいたと思ったことです。わずか1日の診断で現場の4Sができていない状況やその背景にある根本的な問題を的確に指摘いただき、診断後の報告と改革へのシナリオの提案を聞いて、私としても予想通りの結果だなと思ったのと同時に、これからの現場改革の必要性を改めて感じました。 「一日工場診断」による顕在化された問題点と改革へのシナリオが後押しする結果となり、改善活動に取り組むための第一歩が踏み出せました。やはり自分の考えていたことが間違いではなかったという確信が湧き上がってきました。
【選定と導入】
意識改革からモノづくり現場力のレベルアップへ
工場診断後、標準作業という概念が理解されていない現状、そのあたりをしっかり変えていきたいと思っていました。当初は私が社内でやれると考えていたのですが、指示待ち型の傾向が強い職場風土では、長年のやり方が身についてしまっていて、いまさら変えることの必要性が感じられません。
また工場診断を受けた3年前(2019年)は、ちょうど右肩上がりで多忙な時期。売上的にも過去最高の年だったのです。そのことが活動にかかる負荷が活動開始のネックになっていました。
改善に取り組むために彼らを活動にどう参加させるか。本心は真面目なのだが、少し変えて改善をやってみようと呼びかけても自発性がなく、「それは指示ですか」という言葉が返ってくる。「指示ならやります」という雰囲気でした。
「これではだめだ」私に代わってアドバイスをするコンサルタントが必要だと感じました。外部から言ってもらう方がきっとインパクトがあるだろう。コンサルタントから改善の大切さ、改善活動は自分の職場を良くすることなのだと説明してほしい。私では思いつかないインパクトのある動機付けをしてもらいたいと思いました。それがコンサルティング導入による現場改革に踏み切った理由です。
1年目は、まず社内の意識改革。2年目にはセル生産や工場レイアウトの変更などに取り組みました。そして現在、3年目を迎えて各メンバーの意識は大きく変わりました。たとえば「モノを取る作業が1秒短縮できた」「ばらした工程をつないで前後工程のタクトタイムを同じレベルになるよう改善した」などの報告を聞いていると現場改革を推進して本当によかったなとつくづく感じています。
当社が100年企業の仲間入りをするには、現場力と管理力を一般的に言う自動車部品メーカーレベルにまで向上させることが必要だと考えています。今後、新しい分野にチャレンジするためにも、モノづくりのしくみや生産性の高いラインづくりを考え、実現することができるメンバーがいる職場を育てながら現場改革を継続していきたいと思っています。
テクノ経営総合研究所では今後も経営革新セミナー、1日工場診断を通じて、企業変革のきっかけをつくるための活動を推進してまいります。
(公開日:2021年8月19日)
PDFダウンロード
【工場診断事例】三恭金属株式会社様
ご質問・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。
1日工場診断について相談する