設備投資から人材育成へ
コロナ感染症の発生から、すでに2年近い月日が過ぎようとしている。コロナ禍という不測の事態は私たちの生活やビジネスを取り巻く環境を大きく変化させた。在宅業務やリモートワークという新しい業務のカタチが定着し、マスクの着用が当たり前の日常の風景となった。
コロナ禍を経て、出社する社員が減り会議や打合せなどもリモートワークが多くなると、改めて職場コミュニケーションや人材育成をどうするかに関心が集まってくる。在宅勤務やリモートワークでは、一人ひとりの仕事に対する取組み方や自己管理の重要性が高くなる。改めて企業における人づくりの大切さがクローズアップされている。
一方で製造業にとって設備投資は欠かせない条件。リーマンショックで一気に落ち込んだ国内製造業の設備投資も、その後の景気回復期を通じてコロナ前には4兆円レベルにまで上昇してきた。ところが、ここに至って短絡的な業績確保のため「人づくり」を忘れ、設備投資だけに邁進してきた企業の弱体化が鮮明になっている。いくら優れたシステムや機械を導入しても、それに見合う技能や技術を持った人材を育てていなければ「宝の持ち腐れ」になってしまうからだ。
コロナ禍以前から、モノづくりの分野では「インダストリー4.0」に代表されるスマート工場を志向する世界的な潮流がある。IoTやAI、ロボットなどの先進技術を連携させて、地球環境にやさしいエコなモノづくりを実現しようというものだ。それがDX(デジタルトランスフォーメーション)という全体的な快適性を追究する概念に発展してきている。
日本経済新聞に『設備投資から人材へ』という記事が載っていた(2021年9月11日)。三井住友海上火災保険は約5千人の営業社員にデータ分析の研修を実施。日立製作所では約16万人のグループ全員にデジタル教育を始めたという。コロナ禍からの回復期にある今、改めて新しいビジネス変化に適応できる人材育成や能力開発のニーズが高まっている。
「人」を重視に舵を切れ! 人材に投資する企業が増えている
製造業の業績も回復基調にあり、「こんな忙しい中で人材育成をする時間なんて確保できない」という声も聞かれるが、逆にコロナ禍を絶好の機会として、人材育成を強化する企業が増えているのも事実。この時期だからこそ足元を固めることが必要ではないだろうか。
「言われたことしかやらない」「ものごとを考えない」「自主的に行動を起こさない」そんな人材に関する悩みを抱える経営者の方は多い。しかし、最も大切な経営資源は「人」。利益体質の儲かる企業になるには、その原点である人材育成への投資が必要である。企業における価値創造の原点は「人」であり、人が変わらなければ何も変わらない。その仕掛けをどう打つか。今こそこれを考えて実行するチャンスなのである。
人が成長すれば、経営結果は自ずとついてくる。「企業は人なり」という格言は時代が移れども不変である。そのポテンシャルに限界はない。その力を覚醒させれば必ず活路を切り開くことができるはず。その信念をもとに、私はコンサルタントとして現場改革の支援をさせていただいている。
コロナ禍によるマイナス要素だけを考えるのではなく、「禍を転じて福と為す」発想で取り組みたい。