一種のバズワード的な扱いから、社会一般に定着した感があるSDGs。その中に「つくる責任・つかう責任」というキーワードが盛り込まれている。
まさに原材料と人を「つかい」モノを「つくる」製造業において、非常に関連深いキーワードである。
また、SDGs自体に地球環境に関する開発目標が多く含まれていることから、電力消費や炭素ガス排出といった面についても製造業とSDGsとの関わりは深いといえる。
SDGsの開発目標達成に向けての取り組みは、社会的責任上、あるいは消費者をはじめとしたステークホルダー向けのPRという部分においても重要視されており、今では自社サイト内に独自のページを設けている企業も少なくない。
ただ、日ごろから絶えず業務改善活動や会社改革に取り組んでいる企業からすれば、特に意識することなく、すでにその成果がいくつかのSDGs開発目標とリンクしている場合が多い。あとはそれをSDGsとして打ち出すかどうかという言葉の選択の問題だけだ。
逆にいえば、社内の取り組みの中にSDGsの開発目標とリンクする項目がひとつもないのであれば、それはSDGsに当てはまる「案件をつくりだす」のではなく、生産性や働きやすさ、環境問題への配慮といった製造業として当たり前の業務改善や企業改革が、まだ十分に進んでいないのだという受け取り方をして、自省の材料とすべきだろう。
自社のイメージ戦略からすれば、時流に乗って、さまざまな動きをSDGsだと紹介すれば「ウケ」がいいのは確かだが、ここは言葉だけに流されず、製造業というビジネスの本質を直視し、また見直すためにSDGsという言葉の概念を理解したいところである。
SDGsへの取り組みについて新しいwebページやパンフレットを作成し、アピールするのはブランディング的には悪いことではない。SDGsへの取り組みは先述した通り、自社のイメージ戦略にとって強力な武器になるだろうから、その要素はしっかりと活用すべきだろう。
ただそれは、SDGsという言葉なくとも持続可能な社会の構築に寄与する企業こそが、強さと社会的な信頼を得るという本質論があって成り立つ話である。
「今、なにをするべきか」を問う前に、言葉が先行してしまっては、まさに本末転倒である。
SDGsについては出版物もたくさん刊行されているが、それらを紐解くその前に、一度自社の仕事の本質を見つめなおすことも必要だろう。
「事例をつくるSDGs」より、企業として出した成果がSDGsの開発目標とリンクしていること。ここがポイントだと考える。