コラム/海外レポート

2022.01.26

組織戦略から考えるモノづくり企業の生産性向上

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執筆者:

平井 康之

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組織戦略で生産性の高い企業づくりを目指す

少子高齢化や、この度のコロナ禍を経て医療・介護分野への人材のシフト、あるいは求職者側の高まる大企業志向などによって、今後ものづくり企業は人員確保の面で苦境を強いられることが予想される。
加えて労働者派遣法の改正による非正規社員の雇止めなどで人材の流動化が進み、それが「現場力の低下」を引き起こしている事実もある。
これからは人材流動化社会の到来や、若い働き手の志向・働き方の変化により「職人は育たない時代」であるという前提の認識を持ったうえで工場経営を進めていく必要がある。

このような時代の流れに対応し、生産性の高い企業をつくるためには、限りある人的リソースをどこに配置し、どのように活用すべきかを考えた戦略的な組織づくりが必要だ。

ものづくり企業、工場の成果はあくまでも生産性である。ものづくりにとって品質や納期なども大切な要素ではあるが、これらは顧客との間で設定する「ルール」であり、成果として測るものではない。品質や納期を成果と捉えてしまうと、質と生産性のどちらをとるかの天秤の議論になってしまうが、本来は顧客の要望を満たすモノが作れていれば生産性の向上が優先されるし、品質が顧客の満足に至らない、ルールの順守に至らない場合は品質向上を優先的させなければならない。こう考えると両者はそもそも天秤の議論にはなり得ないのである。

フロントローディングを意識し、原点に立ち返った組織づくりを

生産性を第一に考えた組織をつくるうえで、ひとつの道筋として考えられるのは、上流間接部門(設計、生産技術、生産管理、購買、品質保証など)のセクションに、より多くの人材や時間を投入し、直接部門(製造)の生産性を向上させることである。直接部門からエース級の人材を上流間接部門に活人したうえで、設計は分かりやすく、モノがつくりやすい図面を追求し、生産技術部門は使いやすい設備を追求する。生産管理は徹底した平準化を図り、購買は現場がすぐに使える状態で部材を納入できる体制をつくり、品質保証では過剰品質も管理する。こうして直接部門が生産性を上げられる組織を編成していく。
日本の企業は伝統的に人(Man)、物(Material)、設備(Machine)、Method(方法)の4つのMのうち、人(Man)を重視し、やる気や性格を加味した人材育成や技術継承に力を入れてきた。
しかし冒頭にも触れたとおり、これからの人材獲得や技術継承をとりまく環境は今後非常に厳しいものとなる。
それを見据えると、まずは設計、生産技術などの上流間接部門でモノが作りやすい環境を整備することが生産性向上のひとつのカギとなる。そのために、物(Material)、設備(Machine)、Method(方法)の「3M」をしっかりと検討し、実際にモノを作る製造部門が生産性を向上させられる強固な組織づくりを目指すことが必要だ。

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