コラム/海外レポート

2022.03.01

企業努力とは何か?

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世代を越えて愛されるレジェンド級駄菓子の値上げが世間を騒がしている。

もちろんネットニュースなどでも話題となっており、その記事に寄せられる一般ユーザーからのコメント投稿には、今回の値上げに対して否定的な意見は少ない。

42年もの間、子どもでも買える製品として10円という低価格を守ってきた同製品である。
好意的な意見が多いこと自体には納得がいく。

ただ経済専門家の中には、この出来事が「賞賛すべき企業努力」として、雑に報じられる世相に危機感を持つ人もいる。

つまり、この製品がなぜ40年以上ものあいだ値上げせずに製造・供給ができたのか?
それを「よく今まで頑張った」といった感情論ではなく、しっかり「ものづくりにおける経済の話」として理解し、報じるべきだという意見である。

この駄菓子には販売元と製造元が存在する。
同製品を国民の多くが知る知名度の高いものへとセールスプロモーションし、シェアを広げてきたのは販売元の功績であるが、それを支えたのが製造元の会社だ。

この菓子製造会社は、同社のホームページなどを見ると、当該製品の製造請負だけではなく、自社製品として販売している商品も多数あり、工場も2拠点、主にコンビニにて販売されるパンを製造する会社など複数の関連会社を擁する決して小さくはない規模の会社だ。

ただ同社の沿革を見てみると、当該製品の製造を請け負った時点では、まさに「個人経営の町工場」であり、当該製品のヒットも後押しとなって着実に企業としての力をつけてきた会社である。

今回、専門家が指摘するのはこの部分である。

この製造会社は当該製品を値上げせず作ることだけを目標に努力をし続けてきたのではなく、値上げをせずに作り続けられる企業としての基盤、地力つくりに努力をしてきたのである。
言葉で表現すればどちらの視点も「企業努力」ということになるが、もちろんその意味するところはまるで違ってくる。

この観点を見誤ると、製造業にとっての「企業努力とは何か」に大きな矛盾が生じる。
「顧客のため」「取引先のため」と言ってしまえば、従業員に低賃金重労働を強要したり、過剰なコスト削減から引き起こされるさまざまな問題もすべて「努力」「我慢のしどころ」といった表現で置き換えられてしまうことも想定されるのだ。

今回の事例は決してそういったものではなく、顧客満足のためにギリギリまで価格を据え置くことができた要因は、製造会社・販売会社の強い企業としての地盤と地力があっての話である。

今回の人気駄菓子製品の値上げについては、製品のネームバリューの高さから、かなり世間の耳目を集めている。

一方で経済や経営を語り考えるうえで大切な「冷静に本質を見極める目」が試されるニュースでもあることも心にとどめおきたい。