私は2011年からタイでの日系企業へのコンサルティングに係わってきました。
初めてタイに来た時に、品質について日本とタイの大きな違いが有る事に気付きました。それは、『リペア(手直し)工程が工場の中に有る事』でした。これは、タイだけではなく、中国や東南アジアの他の国でも見受けられます。必ずと言ってよいほど、どの日系企業にもあります。
不良による歩留まりの低下=コスト上昇の原因に対応する為だと思いますが、どこの企業に行って、どの経営幹部の方に聞いても、『なぜリペア工程が存在するのか』、『その設置の経緯について』などは分からないそうです。ただ皆さんが口をそろえて仰る事は、【歩留まりを上げる為】という事です。
日本では、基本的にリペア(手直し)工程は存在しません。また、有ったとしても、臨時に場所を確保する等で、常時、手直し工程を設置する事は有りません。
私も前職時代に、加工部品の手直しを手伝った事はありますが、臨時で設置した場所での手直しでした。
常設のリペア工程を設置する原因としては、毎日、一定数の不良が出る為であり、その数量が少なければ、リペア工程を設置する必要はありませんが、ある程度、量が多くなると、その対応として、リペア工程を設置せざるを得なくなるというのが、リペア工程設置の真実です。不良が多いという事は、条件が崩れるなど、生産工程が安定していない事の証であり、また手直しをしても、海外工場では人件費が日本に比較すると安いというのも一因と思われます。
このリペア工程の存在が、海外工場の弱点の一つであると思っています。
なぜならば、品質管理の担当者の中には、リペア工程が有る為に『品質を良くする』という仕事にブレーキを掛けているのではないかという言動が見て取れることが有ります。
品質不良が発生した際に、選別や手直しを行いますが、根本的な問題の分析が遅かったり、暫定処置をもって、客先へ説明に行ったり。とにかく原因追究に至る道筋が不明瞭で見えない事が有り、結果的には『リペア工程があるので・・・』という話が必ず出てくるのです。
『リペア工程が有るから、手直し出来る』『歩留りはある程度、改善できる』など安心感が有るため、問題解決を急ごうという気が無くなっている様に感じます。
日系企業の経営者の皆様には、貴社の弱点である『リペア工程』を無くすという考え方を持っていただきたいと思います。リペア工程が無くなれば、手直しする事の煩わしさから、必ず原因追究に力が入ります。そうなれば、品質も良くなり、結果、リペア工程を設置する必要もなくなるのです。
ぜひ、その対策方法についてコンサルタントに相談してみてはいかがでしょうか?