止まらない労働人口の低下
日本の出生数は、団塊の世代を生んだ1947年からの第1次ベビーブームで約270万人、1971年からの第2次ベビーブームでは約210万人だったが、そこをピークに2016年以降は100万人を下回り、年々低下の一途を辿っている。昨年末(2022年12月20日)に厚生労働省が発表した人口動態統計速報によると、2022年1月~10月の出生数は66万9,871人となり、前年の同期間と比較すると3万3,827人の減少となった。過去最少ペースで推移しており、この傾向が続けば2022年の年間出生数は初めて80万人を割り込む見通しで、ピーク時からは3分の1以下の出生数となる。内閣府が2022年6月に公表した令和4年版・高齢社会白書では、2055年には総人口が1億人を割り込むと予想されおり、ますます人手不足が加速していくだろう。
今後30年で生産人口は30%以上も減少
同様に令和4年版・高齢社会白書から働き手である15歳~64歳の生産年齢人口を見てみると、近年では2010年の8,103万人をピークに2021年は7,450万人、2055年には5,028万人となり、今後30年あまりで約2,400万人、実に30%以上も減少すると予測されている。労働力不足・人材不足が叫ばれて久しいが、数値を見ると改めてその深刻さが浮かび上がってくる。
経営者の意識も「ビジネスモデルの変革」へ
経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省が共同で作成している2022年版・ものづくり白書によると、製造業における能力開発や人材育成の問題点は「指導する人材不足」が63・5%と最も高い。こうした中、技能継承のための取組みとしては、退職者の中から選抜しての雇用延長、嘱託による再雇用、中途採用を増やすなど、すでに一定の能力・スキルを持つ人材の確保を進める事業所が多い結果となっている。また、経営者がIT投資によって解決したい課題はこれまでに今後の重点課題として捉えられていた働き方改革や社内コミュニケーション強化といった内容から、新たに「ビジネスモデルの変革」の割合が増加しており、IT投資額に変動はないものの、DXの推進によって経営者の意識が変化していることがうかがえる。
厳しい状況だからこそ、今までにない新しい取り組みを
ロボットや制御機器を用いた自動化をはじめ、大量データ通信が可能な5GやAIの活用による品質チェックなど、すでに革新的な技術を駆使した省人化、生産性の向上を実現している事例は存在する。将来の労働人口減少に対し、こうした技術の進歩に期待する部分は大きい。それだけではない。どれだけ優れた技術であっても、その機能を引き出し、活用するにはやはり“人”の知恵、アイデアが必要となる。また人手不足だからこそ、現場に潜む課題を見直し、改善、改革につなげていく新たな取り組みが求められる。
予測される未来に対し、今から何を準備し、どのような対策を講じていくのか。現状を嘆くのではなく、厳しい現状に立ち向かうからこそ、これまでにないイノベーションが生まれ、さらなる飛躍となるのではないだろうか。