様々なロスを生み出してしまう品質不良
品質不良はモノづくり企業にとって大きな痛手となる。材料ロス、生産時間ロス、手直し時間ロスなど経営に大きなインパクトを与える。そして最大のロスは、お客様対応に多くの時間を要することと、築き上げてきた信用の失墜。モノづくり企業は品質不良を撲滅するためにあらゆる手を尽くす。それでも一定以上の根雪のような品質不良は発生し、半ばあきらめて一定のロスをコストに計上していることが多い。
意外なところに原因が隠れている品質不良
慢性的な不良、当たり前に発生してどうしようもないと認識されている不良の原因はどこにあるのか。もちろん、化学的な反応ロスが一定程度発生するなど、解決が極めて困難な品質不良がある。一方で、「コロンブスの卵」のごとく、原因が分かってしまうと「なぜ今まで気がつかなかったのか」というようなところに品質不良の原因がある場合が意外に多くある。私が経験した中で、ここで2つの事例を紹介する。
1つ目は、ある条件でガスを充填した大型の装置に数十分間投入する製品。その条件が複雑で、ガスの種類、ガスの分量、温度管理、時間管理など、担当者は最適な条件を求めて試行錯誤し、歩留アップに向けて条件を変えて不良の原因を追求するが、歩留は上がらない。結論を言うと、大型装置に投入するときの製品の配置条件が原因だった。関係者のヒヤリングと品質工学の簡易的な適用で見つけることができた。気が付いてみると「なぜ今まで手を打っていなかったのだろう」となるが、化学的な難しい条件設定に注力していて後回しになっていた。今の配置条件が当たり前の事象になっていたのである。当たり前がおかしいことに気が付くのに時間がかかる例である。
2つ目は、装置に化学的な処理を施す工程。NGとなると廃棄またはやり直しとなる。結論は、製品をセッティングする際のシーケンスが本来の狙い通りになっていなかった。しかし、シーケンスは正しいと思い込み、また直接目で見ることができない部分にあったため皆が確認をしていなかった。歩留アップを諦めかけていた。これも品質工学の簡易的な適用と、無理を承知で実施した装置内のビデオ撮影で発見できた。シーケンスが間違っていたなどは誰も想像していなかった。
品質工学の簡易的な適用で手近にある原因を追求
これらの例が示すとおり、品質不良や歩留低下の原因は意外なほど手近にあることが多い。それを発見するにはロジカルな視点が必要だ。例えば、品質工学の簡易的な適用で原因がどこにあるのか予測し、仮説を立てて手を尽くして深堀する。そして、何よりも危険なのは思い込み。第三者的な視点で「当たり前を当たり前と考えず」、まずは手近なところをもう一度見直してみることをお勧めする。