世界におけるEV(電気自動車)の状況
脱炭素社会の実現に向けて、ガソリン車やディーゼル車から電気モーターを動力源として走行するEVへシフトする動きが活発になっている。EV(Electric Vehicle)とは、エンジンを使用せずモーターを動力として走行する電気自動車のこと。EVは走行時に二酸化炭素を排出せず、地球環境負荷の小さな自動車として注目されている。
EVの需要は急増しており、2022年は1,000万台以上のEVが販売され、世界的に記録的な増加となった。主にアメリカ、欧州、中国の市場に集中しており、その中でもおおよそ60%を中国が占めている。各国とも自動車の電気化等に関し、2025~2035年までに50%あるいは100%といった目標を掲げており、EV購入者への補助や充電設備などのインフラ整備費用を助成し、普及を推進している。
日本におけるEV(電気自動車)
日本においては、EVの普及はまだ他の先進国に比べて遅れていると言わざるを得ない。日本の自動車メーカーはハイブリッド車の開発に注力してきたため、EVの技術や市場の開拓において後れを取っていると言える。しかし、日本では2035年に電動自動車100%の販売目標を掲げており、近年では政府やメーカーがEV普及のための施策を進め、充電インフラの整備や補助金制度の導入など、環境に配慮した車両へのシフトを促進する取り組みが進んでいる。環境意識の高まりやグローバルな競争の中で、日本の自動車メーカーもEV技術の開発を加速させており、競争力のあるモデルの投入が増えてきている。
カーボンニュートラルに向けて
日本政府は2023年2月、「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定した。これはエネルギー安定供給の確保が世界的に大きな課題となる中、GX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現するべく取りまとめられたもの。この中で、カーボンニュートラルな社会の実現に向けて少なくとも10年で150兆円超の投資が必要と試算している。今後10年を見据えたロードマップでは、再生可能エネルギーや蓄電池産業など22の事例への取り組みが記載されており、自動車産業においては、電動車の普及に必要な投資として約15兆円、その他、開発、製造、インフラ整備などで合わせて約34兆円以上を投資すると記されている。
こうした取り組みが実現すれば、EVの購入や充電インフラの整備に対する補助金、自治体や企業などへの優遇制度といった様々な支援が充実し、日本市場でのEV普及を促進する重要な要素となっていくと考えられる。
日本が掲げる2030年のEV販売100%は達成できるのか
日本もまた、主要各国と同様に自動車の電動化等の目標を定めており、2030年には電動車の販売100%を掲げている。この目標を達成するためには、電動車自体の技術革新はもちろん、コスト競争力の向上、充電インフラの整備、さらには消費者の利便性や価格面への考慮など、多くの課題を克服する必要がある。官民一体となり、積極的な政策と産業の連携をさらに強固なものとして、この大きな目標の達成へ向かってチャレンジしていく必要がある。ひいては、脱炭素、持続可能な社会への実現に大きく貢献していくのではないだろうか。