レアメタルとは
世界の産業を支える鉱物資源。埋蔵量・産出量とも多く、比較的精製しやすい鉄、アルミ、銅などといった「ベースメタル」と呼ばれる金属に対し、チタンやコバルト、ニッケルなど、産出量の少なさや抽出が難しい希少な金属は「レアメタル」と呼ばれ、近年その需要がますます高まっている。レアメタルについて国際的に定まったものはなく、日本では『「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属」のうち、工業需要が現に存在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるもの』と定義されている。
こうしたレアメタルは、カーボンニュートラルの実現に向けて各国で開発が進むEV車におけるリチウムイオン電池やモーター、パソコン、スマートフォンなどの液晶ディスプレイやタッチパネル、家電製品における半導体などに活用されており、すでに私たちの日常生活と深く関わっている。その需要や重要性は今後さらに加速していくだろう。
日本におけるレアメタルの状況
レアメタルは、ごくわずかな量でも機能を飛躍的に向上させる可能性を秘めており、現在の先進技術開発において必要不可欠なものとなっている。しかし、日本はこの重要な資源をほぼ輸入に頼っているのが現状だ。レアメタルには31種類の鉱種(レアアース17鉱種を1鉱種としてカウント)があり、それぞれの鉱物を産出~輸入している国に偏りがある。そのため、生産国における政治的リスクや輸出施策などによって、供給が脅かさせるリスクをはらんでいる。また、資源ナショナリズム(自国で採れる資源を開発、保有、管理していこうとする考え方)の台頭や国際的な需要逼迫など、レアメタルの供給環境は不安定さをましているような状況だ。
リサイクル技術の発展と海洋資源の活用
レアメタルを安定的に確保・供給するため、様々な取り組みが行われている。その1つがリサイクルによるものだ。電子機器の急速な進化とともに大量の廃棄物が発生しており、その中には多くのレアメタルが含まれている。日本には、こうした「都市鉱山」と呼ばれる資源が豊富にあり、そこからレアメタルを回収するための技術開発が進んでいる。廃棄物から抽出するための選別にかかる人手やコストに課題があったものの、AI技術などの発達によって無人化・機械化が可能となり、大きく前進をしている。
また、海洋資源の活用も重要な要素の1つだろう。2018年には東京・小笠原諸島の南鳥島周辺海底に世界需要の何百年分となるレアアースの存在が明らかにされた。現在、レアアースの6割を中国からの輸入に頼っている日本において、この海洋資源の発見は大きな一歩となった。現在、その資源の採掘に向けて技術開発が進められている。このほか、リチウムの代わりにナトリウムを使用した電池など、レアメタルの代替材料の開発や備蓄の強化に取り組んでいる。
日本が輸入依存から脱却するために
経済産業省が発表したエネルギー白書2023によると、2022年6月に日本、米国、カナダ、豪州、欧州委員会等の12の有志国・地域によって、鉱物安全保障パートナーシップが立ち上げられた。特定国に依存しない多角的な鉱物資源サプライチェーンの構築を目指し、安定供給確保に向けて連携した取り組みの推進が確認されたとしている。自国の対応だけでなく世界的な協力体制のもとでサプライチェーンを強化し、いずれは100%に近い輸入依存からの脱却、そして更なる日本の産業発展、産業基盤の強化~実現を目指していってほしい。