2024年、タイの日系自動車産業にとっては正念場の時となるのではないかと思っています。タイでは中国系自動車メーカーの台頭が著しく、街中を走っている車に中国系EVが多くみられるようになりましたし、日系の販売店が中国系販売店に鞍替えする様子も見られます。ついには昨年のタイの自動車販売に於いて、日系車の割合が80%を割り込んでしまいました。今まで日系車の独壇場だったタイでの大きな変化です。今後いろいろなことに注視していこうと思います。
さて、私もタイでコンサルティングを開始して10年目となりました。語学が苦手な私は相変わらずタイ語が話せず、優秀な通訳さんのお世話になっています。今からお話しするのは今年(2024年)に入ってからの話です。
ある会社で労働生産性の説明をしていました。この会社は数年間活動をお手伝いしており、古くからのメンバーが以下の算出式をすらすらと答えてくれました。
Manpower Productivity=Σ(Standard cycle time ×FG)/Σ(Working time)
※Working time:総労働時間
そのまま詳細について話していた時です。タイ人マネージャーさんから「久保さん、Σ(シグマ)について詳しく説明してもらえませんか?」と言われました。
私は「しまった!」と思いました。
数年前に開始したころにはΣに関しては数列の和として具体的な事例や数字を用いて丁寧に説明していました。この会社では開始当初から「現場管理力を強化する」という課題があり、マネージャークラスではなく、現場のリーダークラスが活動の主体でした。ですから、かなり丁寧に説明していたのです。開始当初から参加してくれていたリーダーは昇級してアシスタントマネージャーになった人も複数人います。昇給や離職により、出席していただくメンバーがどんどんと入れ替わっていたのに、丁寧さを失っていたのです。
普段後輩コンサルタントに、タイと日本の教育システム、国民性や慣習の違いを話していたのに慣れからくる大失敗でした。改めて丁寧に説明しました。指摘してくれたタイ人マネージャーに感謝するとともに、猛省した次第です。
労働生産性の説明が終わった時に皆さんに質問してみました。「Σを学校で学んだのは何年生の時ですか?」。古くからのメンバーの多くは「久保さんに教わりました」と答えて、理系の大卒メンバーは大学に行ってからとの答えでした。日本では高校生(たぶん数B)で教わる内容なのでタイでも高校で教わると思い込んでいました。家に帰って妻に同じ質問をしたところ、「教わってないよ」とのことでした。妻はカナダの高校を出ています。数年前に丁寧に話したのは、高校生の時に教わったことはもう既に忘れているだろうと思ってのことでした。しかし、実際は全く違っていました。教わっていなかったのです。
我々はタイ人メンバーの育成の基本姿勢として、「性善説」「制約と恐怖心の排除」「3割主義、打点優先」を掲げて活動しています。この基本姿勢に戻ることを再度学んだ次第です。まさに「初心に還る」でした。
今回のように海外では日本と違うことも度々ありますし、同じ考え方では成功しない場合も多いですが、必ず成功すると信じ改革、改善のお手伝いを微力ながら続けていきたいと考えています。