コラム/海外レポート

2025.01.07

モノづくりの原点は、ヒトづくり

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 国際情勢の緊迫化をはじめ、一時は1ドル160円台をつけた38年ぶりの円安、エネルギーをはじめとした原材料の高騰、少子高齢化に伴う人材不足の問題など、以前にも増して外部環境の不確実性が高まる中、弊社へのコンサルティングニーズにもさまざまな変化が見られます。しかし、このような激動の時代においても、『モノづくりの原点は、ヒトづくり』にあるということに変わりは無いと、改めて痛感します。

ヒトはどのような時に、価値を感じるのでしょうか?

 弊社は創業以来、一貫してVPM(Value Producing Management)という手法のもと、企業の価値向上に向けてコンサルティング活動を実施させていただいています。そもそも、どのような時にヒトは価値(Value)や不満を感じるのか?その答えは、『変化』に対して価値や不満を感じるのではないでしょうか。卑近な例でいえば、30万の給料を貰っていた人が35万になれば「価値」を感じ、40万を貰っていた人が35万になれば、同じ35万であっても「不満」を感じるというわけです。つまり、会社の経営効率・価値を向上させるためには「日々の変化がどれだけ見えるようになっているか」「従業員があらゆる変化(良きにも悪しきにも)に対してどれだけ敏感に対応できるか」、こういった点が非常に重要となってきます。

変化の見える化

 現場(製造現場・間接事務所)に入ってまずチェックすべき部分は、「変化が見える」ようになっているか?という点です。生産が進んでいるのか、遅れているのか。S(安全)、P(生産)、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)は正しく管理されているのか。例えば、5Sができていない製造現場では、モノや設備の状態が正常なのか、異常なのか、これらを判断できるわけがありません。
 生産部門、間接部門の革新活動を通じて「変化の見える化」を進め、経営目標に向かって活動を日々実践していくのですが、変化を見るためには「現実を正しく知ること」がバイタルポイントとなります。

現実を正しく知る

1.自社(工場)の現状を正しく知る
 中間管理職の方々へヒアリングする中で、会社(工場)の原価構成や自社の立ち位置(競合他社の状況含め)を良く理解されていない場合があり、驚きを感じます。会社(工場)規模によっても異なりますが、せめて担当工程の現状や立ち位置を把握しなければ、『あるべき姿』も描けません。そのためには、3C分析(Company・Customer・Competitor)やSWOT分析(Strength・Weakness・Opportunity・Threat)も有効です。
 

2.自社の製品を知る
・自社の製品がどれだけあって、その売上比率はどうなっているのか?
・品種(機種)毎の原価構成はどうなっているのか?
・儲かっているのか、損しているのか?
・他社に優位な製品なのか否か?
これらを正しく分析し、自分たちが手掛ける製品についての理解を深めます。

3.お金(原価)を知る
 企業の目的は利益を得ることであり、利益が出なければ、顧客満足・従業員満足・社会貢献もあり得ません。

利益を得るためには  
 ◆付加価値を付け、売価を上げる
 ◆原価を下げる
原価を下げるためには
 ◆コストダウン(広義の生産性向上)
 ◆外部流出コスト削減
のいずれかしかありません。

つまり、【利益 = 売価 - 原価(仕入値+コスト)】という単純な数式で表せます。

この単純な数式の中で、一人ひとりが自分の働きはどこに位置するのかを自覚し、行動に移せば、必ず改善の知恵は出てきます。「全員経営者」という感覚が必要で、これは間接従業員にも言えることなのです。

4.現場を知る
 『現場の体温を測る』という意味を、真に理解されている現場監督者がどれだけいるのでしょうか。例えば、入院すると病名にかかわらず、看護師さんが毎朝体温を測りに来られます。これと同様に、現場は日々変化しており、管理者たるもの毎朝現場を一巡し、『現場の体温を測る』べきなのです。答えは会議室にあるのでは無く、全て現場にあるのです。

5.ムダを知る
  製造工場において動いている有形物は、「ヒト」「設備」「材料」「製品」。無形物は、「時間」「エネルギー」「情報」です。そして、その全てに「お金」が動いています。
 この有形・無形にかかわらず、それぞれのムダにどれだけ気付くか、気付かせるか、これが革新活動におけるポイントであり、コントロールするのは全て「ヒト」なのです。
 

6.ヒトを知る ― モノづくりの原点は、ヒトづくり ―
 「現場力」「意識改革」というキーワードが良く用いられます。実際に、弊社のコンサルティング事例においても「コストダウン」「生産性向上」といった従来からの事例に加え、経営者や幹部の方々からは「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)・3定(定置・定品・定量)をベースに、真の現場力を磨きたい」「(直接・間接)従業員の意識改革を行いたい」「人材不足の中、少しでもミドル層のマネジメント力を向上したい」といった要望をよくお聞きします。企業環境がさまざまな変化や脅威にさらされている中、『モノづくりの原点は、ヒトづくり』という『ヒトの大切さ』を改めて痛感します。
 
 AIやITなどの技術革新をはじめ、世の中が便利になればなるほどリスクも増加します。そして、やはり最後は「ヒト」に回帰するのではないでしょうか。「個人の価値観」が大きく変化する中、「企業内価値観(ベクトル)」を合わせることこそが、企業価値を向上させる近道です。そしてそれは、ヒトしか成しえないことなのだと、信じて疑いません。

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