本ページでは、九州耐火煉瓦株式会社様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
岡山県備前市は焼物の街、街を歩けば登り窯をあちこちに見ることができる。中でも伊部焼の別名がある伊部地区は窯元の密集する焼物の古里である。 焼物は土が重要だが、備前市は耐火物の製造および、その原料である蝋石などの鉱山開発も含め、明治以降の日本の産業近代化を担ってきた土地柄である。 このたび機会を得てコンサルティングをご導入いただいている九州耐火煉瓦様にお話を伺った。
(※ASAP 2010年 No.1より抜粋)
左から、取締役社長 高長 茂幸氏、内部統制室 室長 草加 尚氏
創業93年という伝統ある御社ですが、耐火煉瓦とはどのような製品なのでしょうか。
当社は、黒崎播磨グループとして、主に製鉄分野の転炉用の耐火物の製造を行っております。耐火物というと一般には馴染みが薄いのですが、 1500~1700℃という高温に耐えうる耐火物の開発・製造には高い技術力が必要です。転炉の耐火物は消耗が激しいため、約半年で交換しなければなりません。 当社では製鉄所向けが多く、売上の約70%が転炉用の製品となっています。また、当社では他に連続鋳造用耐火物、電子部品焼成用耐火物の製造も行っております。
耐火物の製造において重要なことはなんでしょうか。
「より良く、より早く、より安く」がグループのモットーであり、そのためには設備をどう使いこなしていくかが大切です。最新の設備を導入しても、 使いこなせる社員が変わった時に同じものが作れなかったら何にもなりません。
いい設備とそれを使いこなす社員の協働で生まれてくる製品を当社は大切にしたいと思います。
単純に現場力といっても漠然としていますが、結局は設備と人だなと思います。
当社にしか出来ないものづくりを目指したいです。
コンサルティング導入の経緯はいかがなものだったのでしょうか。
当社では以前より小集団活動を実施していましたが、活動が停滞してきたため小休止してステップアップを必要としていた時期にテクノ経営の VPMを知る機会がありました。それは、広島の福山市で開催されたセミナーだったのですが、付加価値作業という話を聞いて、なるほどこういう視点で チェックすればムダ取りができるのかというヒントを得ることができました。つまり付加価値の度合いで考えていけば、削減すべきムダが発見できると 思ったわけです。それで、これなら考えてみる価値はあるなぁと感じたのが導入のきっかけです。
無用の用という言葉もありますが、何がムダかという見極めは確かに難しいところがあるものですね。
過去の小集団活動においては職場のムダ取りが課題となっていました。ところが、このムダ、あるいはムダ・ムリ・ムラともいいますが、なにがムダで ムラなのか活動の当事者もよく理解できていないという状況でした。個々の従業員にとっては、すべて必要な作業だと思って仕事をしているわけですから、 日々の業務において何がムダなのかを認識することは難しいわけです。ただ、全部のムダをそぎ落としたら動けるのかということにもなりますからね。 そのあたりは中々むつかしいところではあります。
活動の取り組みはどのように進められましたか。
活動名はKPI-160といいます。ベンチマークに対して3年間で160%の生産性向上を目標に取り組んでいます。年間20%の成果を3年間で 積み上げていく活動です。社内では、他に将来を睨んだスタッフ主体の挑戦活動であるAP(アクションプログラム)を実施していますが、いずれは KPI-160に統合していきたいと考えています。
活動の取り組みについては、目標設定等の準備期間に予想外の時間がかかりました。しかし、結果的に時間をかけて取り組んだのがよかったと思います。 総合効率のデータ取りは大変で、業務の中に付加価値作業に入るものが意外とあり、最初は大丈夫かなと思いました。活動としては、3月24日にキックオフ 大会を行い、それから活動が一気に始まりました。当初は日常改善が中心のC改善を各職場で実施、7月の創立記念日にそれまでの改善の中間発表会を開催しました。
その後、課題解決型であるD改善活動に移行しましたが、現場の管理者の中には、C改善のような日常改善は自分たちでやりつくしているから、新しい経営成果に 直結するような大きなテーマをやりたいという人が多かったようです。それならC改善をやる前にD改善を先にやった方がよいという意見も出たのですが、やはり 課題解決型であるD改善となると基本的にレベルが高いから、まずみんなのアタマをやわらかくする期間があった方がよいのでは、ということでC改善から入りました。
今、思えばやはりこの順序で導入したのがよかったと思っています。やはり、まず足元をしっかりさせてから課題を解決するというのが順当なやり方ではないかと思います。
導入時の社員の方の反応はいかがでしたか。
活動開始時は、VPM活動の考え方と現状にあまりにも隔たりがあるので、本当についていけるかなという感じはありました。ベンチマーク設定で、自分たちの 1シフトが470分なのですが、その中で付加価値作業がわずか10分しかないと言われた職場もありました。日常業務では付加価値作業が多いと考えていたため、最初は データ取りでも抵抗があったようです。
以前の小集団活動もマンネリ化しており、本気でやっていたのは1~2人程度でしょうか。会合の時間に集まることは集まるが発言する人は半分くらいでした。
小集団活動は時間外で取り組む自発活動でしたが、今回のコンサルティングは業務として取り上げています。全員参加型の活動に持っていくためですが、いわゆる 2:6:2の法則で、なかには積極的でない人も出てくるのはしかたがありません。文句を言わずについてきてくれるといいが、足を引っ張られると困る。 積極的な人の割合を徐々に変えていくことが課題です。
社長自らが陣頭指揮を執って活動を進めておられるとお聞きしましたが。
導入のときから出来るだけ現場に入って状況を把握するようにしています。会合にもできる限り出席しているし、必要な決裁もそこで行っています。
これはISO活動にも当てはまることですが、改善実施後賞味期限が切れたらさらなる改善をしてくれないと困ります。陳腐化を放置するのではなく変えて いかなければ改善活動の意味はありません。
活動成果についてはいかがでしょうか。
数値的には、投入工数のベンチマークから生産性総合効率20%の成果が出ており、財務的にも成果が見えます。社内的にも増産体制にあり、3年で2倍も まんざら無理ではないと感じています。今後、減産体制に入るときを見たい。そのとき成果が変わらなければ本物だと思います。
改善事例では、ある職場では、リフトを1台導入することで停滞した業務がスムーズになったり、他からの応援で効率よく流れだした職場など、個々の成功事例は 結構あります。
また、当社の社員構成は50代と若手が多く、40代がいない年齢構成になっていますので、今のうちに技能伝承をやっておかないと将来困ることになる。
そこで、KPI活動の専任リーダーは30代の若い社員を起用しました。最初は毎年変えようと思いましたが、しっかりやってくれているので、将来の社内コンサルタント育成の 意味を含めて継続して取り組んでもらっています。また、それぞれのリーダーの足並みも揃ってきたと思います。
コンサルタントの指導内容については、固定観念が抜け切らない職場内の発想を、全く違う切り口で見てくれる視点が新鮮ですし、頭ごなしにいうのではなく、 本人に納得させる方法、質問から入って本人から答えを引き出していくというテクノ経営の姿勢は評価できます。
最後に今後の活動の方向性・ビジョンをお聴かせください。
常に感性を磨き「研ぎ澄まされた工場」を目指すことです。少なくとも品質・コストでも黒崎播磨グループのナンバーワン企業であること。そのためには 設備をいかに使いこなすかで圧倒的な差をつけること。毎年同じことをしていては陳腐化してしまいます。どうすれば楽しく仕事ができるかを常に考え、マニュアルは 自分たちが現場で作り変えていく姿勢を維持することが必要と考えています。