コラム/海外レポート

2015.09.10

ヒューマンエラーゼロへの 具体的アプローチ

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
ヒューマンエラーとは

近年、ヒューマンエラーによる災害や事故が多発しています。それに対して、さまざまな対策が施されているにもかかわらず、一向にその件数が減りません。ヒューマンエラーを起こさない仕組みづくりは果たして可能なのでしょうか。
ヒューマンエラーは、いつでも・どこでも・誰にでも起こりえる問題です。よく知られているハインリッヒの法則によれば、1件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽い災害があり、その裏にはヒヤリハット体験が300件もあるといわれます。つまりヒューマンエラーを起こしやすい傾向を放置すれば、やがては大きな事故につながる危険性があるということです。
「災害は忘れたころにやってくる」といいますが、これだけの対策を講じたから大丈夫という気持ちで、その後の継続した手を打たないでいると、予期せぬ事態に見舞われることになります。
ヒューマンエラーとは何か、なぜ起こるのか、その対策をどう打てばよいのか。この共通認識が各職場にあってこそ、災害や事故の未然防止が可能になります。
ヒューマンエラー防止対策は組織全体で取り組むべきものなのです。

ヒューマンエラーの原因

ヒューマンエラーには、個人、環境、ストレスに関する要因が絡んできます。その3つの要因について簡単にご説明しましょう。

■ その1:個人的要因

個人の性格や身体状況、業務の習熟度などによる要因です。ルーチン作業や習慣化された行動は無意識のうちになされますが、人間の注意力、集中力には限界があり、いくら慣れ親しんだ行動でもしばしば間違える場合があります。
たとえば疲労により作業の能率は低下しますが、同時に判断ミスが増加します。
もともと人間の知覚は判断ミスを引き起こしやすい構造を持っています。よくある錯視図形などに見られるように、脳の情報処理そのものが引き起こす錯覚は誰にでも起こります。
また人間の記憶も極めて曖昧なものです。エビングハウスの忘却曲線によれば、学習20分後に58%記憶していた内容が、1日後では26%に減ってしまいます。このように記憶は時間と共に薄れ、変化します。それが思い込みや省略などのミスを引き起こします。

■ その2:環境要因

照明、空調、騒音など、作業環境に関する要因です。たとえば暗くて見えにくい、作業温度が適切でない、うるさくて聞き取れないなど、環境条件の悪い職場ではミスが起こりがちです。

■ その3:ストレス要因

主に職場風土の問題などに起因するものです。たとえば作業方法の指示が曖昧、5Sの不備で作業が手間取る、職場の不文律が多い場合などです。こうしたストレス要因が多い職場では作業ミスが起こりがちです。

ヒューマンエラーの分類

人間が引き起こすミスは4種類に分類されます。ただし、このなかで違反は故意による逸脱行為であり、ヒューマンエラーではありません。違反については別の対策が必要です。
ヒューマンエラーは、ラプス、ミステイク、スリップの3つに分類されます。

ラプスとは、いわゆるやり忘れです。やろうと思っていたが忘れてしまったという場合です。
ミステイクとは、認知・判断ミスになります。連絡が伝わっていなかった。お互いの意思疎通ができていない、思い込みで判断してしまったなどの場合です。これは動作の前にエラーが発生しており、やろうとしていたことがそもそも間違っていたという場合です。
スリップは、行動の段階で発生したエラーです。判断は正しいが、その動作が正確ではなかった場合です。たとえば慌ててボタンを押し間違えた、他のことに気をとられていたといったケースが該当します。
このようにヒューマンエラーの原因を大きく分類してとらえると、意外に単純なことがわかります。

ヒューマンエラー対策のポイント
■ 組織の問題として取り組む

ヒューマンエラーは、業務システムの原因追究として取り組むことが必要です。
エラーの多い組織に見られる共通性は、暗黙のルールや約束ごとが多いことです。そのため責任の所在が不明確であり、エラーを報告した本人だけを責める結果に陥りがちです。組織として現場に潜むエラーを誘発する因子を発見し、解消していかなければ抜本的な解決には至りません。また、個人追及が過ぎると、自分に不利な条件や状況を隠蔽する風土が生まれます。そして、その結果、対策がより遅れ、最悪の事態を招くことにもなりかねません。ヒューマンエラーは組織全体で取り組むべき問題なのです。
ヒューマンエラー対策としては、①工場探検による原因探索、②ヒヤリハット制度の活用、③ホウレンソウ(報告・連絡・相談)徹底、④整理・整頓+3定(定置・定品・定量)、作業の3S(単純化・標準化・専門化)などが有効です。

■ 失敗から学ぶ

人は誰でも失敗する存在です。しかし失敗をそのままにしていたら意味がありません。「転んでもただでは起きない」再発防止のためには、失敗を貴重な経験として、そこから学ぶことが大切です。また同時に失敗することを前提に考えることも重要です。失敗も成功のプロセスと考えれば、失敗を過度に恐れることはなくなります。

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