2013.06.18
知らないと損をする! 工場改革成功の条件(4)
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執筆者:
沢柳 知治
■ はじめに
社員の意識が変わらない・・・
意識改革の具体的な方法が分からない・・・
改善活動で意識が変わったと思っても、しばらくすると前と同じ状態に戻ってしまう・・・
最近、このようなお話を業種問わず、多くの経営幹部の方々からお聞きします。
あなたの企業、工場、職場でもあてはまる状況ではないでしょうか。
では、社員の意識を変えるにはどうすれば良いのでしょうか?
今回は、行動科学の理論のひとつである「ABCモデル」に基づき、社員に望ましい行動を起こさせ、社員が自発的に行動を起こし続けることで、社員の意識を改革する方法をご紹介します。
■ 「ABCモデル」とは
「ABCモデル」とは、人の行動がいかにして起こるかを整理したもので、A は Antecedents(先行条件)、B は Behavior(行動) 、 C は Consequences(結果) を意味しています。
人が行動を起こす前には、その行動を促す“先行条件”があります。次に、それをきっかけとした“行動”が起こります。その行動の“結果”、行動を起こした当人にポジティブな結果やネガティブな結果が起こります。
人間の行動はすべて、「 先行条件 → 行動 → 結果 」というサイクルに沿って起こるというのが、ABCモデルです。
■ 「ABCモデル」と「4つの結果」から考える自発的に行動する社員のつくり方
例えば、改善活動で改善提案を出すという行動をABCモデルに当てはめると、次のようになります。
先行条件: 「何でもいいから改善提案を出して欲しい」と上司に言われた
行 動 : とにかく数多くの改善提案を出した
結 果 : 「様々な視点から、多くの改善提案を出してくれて素晴らしい」と上司に言われた
このようなポジティブな結果を得られると、今後も部下は積極的に改善提案を出す可能性が高まります。 行動を起こした当人にとって、欲しいものが得られ、次もがんばろう!という気持ちになることを「承認による行動強化」と呼びます。
一方、
先行条件: 「何でもいいから改善提案を出して欲しい」と上司に言われた
行 動 : とにかく数多くの改善提案を出した
結 果 : 「数ばかり多くて、改善効果がない!まったく使えない!!」と上司に言われた
このようなネガティブな結果の場合、部下はもう積極的に改善提案を出さなくなるでしょう。行動を起こした当人にとって、叱責や一蹴など、嫌なものをもらい、先行条件を与えられても、やっても意味がない・・・という気持ちになることを「処罰による行動弱化」と呼びます。
「 承認による行動強化 」、「 処罰による行動弱化 」という言葉が出てきましたが、これは、4種類ある結果の2つにあてはまります。
「4つの結果」を整理すると次のようになります。
1.承認による行動強化: 行動が承認され、自発的行動で、行動が増える
2.脅迫による行動強化: 締め切りなど、外部要因で強制的に行動を増やす
3.処罰による行動弱化: 叱責など、嫌なことを避けるために行動が減る
4.無視による行動弱化: 提出しても見てもらえないなど、やったことが無視され行動が減る
この4つの結果をみると、「承認による行動強化」につながるように部下に接することが、自発的行動を起こさせ、改善活動を続けさせ、自ら意識改革を進めるために欠かせないことです。
子供たちが時間を忘れるほどにTVゲームに熱中してしまうのも、TVゲームが「承認による行動強化」を与えるものだからです。
応用行動科学をビジネスに展開しているオーブリー・C・ダニエルズによると、「TVゲームから受ける承認による行動強化の量は、1分間に150回程度ある」そうです。TVゲームをクリアしていく過程に加え、ボタンを押すとゲームの主人公が指示通りに動くことも「承認による行動強化」に属するといえるそうです。
老子は「 最高のリーダーは人々がその存在をほとんど知らない。彼が仕事を終え、目的を達した時、人々はこう言うだろう、この仕事は自分たちだけでやり遂げたのだ! 」という言葉を残しています。
この言葉は、自発的に行動する組織をつくれるリーダーが最高のリーダーであると解釈できます。
社員への接し方を考えることが、「承認による行動強化」につながり、社員の意識改革、改善継続の第一歩です。