コラム/海外レポート

2013.06.14

ミドルマネージャーを鍛える

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執筆者:

久保 憲二

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。

最近のコンサルティングの場面で感じる点なのですが、私たちのVPMは基本的に十文字組織(図1)で活動します。ところが、協力メンバーである管理者の皆さんの協力具合に差が見られることがよくあります。活動の意義が理解できていないのか、プロジェクトリーダーであるトップ(経営層)の意思を理解する度合いに違いがあるのか。(私はこれをミドルマネジメント層に濃淡があると表現しています)
ですから、トップからも、協力メンバーであるミドル層強化の要望が多くなっています。
「ミドル層のマネジメント力を強くして欲しい」 「部門の将来ビジョンを描けるマネージャーが少ない」という具合です。

戦略(ビジョン)立案に必要な要件

幹部候補生のビジョン立案に関する研修が最近増えています。これらの研修では、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)、アンゾフのマトリックス、SWOT 分析、5Force分析、3C分析、S・T・P、マーケティングMIX等の科学的アプローチ手法やフレームワークを教えますが、これだけでは不充分であると私は考えます。
最も重要なのは、必ず成功させるという強い信念(情熱)と最後まで諦めない強い意志(不屈の精神)ではないかと思います。次に必要なのがリーダーシップやマネジメント力です。(図2)
さて、これらを育み成長させるには、どうすればよいのでしょうか。

先ずはリーダーシップ力とマネジメント力を強化する方法について、説明しましょう。

リーダーシップとマネジメント

日本では一般的にリーダーシップとマネジメントを一つにしてマネジメントと呼んでいますが、欧米ではハッキリと区別しています。
34歳という若さで史上最年少のハーバード大学の正教授に就任したジョン・P・コッター教授は、「リーダーシップ」と「マネジメント」は明確に別のものであると言っています。
今までの経営では、「マネジメント」が非常に重要視されました。しかし、現代の変革の時代においては「リーダーシップ」の必要性が強くなって来たということです。
分かり易い例で言うとJAL(日本航空)の再生で稲盛和夫さんが招聘されたのは、リーダーシップが必要だったからでしょう。アメリカで大手企業に全く畑違いのCEOが就任されるのもこの「リーダーシップ」が必要とされるからだと思います。
「リーダーシップ」と「マネジメント」は一般的には次のように分けて考えると言われています。

残念ながら日本では、この二つの機能の両方を併せ持たなければマネージャーとして認知されないようです。非常に厳しい国であります。

リーダーシップ力とマネジメント力を鍛える

リーダーシップやマネジメントの定義を頭で理解することは簡単ですが、これらを本当の意味で鍛えることは、多くの時間を要する難しい課題です。
ここでは、私が実施している事例を少しだけご紹介いたしましょう。
①リーダーシップとマネジメントの違いを自分の言葉で表す

②リーダーシップ(X軸)、マネジメント(Y軸)の2軸で自分をマッピングしてみる
※マッピング事例(100人程度)を図示します。(図3)

③なぜそのポジションなのか、自分の定義したリーダーシップやマネジメントとの差を明確にし、各々の強みと弱みを自己分析する

④自己分析結果から克服すべき課題(部門・個人)を抽出し、具体策に落とし込む

⑤具体策をスケジュールに落とし込む(1年から3年計画)

⑥実施状況を定期的にチェックする(1ヶ月以下) ⇒ 課題が出れば追加していく
一定期間経過後にこれらのサイクルを繰り返す。
ここで最も重要なのが、これらの場面全てにトップ(経営層)が関わることです。トップ自らが直接自分の言葉で自分の「おもい」と希望を述べることです。
これを継続することでリーダーシップとマネジメントは確実に強化されます。

戦略(ビジョン)立案できるマネージャー

リーダーシップとマネジメントを強化して、科学的なアプローチ能力を高めるとなぜビジョンを描け、メンバーを強力に牽引するマネージャーになれるのでしょうか。しかし、これは私自身が長年のコンサルティング経験から確信した事実です。そして、情熱や不屈の精神も含めたその相関関係は図4の通りです。
結論として、ミドルマネジメント層を強くするには、
・トップが自ら関わり、「おもい」を語る
・リーダーシップ、マネジメントを強くする具体的な
施策を計画的に実行する
・PDCAにトップが関わる
・科学的アプローチは、机上でなく実際の現場で実践する
トップの皆様が直接関与される覚悟が非常に重要になります。

終わりに

今回は簡単にエッセンスのみを紹介させていただきました。
私は“団塊の世代”の背中をみて育ってきました。彼らは、「背中を見ろ、自分で考えろ」が普通でしたから、自分で何とかするしかなかった時代でした。
ですから、私は若くしてマネジメントをしてきましたが、マネジメントとは何か、またそれを実行するうえでの2本の基軸を明確にしておりました。(団塊の世代に植え付けられたのかもしれません)
・人間性の尊重
・科学的分析能力
ひょっとすると今の30代40代の管理者の皆さんはマネジメントについて教えられていない、考える場面を与えられていないのではないかと思うこともあります。今回は紙面スペースの都合で詳細にはふれることができませんでした。
もっと詳細を知りたいというご要望があれば、弊社コーディネーターまでご相談ください。