2013.06.05
知らないと損をする! 工場改革成功の条件(2)
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執筆者:
沢柳 知治
■ はじめに
売上が少ないから投資に回す資本が足りない。
資本が足りないから生産性向上のための設備投資ができない、教育投資ができない。
だから、生産性があがらないままで、売上が増えない・・・
生産に追われているから教育する時間がない。
教育する時間がないからベテランに負荷がかかる、若手が育たない。
だから、多能工化が進まず、生産に追われている・・・
あなたの企業、あなたの職場でも、このような負のスパイラルは起きていないでしょうか?
では、こうした状況を抜け出すためにはどうすればよいのでしょうか?
この負のスパイラルから抜け出す方法として、ドイツ出身の経済学者アルバート・ハーシュマンは、「不均衡成長の理論」を唱えています。
■ 「不均衡成長の理論」とは
「不均衡成長の理論」とは、あえて巨額の借金をしても、投資をする。巨額の借金をした投資は周囲と様々な摩擦を起こす。 例えば、生産性の高い設備が導入されても、それを使いこなせない、物流網が整っていないなどの問題が起こる。つまり、不均衡がうまれる。 この不均衡を放置すると投資が回収できないため、不均衡を解消するための活動が始まる。その結果、改善が進み負のスパイラルから脱出できるという理論です。
また、ハーシュマンは、バランスの取れた成長、発展を目指すよりも、不均衡を出発点にする方が現場のエネルギーが出ると述べています。
■ 「不均衡成長の理論」から考える工場改革の役割
工場改革の目的は、収益向上、原価低減、意識改革、技能伝承など多岐にわたります。
そして、工場改革の役割は、これらの目的を短期間に達成し、改革を継続できる基盤を構築することです。
では、改革を進めるにあたり、各部門バランスを取りながら進める方法と、「不均衡成長の理論」に基づき試行し、発生した問題を改善していく方法とどちらがよいのでしょうか?
私がお手伝いしている企業様で、清掃作業の少数精鋭化に取り組んだときのエピソードです。
現状、標準時間4名×60分=240分の作業を、3名×60分=180分で作業することをテーマとして取り組みました。
はじめに作業時間の現状把握を行いました。その結果、実際は4名×80分=320分で作業していたことが判明しました。
トップ、管理者と現場の認識のギャップが垣間見られた瞬間でした。
そして、4名×80分=320分の作業を3名×60分=180分に短縮(生産性約1.8倍)するため、現状の延長線上の、確実に改善できそうな改善だけでは到底目標達成できる状態ではないと感じました。
そこで、「不均衡成長の理論」に基づき、改善が不十分な状態で3名で作業を行ってもらいました。 その結果、3名×120分=360分という結果となりました。私は、これは難しいテーマだ・・・と考えていました。 その時、メンバーから「洗浄用の水が足りないんだ」、「自動洗浄ユニットがついているが、配管がないんだ」などの発言が出てきました。
「水が不足している」、「自動洗浄が使えない」これらの問題点は4名体制では、誰も問題視していない状態でした。 3名体制で試行したことで、現場から意見があがり、工場全体で問題認識することができました。
これらの問題点をトップと共有化させていただき、様々な改善を進めた結果、3名×56分=168分で目標を達成することができました。
この事例では、あるべき姿(3名体制)で作業テストを行ったことが不均衡を生みだし、水が不足しているなど、これまでトップの耳に届かなかった問題が改善されたことで改革が進みました。
アルバート・アインシュタインも「同じ事を繰り返し行い、違う結果を期待することは正気の沙汰ではない」という言葉を残しています。
普段話さない人に話しかける、現場にいつもより多く足を運ぶ、会議の進め方を変えてみる・・・
できることから不均衡を起こしてみてはいかがでしょうか。